最愛の人が自宅で亡くなったあと、なぜ笑顔でピースができるのか?

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フジテレビ・ノンストップの一場面で「最愛の人が自宅で亡くなったあと、なぜ笑顔でピースができるのか」という議論があったことを、NEWSポストセブンの記事で知りました。記事を引用しますと、フリーアナウンサーの大神いずみさんはこうお話されたそうです。

私、実は去年、父を亡くしたんですけど、臨終まで立ち会えなかったということがあるんですけど、いまだに悲しみが癒えなくて。その時どんなに強がって、ピースできたとしても、本当にピースだとは思えないと思うんですよね。だからちょっとこの状況は、私にはよくわからない
引用元:https://www.news-postseven.com/archives/20171217_637435.html

このピースをした当事者でご主人を自宅で看取った浅野さんは、こう言ったそうです。

私、普段だったらすごく感情的になって、主人が亡くなったら、最期はワーッと泣きわめく想像をいつも病院でしていたんです。でも、すごく落ち着いていたんですね。感情的な私が冷静でいられたのは、毎日ずっとずっと一緒にこの空間で主人の心の声に1つずつ応えられたから。病院だったら絶対無理だった。10年の闘病生活の中で、自宅で過ごした3か月は短いですけど、私と主人にとっては最高の3か月で最期を看取れたから、ピースができたと思います
引用元:https://www.news-postseven.com/archives/20171217_637435.html

そして、最後にこの議論に対して、わたしも猛プッシュしております「なんとめでたいご臨終(小学館)」の著者で、在宅看取りのお医者様である小笠原文雄先生は、こうお話しされたそうです。

強がってピースする人なんて誰もいなくて、みなさん、心からうれしいからピースされるんです。病院では痛くて苦しくて夜も寝られなかった人が、願いが叶って自宅に戻り、好きなことをして過ごす。家に帰ったからこそ、笑顔に変わるんです。その姿を見ると、ご家族も喜ばれて笑顔に変わります。だから私は、その人らしい暮らしの中にこそ、希望死、満足死、納得死があると思っています
引用元:引用元:https://www.news-postseven.com/archives/20171217_637435.html

亡くなった人の前で笑顔でピースする議論に対してのわたしの考え方

先日、紀伊國屋書店新宿本店さんで行った「がんばりすぎずにしれっと認知症介護」のトークイベントにご参加の皆さまは、実際にわたしが父の遺体の前でピースしている写真をご覧になりました。

その時のわたしの思いはというと、小笠原先生や浅野さんの言う意見と同じで「達成感からのピース」でした。わたしは自宅での看取り話や他の家族の写真、本の取材で、在宅で看取ることの素晴らしさを知っていたし、ピースしているご家族も知っています。自分がその瞬間に立ち会ったらどうなるのだろうと思っていたのですが、自然と違和感なくピースができたのです。

厳密にいうと、最期の瞬間には間に合わなかったのですが、それでもわたしの中では納得していました。病院でただ弱っていく姿を見るだけでなく、自宅に戻してどんどん元気になっていく姿を見られたことに納得したのだと思います。最期の5時間だけは、救急車で病院に運ばれ、そこで亡くなってしまったので病院看取りになってしまいました。しかしすぐ自宅に戻して、父の遺体と2日間一方的ですが会話したり、それこそお世話になった医療・介護職の方々と遺体の前で思い出話ができたのは、本当に納得いくものでした。

病院に居たときは8人部屋で、周りに気をつかう環境でした。救急病棟なので、それなりに大変な患者さんがいて、親子ケンカなんてできる環境ではありませんでした。しかし家なら、やりたい放題。食べたいものを食べ、箱根八里の半次郎を大音量で聞き、余命をどう過ごすかを何時間でも話すことができました。「ふざけんな、この!」なんてやりとりも、何度もありました。

内容は覚えてないけど、父子2人で洋画をボーっと見ているだけでも、何か通じ合うものを感じましたし、そういう時間の積み重ねが実は達成感へとつながっているのだと、今になって思います。「自然な気持ちで」ただ一緒の時を重ねるという行為が、あのピースへとつながるのだと思います。最期の1年のほとんどを病院で過ごした祖母の時とは、達成感がまるで違います。あの時も病院から出そうとしたけど、なぜか熱が上がってしまって・・・

霊感の超強い叔母が、わたしが撮影したたくさんの写真を見てこう言いました。

叔母
ひろ、あんたこの写真”映ってるから” 消しなさい!これもダメ、こっちもダメ

映っているとどうダメなのか、霊感のないわたしにはよく分からないのですが、叔母さんは、葬儀会場で迫りくる霊にクラクラしていました。皆さんは、家族が亡くなった横でピースできますか?

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2件のコメント

以前見た医療サイトのブログの話です。
臨終後、大泣きしている遺族にねぎらいの言葉をかけようとしたら、看護師に違う遺族の方へいざなわれたそうです。
病院で介護していたのは、後ろで黙って耐えていたお嫁さんのほうで、大泣きしているのは一度も見舞いに来なかった妹だというオチでした。
いろいろ事情があるのでしょうが、私の周りでも「悔いはないよ」と言ってすがすがしい表情の人がいて、誤解する人もいるけど、同じ介護をしている身ではすごく納得した経験があります。それに、ある意味ハイになっている葬儀での様子を色々言うべきではないと思いますね。

待つ子さま

なるほど、初見はショックですよね。これからこういう光景に出くわしたとき、泣いている人を見たら介護や見舞いに来なかった人と判断してしまいそうで怖いです。

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか