長寿の向こう側にある認知症と多幸感のはなし

多幸感

母の夜中の失禁について、かかりつけ医と2人で話しました。

くどひろ
実は母が夜中に失禁することが増えてまして・・・あ、悩んではないですよ。本人が落ち込んでないから、わたしも悩んでないんです。
医師
それは興味深いケースですね。だいたいは失禁によってプライドが傷つき、落ち込んでいくケースがほとんどです。
くどひろ
そうですよね、だから救われてて。これって何ですかね?
医師
タコウセイかもしれませんよ
くどひろ
駅でよくすれ違った髪の長い女の子・・・そう他校生・・・

多幸性とは?

文字どおりたくさんの幸せ、要は常に楽しそうにしていることです。こう書くとポジティブな感じですが、医学の本は違います。根拠もないのに、1日中笑っていると。妄想、暴言、徘徊、幻想・・・そして多幸性、みたいな書き方です。

ピック病の症状としてよく紹介されてますが、アルツハイマー型でもあるようです。感情障害と書かれていることもありますが、わたしは段落冒頭の赤文字で考えるようにします。認知症の母は、楽しそうですしね。

100歳まで生きると、多幸感が生まれる

先生から多幸性の話を聞き、調べて納得したので、今日もしれっと、しれっと・・・と終わろうと思ったのですが、多幸感って実は長寿に与えられた特典なんですよ!

NHKクローズアップ現代 「“百寿者” 知られざる世界 ~幸せな長生きのすすめ~」の回から引用します。

身体機能の低下にもかかわらず、80代を過ぎると今の暮らしを肯定的に捉える感情や人生への満足感が高まっていくことが分かったのです。中でも権藤さんが注目しているのは、百寿者の多くが多幸感、つまり、ありとあらゆることに幸せを感じているということです。

権藤さんとは阪大准教授です。こういった心理状態を老年的超越というんだそうです。70代はできない自分を認めたくなかったり、老いや死への不安が大きいのに、だんだんそういった気持ちも薄れていくんだとか。

まず、主観的な幸福感を考える前に、やっぱりその方が、ちゃんとした環境で生活されているのかって、やっぱり非常に大切だと思うんですね。

慶應大学百寿総合研究センターってところがあって、広瀬先生はこのようにおっしゃってます。多幸感を得るにはやはり、ちゃんとした環境がなくてはならないと。

とてもステキなこと書いてあるので、一読されることをお薦めします。長生きの先には、幸せが待っているんですよ!

ちなみに母は、明日72歳の誕生日。100歳じゃないけど、70代で老年的超越をマスターしたのか!なかなかやるじゃないか・・誕生日ケーキのプレートには 「祝・老年的超越」 とホワイトチョコレートで書いてもらいます。

今日もしれっと、しれっと。


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6件のコメント

お母様、お誕生日おめでとうございます。

「多幸感」とても素敵な言葉だと思います。
年齢を重ねて長寿になると、どうしても自分だけで生きていくことは難しくなります。
家族だけではなく、多くの方に助けていただきながら生活することが増えますよね。
それは自分が愛されていると実感出来ることでもあると思うんです。幸福感も増えていくのかもしれませんね。

お母様は若くても、息子さんからの愛情を常に感じでいらっしゃるから、多幸感を感じることができるのでは?と私は思います。

いつも読ませていただきながら、素敵な親子関係に心があたたまります。ありがとうございます。

これからもお母様の笑顔が続きますように。

薄田さま

いつも素敵すぎるコメントをいただき、ただただ恐縮でございます。
薄田さまのコメントをつないで記事にしたら、きっとわたしはすごい人と勘違いされます(笑)

日々しれっと過ごしていく中で、母が薄田さまのコメントのように思っているのならば、きっと今はうまく回せているのかもしれませんね。と書いている間に、財布がないと呼ばれました(笑)しかしキーファインダーのおかげで、30秒で見つけました。

 あー・・・この「多幸感」ねえ。診察受ける時母がいつもニコニコしていて「困ったことはないですか」って聞かれて「何もないです!」って答えるとイラッとします。こっちは困ったことだらけだというのに・・・ まあこの質問で医者に「ピックだな」って思ってくれているならいいのですが「問題なし」とか思われているようだと困るんですよね・・・。

syumitektさま

うちも毎回、同じやりとりがあります。困ったことないですと必ず答えます。
そこが合図となって、わたしが先生と話す時間がスタートするという診察が毎月あります。

「55の心得」拝読いたしました。
老年的超越について、概念としては理解しましたが、人間の環境適応能力の表れの一つと思われます。孤独や病気の苦痛が老人をそのような状態にするのだと。
私は、老年的超越への移行のため、認知症の母親に孤独な時間を与えたいとは思いません。生甲斐のある日々の生活を送らせたいと言う思いと相反する物と考えます。
著書は介護者の負担感を和らげる為に書かれていると思われますが、実際の所は、いかがでしょうか。
今は軽度ですが、いずれ私も「老年的超越」にすがるようになるのでしょうか。

林さま

本を読んで頂き、ありがとうございます。

老年的超越は人間の環境適応能力のひとつだと、わたしも思います。少しスピリチュアルな面もあって、宇宙との接触というようなこともあるそうです。こういった感覚は自分で体感したいと思いますし、できればその頃に文献に残すことができればベストなのですが・・・

生きがいのある時間と孤独な時間のバランスかなと思っています。父が家出し、祖母が亡くなってひとりになって、より寂しさを感じるだろうと、何度も帰省していたこともありました。その後、孤独な時間はどこまで増やせるだろうと、少しずつ増やしていって、盛岡1週間滞在、東京2週間という今のカタチになりました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか