認知症の人が暑い・寒いを感じられないとき「見た目の温度」で感じられるようにする

認知症 温度 気温 調節

認知症の人が真夏に重ね着をしたり、真冬に薄着で外に飛び出したりするという話をよく聞きます。認知症の母(ピック病、74歳・要介護1)がよくやるのは

  1. 真夏なのに「寒いでしょ?」といって、暖房をつけようとする
  2. 室温が「29度」で、「寒い」と言って冷房を切る
  3. 「暑い」と言って、冷房設定温度を「19度」にする
  4. 手足が不自由なのに「雪かきをする」と言って、薄着にサンダルで氷点下の外へ飛び出す

温度の意味を母は理解していないので、「29度」も「19度」も母にとっては単なる数字でしかありません。そういう前提で、今は母と暮らしています。独居なので心配な面もありますが、今のところは大きな問題がないので放置しています。問題が発生したら、スマホで遠隔温度操作ができるエアコンに変えます。

エアコンをリモコンで操作

4に関しては最近はなくなったのですが、以前は慌てて「言葉で」制止していました。しかしそれではダメだったので、雪がうっすらでも降ったら、わたしがすかさず早朝に雪かきをするという対処法で、母に「雪は降ってない」と思わせるようにしました。

一般的に言われる認知症の人の温度の話

認知症うんぬんを語る前に、「高齢者は体温調節の機能が低下していく」という話がまずあります。夏は汗をかきにくくなり、熱中症で倒れる高齢者が増えます。

体温計でおなじみのテルモ体温研究所によると、高齢者が快適に感じる温度は直前に居た室温に影響されるそうです。なので、若い人に比べて夏は高め、冬は低めに快適な温度を感じます。

認知症の方はこれに「見当識障害」が加わります。温度を感じるセンサーが鈍くなるうえに、認知症で判断ができないと書いてあるものが多いです。

認知症の症状である記憶障害や見当識障害に伴い、判断力も低下するため、暑さや寒さに対する正しい判断も失われて、このような行動をとってしまうことになるわけです。
引用元:https://www.senior-anshin.com/news/ninchi/20161109/

重ね着や薄着の対処法としては「本人の意思を尊重しましょう」で、ムリに脱がせたり着せたりは逆効果だと書いてあります。確かにそうだと思います。

この件に関してわたしはそれほどストレスを感じていないのですが、でも毎日温度に関しては意識させられるので、こうしたらいいのかな?という仮説を立てました。

「見た目で温度が分かる」ようにすればいいのかな?

あんた寒いでしょ、暖房つける?
くどひろ
暑くてこの格好しているから、大丈夫!

この夏に何度も繰り返した会話ですが、決まってわたしの格好が超薄着(Tシャツに短パン)なのです。母の思考としては、薄着は寒い→暖房 という単純な判断です。温度計の意味も分からなけば、体感温度も高齢者ならではのズレがあります。残すところは「見た目で温度が分かる」ようにするしかないのかなと。

認知症の母でも分かる材料を並べて「THE・夏」を演出してあげれば、だいぶ違うのかなとも思います。昔ながらの蚊取り線香、うちわ、かき氷、風鈴、扇風機・・・うちの居間はこれらが一切ないので、夏っぽさがゼロです。エアコンは熱中症や火事のリスクが減らせるのですが、無機質な箱なのであまり季節感はないですよね。

母は「今年は雪が少ないわね~」と年中言うので、基本頭の中は冬なのでしょう。だから、わたしの格好が寒いと思うのかもしれません。

介護施設などでよくやる演出(例えば七夕に笹の葉を飾ったり、中秋の名月にススキを飾るなど)を、本当は在宅介護している人も居間でもやってあげたほうがいいんでしょうね。うちって誕生日とクリスマスぐらいしかやらないので、居間に昔の人に分かりやすい季節感の演出をすれば、少しは季節感が帰ってくるような気がしてます。母はお花が好きなので、夏はひまわりでも飾ったりして、少し季節感を感じてもらおうかなと思ってます。

冬になると重ね着し過ぎて十二単になるという話をよく聞きますが、うちは今のところは大丈夫です。亡くなった祖母はパジャマの上に服を着る着衣失行がありましたが、あまりわたしは気になりませんでした。服着ているだけいいかなぁ~っていう、軽い発想です。重ね着を始めたら、薄手の生地の服をたくさん買ってきて厚みが出ないように対抗しようと思ってます。

高齢者や認知症の人が温度を感じられないとき、「見た目」で温度を感じてもらうという方法もあるのかな・・・最近、母とのエアコンのリモコン争奪戦のとき感じていることです。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

3件のコメント

蛇やかえるておんどが分かるの?暑い寒いて分かるの?蛇も、今日は暑いなあとか、熱中症になる。て分かるの?

ウチの85歳の父も真夏にたくさん着込んだりします。エアコンも寒がります。その上ベランダのサッシを用心が悪いと閉めたがります。その上エアコンも言わないとなかなつけません。ウチはマンションの14階でベランダ側から誰か侵入するとは考えづらいのにやたら気にします。サッシの鍵が閉まっているのに閉まってないと言います。確認に触ろうとすると猛烈に怒ります。どうしていいかわかりません。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか