改めて知っておこう!変わりつつある成年後見制度の現状

成年後見制度 現状

「成年後見制度」という名称を見ただけで、他人事になってしまう介護者は多いと思います。

なかなか利用者が増えない、認知症で判断できないご本人の財産を勝手に使い込むなどの問題を打破すべく、2016年9月内閣府に「成年後見制度利用促進委員会」が設置されました。もっと利用して!ということです。どんな風に変わるのか、そもそも「成年後見制度」はどんな場面で必要になるのか、自分事になるように簡単に解説したいと思います。

どんな時に成年後見制度が必要になる?

2015年の最高裁公表データによると、ぶっちぎりの1位が「預貯金の管理・解約」です。

うちを例にすると、祖母が子宮頸がんで入院することになりました。病院代が必要なので、祖母の預金をおろそうとしたのですが、家族と言えど銀行のお金をおろすことはできません。しかも、祖母がどの銀行に預けていたかも分からず、なぜか母が預金通帳を捨ててしまいました(笑)

どうしようもなくなったわたしは、成年後見人になって銀行の口座を探しあて、祖母の病院代を祖母の口座から捻出することに成功しました。交通事故にあって意識不明になって、本人のお金が必要になるようなときも該当します。

こうなると面倒なので、エンディングノートで本人の意思や口座の状況を確認して、この制度を利用しなくてもお金をどうするか考えておいたほうがいいよ!とブログには書いているのですが、実際行動している人は少ないと思ってます。

2位が「介護施設の入居のため」です。施設への入居にお金が必要になったけど、本人が認知症で支払いができないときや、わたしのように遠距離介護のため、財産管理を誰かに任せないとムリ!というときに利用します。他にも「不動産の処分(自宅を売却して、施設に入るとか)」、「相続の手続き」などが上位を占めます。

なぜ成年後見制度を利用しない人が多い?

わたしは好奇心から、すべて自分で手続きをしましたがかなり面倒です。皆さんがなじみのない家庭裁判所や法務局に行かないといけません。専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士、社会保険労務士、税理士など)にお願いすれば、初期費用と毎月費用が発生するようになります。

わたしがやっていた頃は家族が後見人になる割合が多かったのですが、その家族も不正をしてお金を自分のために使ってしまったケースが多発しました。あるいは自分の遺産相続確保のために、本人のためにお金を利用しないという親族もいました。そういう家族が多すぎて、専門職が後見人になる割合が高くなってしまったのですが、とんでも弁護士にあたってチェンジできない!とお怒りの方もいらっしゃいます。

わたしのブログにも怒りのコメントが寄せられ、そのまま記事にしたこともあるくらいです。「弁護士のくず」みたいな人はいるのです!しかし、後見人は簡単にチェンジできません。家族が後見人になっても、基本は亡くなるまで職務は続きます。専門職は面会義務もありませんから、何もせずに報酬だけもらう弁護士もいます。家庭裁判所が選ぶ弁護士がハズレということも、あるそうです。

専門職後見人

誰にも知られてない上に手続きは難しい、お金をちょろまかす、利用者も少ないし、チェンジも不可能ということで、制度を改善して利用を促進せよ!という動きに、2016年4月くらいからなってます。

2017年1月の委員会の意見書

まず、財産管理だけやって報酬を得ているような専門職がいるから、身上監護といって病院や施設の入隊所の手続きなども重視しよう、そして後見人のチェンジも柔軟にできるようにしようという意見が出ています。そして地域連携ネットワーク(地域包括、社会福祉協議会、民生委員)を作るなどの意見も出ています。

もちろんやったほうがいいのですが、何でもすぐ地域にお願いする傾向にありますよね。地域で成年後見制度に詳しい方、ほとんどお会いしたことありません・・・はい。で、すぐ変わりそうなものはと探したところひとつありました。

この資料の中に、このお金の不正をなんとかしてくれ!金融機関よろしく!的なことが書いてありました。東京・品川にある城南信用金庫さんの取組みが、早速対応してくれたようです。成年後見の話になると、よく出てくる金融機関です。

城南信用金庫の「城南成年後見サポート口座」

2017年3月1日の日本経済新聞の記事を引用します。

城南信用金庫(東京・品川)は認知症の高齢者らの財産を保護しながら、介護施設に入る時などに煩雑な手続きをしなくてもお金を引き出せる専用口座を全国で初めて取り扱い始めた。親族や第三者による財産の不正流用の防止と利用しやすさの両立をめざす。

 「城南成年後見サポート口座」は2種類の預金口座で構成する。一つは生活費など小口資金の管理用で、キャッシュカードの発行もできる。普段は使わない多額の資金は別口座で管理し、複数の後見人の印鑑がなければ預金を払い戻せない。大口の口座から毎月一定額を小口の口座に振り替えられるようにする。
引用元:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS01H3V_R00C17A3EE8000/

こうやると、認知症の人のお金を勝手に使って家を建てるようなことはできなくなるし、弁護士などがギャンブルに金をつぎ込むようなこともなくなります。

もともと後見制度支援信託という似た制度もあるのですが、意見書を読むとこれと並立・代替できる預貯金管理のあり方を金融機関に自主的に取り組んで!とあります。だから、並立的に呼応したんでしょうか?

後見制度支援信託を利用するときは、手続きが難しいからいったん専門職後見人を立てる必要があるのですが、もし城南信用金庫さんがその必要がないというなら、これは素晴らしいです。そもそも信託銀行なんてあまり行かないので、信用金庫で気軽にできるのなら、そちらのほうがいいです。

わたしは銀行をいくつか回って、キャッシュカード発行ができるところをメインバンクにして後見制度を利用していました。そうでない銀行もあったのですが、窓口で待ってお金おろすたびに書類を書くなんて本当に面倒ですよね。

成年後見制度もいろいろあって、少しずつ改善の方向に進んでいるようです。でも時間がかかると思うので、まずはエンディングノートを使って、親の財産をしっかり把握しておきましょう。家族が時間稼ぎしている間に、きっと成年後見制度は今よりも改善されると思っています。

今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか