こういう方法もある!亡くなった父に試した「口頭エンディングノート」

エンディングノート

11月4日は祖母の命日で、亡くなって4年が経ちました。毎年、この時期には「エンディングノート」の大切さについての記事を書くようにしておりますが、「わたしもノート書きました!」という方にほとんどお会いしてないかも・・・。

認知症 エンディングノート
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今年は父が亡くなったので、生前にエンディングノートを作りました・・口頭で。

亡くなった父の「口頭エンディングノート」

父は余命1か月から3か月と宣告され、天井を向いて動かない状態。わたしは矢継ぎ早に、さまざまな質問をしました。財産のありか、借金の状況、延命措置、お墓、葬儀に誰を呼ぶかなどです。

救急病棟の8人部屋で、酸素のチューブを鼻につけて寝る父の上から、ほぼマウンティング状態で迫る息子。他の患者さんやご家族には、軽い虐待に見えたかもしれません。字も書けない父でしたから、わたしはスマホを片手に録音ボタンを押して、父の音声を録音しまくりました。いわゆる「口頭エンディングノート」です。

わたし、母、妹は非常に仲がいいですし、もめ事はありません。しかし、それ以外のところで着火するかもしれない、その時の消火器的役割を「父本人の音声」に担ってもらおう・・・そんな思いもありました。声はあまり出ていないし、よく聞き取れない部分もありますが、スマホの録音アプリの機能はボイスレコーダーぐらいきっちり音を拾います。

「本人の意思」は常に最強の切り札です!例えば香典は受け取らないという故人の遺志があれば、断りやすくなります。(香典って、本当に亡くなった人のためなのか、出す側が「やらなければいけない」という自分の使命感を達成するためなのか、よく分からない)

その「口頭エンディングノート」に従って進めていたのですが、予想外に元気になってしまったので再度話し合いをして、その際のケンカも録音しました。結局いろいろあったのですが、ある程度は父の遺志を聞いて、それを実践できたのは本当によかったです。祖母の時は、認知症が進行していてほとんど代理判断ばっかりだったから、「本当にこれでよかったのだろうか・・・」という思いは、今でも残っています。

このやり方がいいのか微妙ですが、遺言としては無効でも、親族からの降りかかる火の粉をかわすには十分かと思います。

母はいつものエンディングノートを更新した!

エンディングノート もしもの時に役立つノート

今年で5回目の更新となった母のエンディングノートですが、意思は毎年少しずつ変わります。当たり前ですよね、1年の間にいろんなものを見聞きして、認知症も進行するから言うことが変わります。今回、母はこんな風にわたしに言いました。

あんまり生きてる時にさ、延命だお墓だって話すのもね

くどひろ
分かる!前は同じ意見だったけど、ばあさんとおやじを看取って、やっぱりこれが一番だってわかった

そうね、残されたあんたが大変だもんね

5回目ともなると、生きてる間に延命やお墓の話をするのは気がひけるとかいった気持ちはなくなって、慣れます。普通にやれば15分くらいで終わるところを、母と息子で延命措置、介護、お墓、介護施設の話を30分以上話し合いました。母の声も今回は録音しました。何が変わったかと言うと、

  1. 自宅で最期まで暮らしたい
  2. 葬儀は「自宅葬」も考えて欲しい

ここ1年で母が言うようになったのは、施設には入りたくないということです。わたしはこんな自由な働き方ですし、要介護5の父の介護の態勢づくりに関わってみて、意外と最期まで在宅介護で行けるんじゃないか・・そう思えるようになりました。

父の時は「つきっきり」のイメージが先行して、遠距離介護を解除して泊り込まないといけないという思いが強かったのですが、かかりつけ医の言葉や介護職の皆さまのスーパーな働きぶりで、結局いつもどおり通いで介護が続けられたわけです。その態勢を母へ移行したので、ギリギリまで母の願いをかなえられるのではと思っています。施設という選択肢を完全には捨てていませんが、在宅で頑張るつもりです。

自宅葬の話も、先日ブログに書いた話をそのまま母にしたら、そっちのほうがいいということでした。盛岡で自宅葬をどう実現するのかという問題はありますが、やっぱり家がいいんだなという強い思いだけは分かりました。

自宅葬 鎌倉

エンディングノートはプレゼントでなく、親子で一緒に書く

よく、エンディングノートをプレゼントしたけど書いてくれないという話を聞きます。面倒だったり、まだそういう段階ではないと言われたりするかもしれません。ホコリがかぶらないようにするためにも、うちのように親子で一緒に書くというのがいいと思います。

お願いして、すべて文字に残してくれるとは限りません。むしろ面倒になって、はしょって書いちゃうケースもあります。一緒に話し合いながら書くと、行間が読めるようになります。うちも書いている文章以上に、母の思いを毎年聞くことになるので、満足しています。

それも厳しいならスマホで録音しながら、延命措置やお墓、財産のありかについて親子で話し合うのもいいと思います。で、自分で文字起こしして見せるというのもいいですよね・・・面倒ですかね?

命の代理判断って、本当に重いんですよ!それを避けるためにも、エンディングノートを作ってみてください。うちのエンディングノートはこの下の商品をコピーしたもの(記事タイトル下の写真)に、毎年母の思いを書き込んでいます。

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか