認知症で「同じ事を繰り返し言う人」に対しての3つの対処法

認知症の方の特徴として、同じ事を何回も何回も、しかも短い時間の間に繰り返す症状があります。これは記銘力(きめいりょく)が落ちるのが原因で、直近の新しい記憶を留めておくのが、苦手になるためです。一方で、昔の事はものすごく鮮明に覚えているのも、認知症の特徴です。

朝ごはん何食べたかは忘れるけど、子供の頃の事はやたらと覚えています。さらっと書きましたけど、この知識があるのとないのとでは、認知症の方への対応の仕方はまるで違います。

我が家を例にして、認知症の方が同じ事を何度も繰り返し言う場合に、どう対処していったらいいかを3パターンに分けて説明します。うちは祖母(89歳)、母(69歳)ともに認知症で、祖母と母だけで会話させたら、ずーーーっと同じ事を2人で繰り返し話してます。

認知症で同じ事を繰り返し言う人に対しての対処法(ど素人編)

ど素人代表は、わたしの甥っ子(10歳)です。認知症という言葉も知らない子供なので、うちの母が同じ話を何回もすると、

『おばあちゃん、また同じ事言ってる!』 『さっきもそれ言ったよ!』

というど素人な返しをします。どの本にも書いている事ですが、”新しい記憶を留める事はできなくても、感情だけはしっかり残るんです。認知症の母は、甥っ子がいない時にこういいます。

『同じことばっかり!って注意されて、好きじゃない!』

会話の内容は母は忘れていますが、この ”注意された” とか ”不快な気持ちになった” ということはしっかり記憶に留まっているんです。子供を例に出しましたけど、母の妹(65歳)が、甥っ子と同じ対応をしてしまいました。会う前に前もって、認知症の特徴を説明したにも関わらずです。

最初は介護にあたっているわたしも、妹もこのど素人組に属してました。でも今は、卒業しています。

認知症で同じ事を繰り返し言う人に対しての対処法(模範解答編)

いろんなQ&Aを本やネットで見るんですが、模範解答はズバリ ”何度同じ事を言われても、毎回初めて言われたかのように対応する” だとか、”毎回にこやかに聞いてあげる” と書いてあります。

これ、私やりました!

やってみた結果ですが、マジで疲れます。いつまで、この攻撃に耐えればいいの?そう思います。模範解答はあくまで、模範解答。実戦向きでは全然なかったです。うーん、困った、どうしよう?と思っていた時に、実践的な回答を見つけたのです。そこにはちゃんと、攻撃には何回まで耐えなさいと書いてあったんです。

認知症で同じ事を繰り返し言う人に対しての対処法(最終結論編)

すべての介護で言える事は、”介護する側がつぶれてはいけない” ということです。1日中、認知症の母といっしょにいたら、それこそ同じ話しかしないので、介護する側がストレスでつぶれてしまいます。で毎日悶々としていたんですが、松本診療所院長の松本一生先生のお言葉で救われたんです。

家族は認知症の人が何十回も同じことを聞いてきて、理解できなくなってきても、毎回にこやかに対応できるでしょうか。 私がかつて行った臨床観察からは、どんなに熟練した「聞き手」であっても、同じことを ”5回以上” 聞かれると過剰なストレスになって、ケアする家族の心が疲弊してしまうことがわかりました。「たったの5回で?」と思う方も多いでしょう。ケアする日々の中では、何十回も同じことを聞き返されながら耐えている家族もいるのですから。

引用元:http://www.caresapo.jp/kaigo/dementia/pd4fc80000000kcb.html

5回ならなんとかいける! 5回言われたら、優しいツッコミを入れる 『それ、5回目ですやん!』って。臨床観察が証明してます。この松本先生の対処方法シリーズはいいので、一度シリーズ通して読まれる事をお薦めします!

ということで、わたしは同じ話は5回まで聞くようにして、そのあとでツッコミを入れるようにしています。でも不思議なんですよ、この5回が自分には100回ぐらいに思えるんです。妹と認知症の母のはなしをする時、『あぁ~、あの話100回聞いた』って、回数を盛ってしまうんです。

聞いている方は100回聞いた感じになるんです、たかだか10回でも。ということで、今日の結論はこうです。

結論

5回繰り返すまでは、初めて聞いたかのようなにこやかな対応。その後『それ、5回目ですやん!』と、裏手でツッコミを入れると、自分のストレスがたまらない。

一旦ツッコむと自分がすっきりはするんですが、当然波状攻撃のように6回目、7回目と同じことを言ってきますので、このやりとりはエンドレスです。

松本先生以外にもいろんな認知症の本があるので、ご自分でも研究してみてください!

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか