父から聞いた「人生の最後に何を食べたいのか」

最後の晩餐

「人生の最後に何を食べたいかランキング」というのがあった。

第1位/「寿司」……24.5%
第2位/「焼き肉」……10.4%
第2位/「おにぎり」……10.4%
第4位/「お味噌汁」……8.6%
第5位/「ステーキ」……6.1%
引用元:https://woman.mynavi.jp/article/150303-23/

訪問看護師さんと父がこの話をしていたのだが、父は青森県産ステーキ(5位)をミディアムレアで自分で焼いて食べたいそうだ・・・岩手県民なのに。

7月7日の七夕に、余命1か月から3か月と宣告された悪性リンパ腫の父(76歳)。

明日で2か月が経過し、医師のいうことを信じるならば、余命は残り1か月となった。

先日血便が出て、貧血状態となり輸血を行った。一気に体力が落ち、弱っているようにも見えた。

しかし持ち前の気力で、医療・介護職の皆さまの力を借りながら生きている。

そんな状態なのに、死んじまえと言いたくなるクソみたいな親子ケンカをした。

炎のように怒り狂っていたとしても、「あと、どれくらい生きられるかわからない」という言葉がどこからか降臨する。

せっかく自分で抜いた鋭利なナイフを、その言葉のせいで自分のももに突き刺すことになる。

これは認知症の母とケンカするときも同じで、「認知症という病気がそうさせている」と念じれば、怒りはスーッとひいていく。

だから瞬間的にケンカになっても、急に冷静さを取り戻すことができる。そう長くないケンカが終わったあとで、父がこう言った。

ひろ、焼き肉が食いたい

つい2か月前まで、まずいおかゆと氷をなめることしかできなかった。今は普通の食事はできるようになったが、焼き肉のような精のつくものは、4か月近く食べてないらしい。最後に食べたいものランキング2位の「焼き肉」だ。

ひょっとしたら最後の焼き肉かもしれない・・・そう思うとムカついていても、足は焼き肉屋へと向かっていた。

足のリハビリを兼ねて、ゆっくりと北上川にかかった橋を渡る。足のむくみがひどくて歩けないほどだったが、最近は収まった。橋の欄干(手すり)につかまりながら、時には休憩をはさみながら、ゆっくりゆっくりと焼き肉屋まで歩を進める。

父は上定食(2,000円)、わたしは盛岡冷麺(大盛・辛味別)を頼んだ。ビールもちょっと飲みたいというので、スーパードライの瓶ビールとグラスを2つ注文した。酔っぱらって歩けなくなっては困るので、チェイサーの水も追加した。

くどひろ
今日は出版記念パーティにしよう!

というのも、わたしの3作目の本は早くて11月、遅くて12月に発売される。その時まで生きているという保証はどこにもない。だから、生きているうちに出版記念パーティをすることにした・・・もちろん印税はまだ入ってない。

くどひろ
かんぱい!
ほら、食え!
くどひろ
金出すの、俺だけど

父はわたしが小さい頃から、人の肉を焼いてタレの入った皿に入れるのが好きだった。今日も、もれなくそれをやっている。世話好きなのは認めるが、自分のペースで食べたいわたしには少々うっとうしい。

上定食には卵がついていて、ロースをすき焼きのように食べてもいいし、TKG(たまごかけごはん)にしてもいいと店の人が言った。卵をカチャカチャとかきまぜて、ごはんにドロッと流し込んだ。

いやぁ~、うんまい!

よっぽど、おいしかったのだろう。TKGの上にロースをバウンドさせて食べる父。そんなに量は食べられないので、ロース2枚だけ食べて残りはわたしが食べた。

6月に病棟で弱り切っている父に、介護離職してニートだと思っているだろうからと、自分の2冊の本を見せた。当時はうなずくくらいしかできなかったが、今回はまともにトークできた。

くどひろ
この前は、福島で講演会やってきた
おめぇよ、講演会のときはちゃんと聞き手のことを考えてしゃべれよ。俺なんか昔は100人の前でいっつもしゃべってた

また、いつもの自慢話が始まった。自分は子より常に優れていると思っていて、いちいち対抗してくる。「悪いが、あんた以上に俺のほうがしゃべってるわ!人数ももっといるし」と言いかけたけど、ロースと一緒に胃の中に収めた。ただ、言っていることは間違えてはいなかった・・・ムカつくけど。

アイスクリームが食いたい

えっ?と思ったが、食べたいものは今のうちになんでも食べてほしいという思いは常にある。盛岡で有名な藤原パーラーに依頼して作った、オリジナルバニラアイス(400円)をペロリと食べた。

父はグラスビール1杯しか飲んでなかったが、やはり疲れた様子。電信柱や塀につかまりながらヨロヨロと歩く父。その真横を同じペースでゆっくり歩く自分。手足が不自由な母がわたしにつかまって歩くスピードと似ていた・・自分にしか分からないことだが。

ここでいい、今度はおれがおごってやる

父のマンションまでは残り200mくらいあったが、見送りは十分というので母の居る家へ帰ることにした。その200mも電信柱につかまって立って休憩したり、座ってみたり・・・ビールが効きすぎたのかよくわからないが、かなり遠くで父の姿を見守った。

帰京した当日、かなりの痛みがあったらしい・・・・人生のカウントダウンに入っているのかもしれないが、焼き肉を今度おごってもらうつもり。

その時はTKGの上を特上カルビでツーバンさせてから、口に放り込もうと思っている。その横に出来上がった新刊を置いて。

ちなみに、最初にご紹介した「人生の最後に何を食べたいかランキング」の引用元は「マイナビウーマン」。

父が最後に食べたいものは、22歳から34歳までの働く女子と同じということが分かった。

今日もしれっと、しれっと。

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住の介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護2)のW遠距離介護。2013年3月、2回目の介護離職、同年11月祖母死去。2017年悪性リンパ腫の父(要介護5)も別拠点で在宅介護したが死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を継続中!連載:介護ポストセブン(小学館)認知症ONLINE(ウェルクス)、著書:医者は知らない! 認知症介護で倒れないための55の心得 (廣済堂出版)医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)