必ず前向きになる介護エッセイたかはたゆきこ著「おでかけは最高のリハビリ」

おでかけは最高のリハビリ たかはたゆきこ

自分より大変で壮絶な介護を見て、「自分よりもっと大変な人がいる」と言って鼓舞する・・・そんな介護者は多いと思います。壮絶な介護を見つけようと思えば、本でもテレビでも割と簡単にアクセスできる世の中です。

今日ご紹介する本のタイトルの一部にある「要介護5の母とウィーンを旅する」、ややもすると同じ壮絶系にカテゴライズしてしまうかもしれないタイトルです。しかし、読み終わってみて心に残ったのは「うらやましい」でした。いろいろ諦めてしまっている介護家族の心に火をつける、そんな本です。

著者のたかはたゆきこさんとの出会い

たかはたさんの介護ブログ「猫とビターチョコレート」に、この本の出版の経緯が書いてあります。わたしのことも書いてあるので、振り返ってみます。

介護者として卑屈にならず、自分の置かれた環境を受け入れて、その中で日々生活してる介護者はいないか・・そんな気持ちで、介護ブログを探していたら見つけたのが、「在宅介護しながらウィーンへ行ったブログ(前のブログタイトル)」でした。

2015年3月、今からちょうど3年前に見つけた記事には、こんなことが書いてありました。

だけど楽しいんだ。
文章を書いてお金をもらえるなんて。
こんな幸せなことはない。
暇のあるかぎりPCに貼りつき、一日何時間も細かい仕事をこちゃこちゃ書いている。
おかげで、以前つとめていた週3のヘルパーのバイトと同じくらいには稼げるようになった。
ウィーン資金をこつこつ貯めている。
「内職でウィーンに行くブログ」に改名しようかしら・・・。
引用元:http://nekotochocolate.blog.fc2.com/blog-entry-818.html

文章を書くのが楽しいという介護者がここにいる!そして、お母さんをウィーンに連れて行こうと頑張っていらっしゃる!

自分が文章だけで生活している介護者なので、少しでもウィーンへ行くための手助けができれば!それでブログのコメントに、「まずは電子書籍出しませんか?」って、詐欺まがいの自費出版業者のようなことを書いたのが、たかはたさんとの最初の出会いです。

本の中にもありますが、お母さんがデイに行ってる間にバイトを探すものの、デイを休みがちなので昼間は働けない。それではと夜中に宅急便の仕分けをするも、お母さんが不安定になりこれも断念。その結果、PCにはりつき文章を書いて細々と稼ぐお話。それでも稼いでいる額があまりに少なく、非効率に見えたので「電子書籍」という提案を当時しました。

そこからメールで電子書籍の作り方、商業出版までの道のりなどをお伝えして、電子書籍も商業出版も上梓されて、作家デビューされました。いろんな方にこういった話をしているのですが、最後まで形になったのは、たかはたさんだけです。人って、なかなか実行できない生き物なのです。

家から出られないような介護であっても、仕事を見つけお金を稼ぐ。そして、ウィーンへお母さんを連れて行く。介護者も工夫次第で、いろんな働き方が選択できる時代です。この本の出版が決まったとき、自分のことのようにうれしかったです。ちなみにお会いしたことは一度もないので、ネットの力ってすごいなと改めて思います。しかも、誕生日が同じ・・・びっくりしました。

ウィーンへの資金作りのためにいろいろ提案したつもりが、逆に他の仕事や介護の時間を奪ってしまったかも・・・そんな思いも、本を読みながら思いました。

「おでかけは最高のリハビリ」で一番印象に残ったところ

わたしが特に印象に残った部分は、

かつて母は脳性麻痺のある優子を育てるときによく言っていた。
「大事なのは、刺激を与えること」
外の風にあたることで、知らない人に出会うことで、美しい音楽を聴くことで、新しいことにチャレンジすることで、さまざまな音や光や匂いにさらされることで、脳は活性化する。目に、耳に、鼻に、舌に、皮膚に、そして心に。
引用元:おでかけは最高のリハビリ(雷鳥社)

認知症の母にも、このことをいつも考えています。しかし、わたしが面倒になったりして、つい刺激ある機会を提供できません。

高次脳機能障害で車椅子のお母さんがなぜウィーンを目指すのか、バリアフリーかどうかも分からないウィーンの街の状況をどうやって調べたのか、重度障害の妹さんを日本に残して大丈夫なのか、飛行機はどう乗ったのか、褥瘡対策はどうしたのか、頻尿で尿量の多いお母さんのトイレはどうしたのか、やっとの思いでたどり着いたウィーンでの母子の思いは?

介護者がこの本を読み終わった瞬間、きっと前向きスイッチがONになるはずです!車椅子だから、認知症だからと、介護者の思い優先で行動範囲をどんどん狭めている方は多いのではないでしょうか?

あれ、自分がそうかも・・・と思った方、この本を読んで、勇気や刺激をいっぱいもらって欲しいです!もっと写真がいっぱいあったら、読者にイメージが伝わってよかったのになぁと思いました。

おでかけは最高のリハビリ! 要介護5の母とウィーンを旅する

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たかはた ゆきこ
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今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか