なないろのとびら診療所のお花見で学んだ「認知症と無情とはかなさ」

岩手県盛岡市は現在、桜が満開でございます。

サクラ

観光スポットとして有名なのが、石割桜(巨大な岩の割れ目から育った桜)です。盛岡地方裁判所の敷地内にありますが、立ち入りOKです。祖母の成年後見人をやってた3年前は、この裁判所に何度も通いました。

他にも、盛岡駅からはかなり遠い「高松の池」というところがありまして、「日本の桜の名所100選」に選ばれています。冬は白鳥が飛来し、ボートも乗れるまったりしたところです。

タイトル下の写真が、高松の池からみた岩手山です。自分で撮影したのですが、なかなかの出来です。県内最高峰の山(2,038m)で、歌人・石川啄木はこのように詠みました。

ふるさとの山に向ひて言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな

どうぞ、GWはぜひ盛岡へ という、ふるさとの宣伝ではなく、本題に入ります。

なないろのとびら診療所もりおかのお花見に参加して

池の周りで、母の通うものわすれ外来「なないろのとびら診療所(旧ものがたり診療所もりおか)」と2つの介護施設、合同のお花見がありました。担当している患者さん、スタッフの皆さんや家族、総勢50人。

要介護4以上の方や、車イスで参加される方もいらっしゃいました。そもそも、こういう合同の花見って、ないですよね?きっと。

花見っていうと、桜の下でお酒飲んで、騒いで・・・みたいに想像しますが、そうじゃないんですよね、この場合。まず、こちら。

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こちらがお弁当のお品書きです・・・って、すごくないですか、これ?50人分ですからね。

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こちらがそのお品なんですが、うまい!花より団子って、言いますからね。

食べながら感じたこと、これ嚥下の対策をしているんですね。柔らかくて、飲み込みやすいものが多かったです。当たり前と言えば当たり前ですが、予備知識なく口に運んで、目の前の皆さんの姿を見て、ハッ!と気づくあたりが、さすがど素人です。

調理師さんに話を聞こうと思ったのですが、聞きそびれてしまいました。先生に聞くと、AEDを持参しているとのこと。そして、看護師さんもたくさんいらっしゃるので、何かあっても万全な体制なんですね。

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たぶん、医療・介護職の方にとっては、当然なのかもしれません。わたしはホント何も考えずに、ふらっと途中参加したものですから、イチイチ「あっ、えっ、そういうこと」と「花見のウラ側」をひとり感じておりました。

デイサービスを経営しているご夫婦のおはなし

認知症の方と接するとき、一般的には否定しない、プライドを傷つけない、尊重する、とだいたいどの本にも書いてあるし、鉄則とされています。その ”真逆” をいく、デイを経営しているご夫婦とお話しました。

本やブログでご紹介したのは、「ケンカもガンガンするけど、認知症の症状が改善した。それは徹底して、その人と向き合った結果」という話でしたが、旦那さんがそのご本人でした。もうひとつ、奥さまよりエピソードを教えてもらいました。

尿意がないのに、何度もトイレに行きたいと訴える利用者さんがいたそうです。あまりに言うので、正の字でカウントして、ご本人にそれを見せたんだそう・・・これやったことありますが、わたしは家族内の話。デイで、それはありなのか?と、正直思ったのですが、なんと訴えなくなったんだそうです。

へー、やってみよう! っていう、簡単な話ではないですよ。どれくらいの期間で改善されたのか?と聞いてみると、回答は得られませんでした。ただ、こうお話されていました。

「無情」

情がなくて冷たいとか、そういう話ではないです。

わたしが推測するに、期間とか意識しないで徹底してその人と向き合った結果、気づいたら改善されていたという意味だと思いました。時間とか意識しない、接する方にも感情の起伏が当然あるけど、そこをあえて「無情」と言ってコントロールしたんだと。無の境地ともいえるかもしれません。

期間の質問が、安っぽかったなぁ~とあとで反省しました。そこまで向き合えるかな・・・

ただ怒るだけの介護者はいっぱいいますが、「徹底する、向き合う」ことができないんでしょうね。そして認知症の方も、ただのケンカと、真剣に向き合ったケンカの違いが分かっているってことですよね。気軽にやってみよう!とは、言えません。高松の池より、深い話でした。

桜は、いずれ散ってしまうわけです・・・このはかない感じ。この一文で、ムリに記事タイトルに寄せることができました(笑)自著を読んでくださった方にもお会いしまして、大変うれしかったです。

どうも、今日はお世話さまでした~
くどひろ
はいはい、どうもありがとうございました・・・・(って、だれだ?)

こういうお約束の会話は想定してましたよ・・・いろいろ勉強になったお花見でした。認知症の方への接し方の正解って、無限にありますね。

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

4件のコメント

たくさんの方とお会いできる事は本当にうらやましいです。症状は千差万別で接し方も皆さん違いますよね。講演会や勉強会、つどい等のイベントも平日が多くて参加できない事が多くいつもくやしい思いをしています。こんな現状の中でも、くどひろさまの様に情報を発信している方がいらしてとても助かります。いつもありがとうございます。

和田さま

おっしゃるとおり、意外と平日イベントも多いかもしれません。初期の頃は何でも参加して、一時期お休みをして、最近またいろいろイベントに参加しています。レポート報告をすることもありますので、楽しみにしていてください!

はじめまして。
高松の池の近くに住む認知症の母を介護している者です。
くどひろさんの本を東山堂でたまたま手に取り、読ませていただきました。
東京から500キロ離れた東北での遠距離介護の内容に「もしかして盛岡?」と思いながら読み終えると、最後に“もりおか”が紹介されて急に勝手ながら親近感を覚えてしまいました。
心身ともに余裕がない自分にとって良いアドバイスをもらいました。ありがとうございます。

佐藤さま

コメントありがとうございます!

東山道さんにたくさん置いて頂いております、購入して頂きありがとうございます!
お役に立てて、よかったです。そうなんです、今週月曜日までは盛岡におりました。

今後ともよろしくお願いします。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか