認知症ケア「ユマニチュード」講演会の参加レポートと関連本・研修の最新情報

ユマニチュード

ユマニチュード講演会の概要

2014年2月22日(土) 財団法人 生存科学研究所&東京医療センター 主催 

市民公開講座 「優しさを届けるケア技術・ユマニチュードを語る」

が東京・上智大学で開催されました。NHKクローズアップ現代で取り上げられ、「ユマニチュード」 に注目が集まっています。このブログでも以前記事にしたのですが、放送直後はアクセスが殺到して、アクセス制限がかかるほどでした。

今回の講演が、NHKクローズアップ現代に出ていたユマニチュード創始者のイヴ・ジネスト氏、東京医療センターの本田美和子氏ということ、あとはブログへのアクセス数が異様だったので、講演に参加してブログで報告したら、喜んでくれる方もいるかな~ そういう思いもあって参加しました。

左下に写っているのが、イヴさん。オーバーオールに蝶ネクタイ↓

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長文のレポートになりますが、おつきあいください。

<講演会の内容>
1.基調講演 イヴ・ジネスト氏 (ユマニチュード創始者)
2.講演座談会 わたしたちが体験したユマニチュード
3.ユマニチュードのこれから 本田美和子氏(国立病院機構・東京医療センター医長)

ユマニチュードが日本に広まるきっかけ

本田美和子氏がJALの社内誌(まちのこぼれ話という記事)で偶然、この「ユマニチュード」 の記事を見つけたのがきっかけで、実際は何年か記事の切り抜きを寝かしたそうですが、フランスに飛んでイヴ氏に会ったのが始まりだそうです。

急性期病院で「ユマニチュード」はスタートしたわけですが、これは本田氏が急性期病院の所属であったからであって、実際は特養でもどこでも問題はないと講演で話されてました。

ユマニチュードの哲学とは?

講演を通して何度も出てくる「哲学」という言葉。150のテクニックよりもこの「哲学」を学ぶことが大切と、イヴ氏は説きます。

  • 人間が人間としての特徴を自覚すること
  • 他者が人間と認識すること
  • 「絆」の哲学 であること

ここまで読むと、「ユマニチュード」 ってなに? となりますが、結局はこういうことが言いたいんじゃないかと。

「どんなに重度の認知症の人でも、人間としての尊厳をもたせてあげること」

これでもまだピンと来ないと思うので、講演であった例を使ってお話します。例えばケアをする時に、患者を ”どうつかむか” で患者が受ける感覚がまるで違うというのです。

手と手の指をからませる ⇒ 恋人感覚
手をつなぐ         ⇒ 夫婦やカップルの感覚
手首をつかんでひきあげる ⇒ どこかに強引に連れて行かれる感覚

確かに手首をつかんで引っ張られると、いい気はしません。実際に病院では患者さんを起こす時に、つい手首をもってベッドから起こしたりしてしまいます。これが認知症患者にとっては、不快な行動なのです。また、

  • 話しかけられない
  • 愛情をもったまなざしを向けられない
  • 不快な触り方
  • 声のトーンが乱暴

これらも当然ですが、認知症患者には不快でしかないのです。チューブで繋がれ、コミニケーションがままならない人であっても、こういった感覚はきちんと認識しているということです。

亡くなったわたしの祖母(認知症でやや高度に属する)は、身体拘束をされていたんですが、この身体拘束は人間の尊厳を奪う行為であり、「ユマニチュード」の哲学とは真逆にあるものです。

これは何も高齢者だけに限った話ではなく、子供もしかりです。上記の対応をしたルーマニアの孤児院の子供たちは、自閉症になり動かなくなってしまったそうです。

「ユマニチュード」は何か特別な、魔法のような事をしているわけではなく、認知症の人に対しても”人間らしく” ”普通に振る舞っている” だけなのです。言葉で書くのは簡単ですが、コミニケーションもままならない、発狂する、チューブでつながれている認知症の人に対して、普通に振る舞うのは想像を絶するくらい大変です。でも、「ユマニチュード」は、それをしなさいと説きます。

また「ユマニチュード」は、社交的で触れ合う事を厭わない、話し好きなフランス人気質と合致しています。日本人とはまるで違いますが、認知症介護においては世界標準でなくてはならないな、照れてる場合ではないな、それが患者にとってはいいことだ と思いました。

ユマニチュードの研修について

「本を通して学べるものではない。150のテクニックだけマニュアルにして、本で学ぶことはできない」

研修という形で、「ユマニチュード」 は広がっていくんだそうです。なぜ本やマニュアルではなく、研修かというと認知症ケアでは、マニュアル以外の事が必ず起きるためだそうで、テクニックだけ学んでも、原点(哲学)を理解しないと意味がないと言ってました。

日本に広めるきっかけを作った本田氏も、最初はマニュアルをフランスから持って帰ってくればいいと考えていたらしいのですが、そうではないと気づかされたそうです。

ユマニチュードのこれから

ユマニチュードのこれからについて箇条書きにすると、

  • 今回行った市民公開講座という形は、今後も開催する
  • 入門研修(2日間)、施設導入研修(10日間)を2015年より東京医療センターでスタート
  • 「ユマニチュード」の ”哲学” 部分の本は、2014年度に翻訳され出版
    ⇒ 150のテクニック部分は載らない
    ⇒ 翻訳出版元よりコメント頂きました(一番下にコメントあり) 出版された本はこちらです。
  • 研修の開催については、ジネスト・マレスコッティ研究所日本支部のHPにあります

ユマニチュード入門コース(2日間)、ユマニチュード施設導入準備コース(10日間)があります。会場は東京医療センターです。

こうなってくると、医療従事者以外はどうするの?となりますが、イヴ氏は家族の方用DVDも用意していると言ってました。会場内で3000円で販売していましたが、あれのことかな?

会場からの質疑応答でも、この150のテクニックを知りたいというのがあり、わたしも同感でした。講演中の動画や、実際に「ユマニチュード」のインストラクターである看護師さんが使っているテクニックの話があったので、それをご紹介します。

ユマニチュードの150のテクニック

わたしが講演の中からピックアップしたものを、箇条書きにしてまとめました。9番以降は、TBS報道特集でユマニチュードを扱った際に紹介されたものを追記しました。

  1. 病室のドアをノックして、相手が反応するまでは入らない。
    (3回ノックして3秒待つ を繰り返し、1回ノックして1秒待つ)
  2. ケア内容の話はしない、ケアを目的の最優先にしない
    (体拭きに来ました!と言わず、話をしに来たんだよ という姿勢)
  3. ベッドで壁側を見ている人でも、視線を合わせるために壁とベッドの隙間を作る
  4. ケアを2人でする
    (1人は体を拭いたり作業をし、もう1人はただ視線を合わせて会話をし続ける)
  5. 食事の介助をする時は、必ず真正面に立ち、Positiveな言葉を投げかける。スプーンは顔より高く上げる。
    (食べる量が、これだけでだいぶ変わる)
  6. ケアを嫌がっている場合は、無理に目的を達成しようとせず、いったん引く
  7. イスに座っている人へのアプローチは、イスをノックし、正面に回る
    (真横で話しかけても、認知症の人はいる事を認識しないので、ただびっくりするだけ)
  8. ケアの最後は、「また来ますね」 と言う
    (認知症なので、ケア自体忘れても何かしら残る)
  9. 遠い位置から視野に入るようにする、大げさな行動で近づく
  10. 目線は正面から水平の高さに合わせて話す
  11. 近い距離で長い時間見つめる
  12. 優しさを込めた友好的な言葉をかける、大げさとも思えるほどの笑顔を同時につくる
  13. 立つことを重要視している 他の人と同じ空間に居る事を認識させる

ユマニチュードに関する書籍・DVD一覧

ユマニチュードの本とDVDが発売されています。あさイチ、NHKスペシャルで取材したユマニチュード本も発売されてます↓

今日もしれっと、しれっと。

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12 件のコメント

  • 「ユマニチュード」の翻訳出版元の者です。
    この講演会にも参加させていただきました。とても充実したもので、たいへん勉強になりましたね。
    ユマニチュードに対する期待がものすごく大きいことを改めて実感いたしました。

    翻訳書は現時点では5月ないし6月に出版できる予定でおります。
    まさにユマニチュードの「哲学」が詰まった内容です。具体的な技術にもある程度触れられています。
    翻訳書に関する情報は私のブログでもおいおい発信していきますので、ぜひご覧になってください。
    「翻訳から広がる世界」 http://trialisttokyo.blog.fc2.com/

  • クルックさま

    コメントありがとうございます!
    ま、まさかの「ユマニチュード」翻訳出版元から、コメント頂けるとは・・びっくりです。

    わたしもツイッターやこのブログを使って、宣伝させて頂きますね。具体的な技術にも少しは
    触れているということで、楽しみです!!

  • 私もクローズアップ現代を見ました。とても感動したというか、一つ一つが深くうなずけるものでした。
    今後研修会がありました際はぜひ参加したいと思っています。

  • 大塩様

    コメントありがとうございます!
    研修会は医療関係者のみということなので、わたしは本を待ちたいと思っています。

  • はじめまして、90歳と85歳の母と義母が認知症です。先日NHKのユマニチュードの番組を見て私も学びたいと調べているうちに貴女様のレポートに行きつきました。大変分かりやすく参考になりました。早速8/12の新宿でのイヴさんの講演会に申込みをしました。その前に本もチェックしてみます。ありがとうございました!

  • 大関さま

    コメントありがとうございます!

    レポートの方、お役に立ててうれしいです。
    またお立ち寄りください。

  • はじめまして。
    つい先日一橋講堂で行われた「ユマニチュード」の公開講座へ参加してきました。
    先月、実家の母が体調を崩し入院しました。それにともない認知症が進んでしまっています。
    「ユマニチュード」はTVで拝見していました。私は山梨在住、実家は北海道です。
    細々とブログを書いておりますがこちらの記事へのリンク、貼らせて頂いても
    よろしいでしょうか?
    記事を一つ一つじっくりと読ませて頂きますね。
    どうぞよろしくお願いいたします。

  • さとさま

    はじめまして。

    リンクは貼って頂いて構いません、ご自由にお使いください!
    公開講座の事がもしブログに書かれていたら、わたしも読みたいので可能であれば教えてください。

    こちらこそ宜しくお願い致します。

  • さとさま

    こちらこそ本までご紹介頂きありがとうございました!

    イヴさんとかなり接近できたんですね。フレンドリーな方だなぁって、講演を見て思いました。

  • 40kaigoさんがいまお勧めしてる本の題名は?

  • タエカイゴさま

    コメントありがとうございます。

    いまお薦めということなので 「動かない」と人は病む ですね。 

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    ABOUTこの記事をかいた人

    1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住の介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。ものがたり診療所もりおか地域医療推進室非常勤。祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護1)のW遠距離介護。2013年3月、2回目の介護離職、同年11月祖母死去。2017年悪性リンパ腫の父も、別拠点で在宅介護したが死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を継続中!連載:介護ポストセブン(小学館)認知症ONLINE(ウェルクス)、著書:医者は知らない! 認知症介護で倒れないための55の心得 (廣済堂出版)医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)