長谷川和夫先生の著書『ボクはやっと認知症のことがわかった』の感想

ボクはやっと認知症のことがわかった

昨日は、福岡を拠点に九州全体に配信する講演会を行いました。

ピンマイク2つ付けて、撮影ありという珍しい講演会でした。ご参加できなかった皆さま、ぜひ撮影した動画をご覧頂けるとうれしいです。たくさんのご参加、ありがとうございました!

2019年12月に発売された、認知症テスト「長谷川式認知症スケール」の開発者でおなじみの長谷川和夫先生の著書『ボクはやっと認知症のことがわかった』(KADOKAWA)を読んだ感想です。飛行機内でネットが使えなかったので、移動時間を利用して久しぶりの読書でした。

ちなみに、長谷川先生ご出演のNHKスペシャル『認知症の第一人者が認知症になった』は録画しましたが、本を先に読んだほうがいいと思い、まだ見ていません。

『ボクはやっと認知症のことがわかった』で印象に残った言葉

本の中でいくつか印象に残った長谷川先生の言葉を、ピックアップします。今年2月で91歳になる長谷川先生。ご自身が認知症になったことについて、こう述べています。

ボク自身でいえば、認知症になったのはしようがない。年をとったんだから。長生きすれば誰でもなるのだから、それは当たり前のこと。ショックじゃなかったといえば嘘になるけど、なったものは仕方がない。

引用元: ボクはやっと認知症のことがわかった

家族も本人もなかなかこういう気持ちにはなれませんが、認知症の第一人者のこの言葉で、同じように考える人が増えるといいなと思いました。

そしてご自身の認知症の症状を、このように解説されています。

専門医であるボク自身、認知症になったらそれはもう変わらない、不変的なものだと思っていました。これほどよくなったり、悪くなったりというグラデーションがあるとは、考えてもみなかった。

引用元: ボクはやっと認知症のことがわかった

認知症になったら終わりというわけではなく、いい悪いを繰り返すさまが、長谷川先生自身の言葉で表現されています。

わたしは長谷川先生の講演会に参加したことがあるのですが、その時に先生が言ってた言葉を、本を読んで思い出しました。その言葉がこちら。

検査を行なうにあたって、ぜひ注意していただきたいことがあります。「お願いする」という姿勢を忘れないでほしいということです。

引用元: ボクはやっと認知症のことがわかった

長谷川式認知症スケールは、特に認知症初期の方には簡単な問題も多く、プライドを傷つけることにもなります。だから、丁寧に慎重にお願いする姿勢を忘れないという話を、講演会でもしていたなぁ~と思い出しました。

講演会での語り口もとてもソフトで、いい意味でお医者さんぽくない方と思っていたのですが、本の文体もとても柔らかです。おそらくNHKスペシャルも、そんな感じなんだろうなと。

長谷川先生の発信で、認知症に対する考え方が変わる人も多くいると思います。医師としての振り返り、認知症当事者になって見えた、分かった景色が、とても分かりやすく書いてある本です。

最後に、わたしがこれからもブログや本で、自分の立場で認知症について発信していいんだと思えた言葉をご紹介して、この記事を終わります。

そもそも、治療法がないという状況にあっては、認知症の患者さんとご家族にとって、医師や医療はほとんど役に立ちません。無力です。でも、医者としてなんとかしたい。そういう思いが常にありました。診断し、病名を告げてそれで終わりというのではなく、そこからできることを医療者としてもやっていきたいと思っていました。

引用元: ボクはやっと認知症のことがわかった

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか