『治さなくてよい認知症』という本にある「キットウッドの公式」ってなに?

現在読んでいる、上田諭さんの書いた 「治さなくてよい認知症」 という本。他の認知症の本とは一味違う内容で、面白い本に出会ったな!そんな感想です。その本の中にある 「キットウッドの公式」 が興味深かったので、ご紹介します!

「キットウッドの公式」とは?

イギリスの臨床心理士であるトム・キットウッドさんが、1996年に考案した基本的な認知症ケアの指針です。著者の上田さん曰く、世界的には常識的で重要な指針と評価されているのに、日本ではほとんど浸透していないとのこと。

認知症の症状は、表の5つの要因の重なりで生じるそうで、D=P+B+H+NI+SP で表させると。

頭文字単語意味
DDementia認知症症状
PPersonality性格
BBiography生活史
HPhysical Health身体の状態
NINeurological
Impairment
神経学的障害
SPSocial
Psyhology
対人心理要因

ちょっと専門的すぎますよね? ここからは素人コトバに置き換えます。

認知症のBPSD(周辺症状)は、不機嫌、イライラ、抑うつ、暴言、妄想、暴力、徘徊などがあります。これらは認知症のせいだ!脳機能に障害があるからだ!と考える人が多いのですが、それは間違いだと言うのです。

最も大切なのは 「人との関係性の悪化」 にあるとのこと。間違いを指摘したり、お荷物扱いしたり、本人の尊厳を損なったり、苦痛を伴う不快な気持ちを生み出したりすることが、BPSD(周辺症状)の原因になるのだと。

表でいうと、SP(対人関係)が最も重要なのに忘れられていて、NI(病気のこと)が原因だ!徘徊の原因はこれだ!という事が非常に多いということです。上の2つ(PとB)は周辺症状の種類の多さに関係して、下3つは症状の深さに関係するそうです。

うちの母を表に当てはめてみます。母は穏やかな性格(P)なので、暴言や暴力はありませんが、妄想は物取られ妄想や被害妄想が多いです。1人暮らし(B:生活史)ということも、妄想の原因と考えています。身体的(H)には問題ないし、脳の状態(NI)も悪くないので、周辺症状が悪化するのは 「対人関係(SP)」 のみということになります。

症状を悪化させる対応例(悪性の対人心理という)を、キットウッド氏はいくつか挙げています。

だます、できることをさせない、子ども扱いする、おびやかす、レッテルを貼る、汚名を着せる、急がせる、本人の思いや希望を認めない、仲間外れにする、物扱いする、無視する、無理強いをする、放っておく、非難する、中断する、からかう、軽蔑する

これらすべてやってない!という認知症介護者は神ですよね?どれかひとつは絶対にやっているはずです。現在流行りのユマニチュードも、本人の尊厳を尊重することを重要視しています。本には次のように書いています。

「BPSDが多くて困ると言う施設、病院はまず自分たちの行動、環境を振り返った方が良い」

これ、ハッとさせられますよね。上田さんは在宅介護においても、同じことと本で言ってます。認知症という病気が原因ではなく、介護している側が周辺症状を悪化させている事は多いんだよ!ということですね。

こうやって毎回勉強して、本のように対応する努力はするんですが、100点の対応はできないですよね・・・わたしはあきらめて80点くらいを目指してます、でないと自分がやられちゃいますんで~他にも面白い事が書いてあるので、またご紹介しますね。

治さなくてよい認知症

治さなくてよい認知症

上田諭
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今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか