尿便失禁の改善に期待して行った手術の話

以前、こんな記事を書きました。

要約すると、母に血便が見られて、消化器内科を受診して大腸内視鏡検査を行ったら異常なし。それで肛門科の紹介状をもらって受診したら、出血の原因は直腸が肛門の外に出る直腸脱だったという話です。

肛門科に通院中

肛門科で飲み薬と軟膏が処方されたのですが、肛門への軟膏の注入を母はできません。わたしも追いつめられたらやりますが、正直なところやりたくない。そこでデイサービスに行ったときだけ、看護師さんに注入をお願いしています。

軟膏のおかげで、おそらく便が柔らかくなったはずです。トイレでいきむ時間が減り、昨年12月のように迷走神経反射で血圧が急低下して、フラフラすることもなくなったのではと思っています。

こうした一連の流れを、わたしの妹に話したところ、母の昔の言動を思い出したのです。

そういえばお母さん、腸が肛門から出てきて、それを手とシャワーで押し込んでいるって昔言ってた。今思い出した!

妹の話では、おそらく50年近く前からこの症状に悩んでいたようです。3回の出産が原因で、肛門科は行きづらいから自分で対処していたけど、認知症になってそのことも忘れてしまったのでしょう。

腸を出さず、痛みも血も出ない便の出し方のコツを母は忘れてしまって、血便が出たのだと思います。母に当てはまる症状を、日本大腸肛門病学会のサイトから引用します。

出産後1ヶ月経過しても肛門をしめることが難しい、便失禁が改善しない場合は次にあげる2つの可能性があります。一つ目は肛門をしめる筋肉である肛門括約筋の損傷です。経膣出産時に膣の出口から肛門の方向へ切れてしまうことを分娩時会陰裂傷と言います。その中でも第3度と第4度分娩時会陰裂傷とはこの肛門括約筋まで切れてしまうことを指します。第3、4度分娩時会陰裂傷の発生時には通常は産婦人科医により切れた筋肉の縫合がなされます、しかしながら修復が不十分な場合には便失禁が生じることがあります。

引用元:https://www.coloproctology.gr.jp/modules/citizen/index.php?content_id=20

母の場合、直腸を肛門から出さないために吊り上げる手術をするレベルではないけど、肛門の外には出てしまう微妙なラインでした。それで医師から自費ではあるけど、こんな手術があるから検討してみる? と論文を頂いたのです。

肛門HIFUを実施した

その手術方法はHIFU(ハイフ)といって、いわゆる美容のたるみで使うHIFUをカスタマイズして肛門や膣で行うものでした。超音波の棒を肛門や膣に20分くらい挿入し、完了です。麻酔不要で、入院もしません。術後もすぐ、日常生活を送れます。

介護する身として、やはり失禁処理は大きなストレスを伴います。もしも回数が減ってくれるのなら、こんなにいいことはありません。そして母も長年の悩みであった、直腸脱からの便失禁が改善されるかもしれません。

まずはわたしと妹で話し合い、次にかかりつけ医に肛門科でもらった論文を渡して検討。最後に伝わらないかもしれないけど母にも説明をして、状態が改善されるならということで受けました。

今回はお薬をもらうための受診だったので、手術の予定はなかったのですが、わたしが遠距離介護であまり時間がないことを先生が考慮してくださって、急遽やることに。今回は肛門のみで便失禁、次回は膣で尿失禁の手術をします。

4月から値上がりするそうで、うちはギリギリ3月扱いでした。自費での手術で、膣と肛門合わせて88,000円。お値段はしますが、もしも効果が現れたら、母もわたしも介護職の皆さんも失禁処理の時間が減ってハッピーになります。全国から手術をしに、盛岡にいらしているようです。

論文のデータを見ると、手術を受けた人の9割後半を超えるくらい改善が見られていました。人によって効果が出るまで時間はまちまちなようですが、失禁処理の回数で判断するしかなく、あとはデイサービスで状況を見てもらいます。さて、効果があるのかどうか? 

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか