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53歳のわたしが自分事として読んだ本、倉田真由美『夫が「家で死ぬ」と決めた日』の感想

夫が家で死ぬと決めた日

2016年7月のサイト立ち上げから連載を続けている、小学館さんの介護ポストセブン。わたしは書き手として、人気の記事ランキングを気にしながら執筆していて、1位を獲得することも結構あります。でもある人の記事がアップされると、あっさりランキングが入れ替わります。

それが漫画家の倉田真由美さんこと、くらたまさんです。「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」のシリーズが大人気で、この連載をベースに書き下ろしの漫画が加えた本が『夫が「家で死ぬ」と決めた日』です。2025年9月末に発売されたばかりの新刊で、ご恵贈いただきました。

介護や看取りの本はいつも、82歳の認知症の母を頭に浮かべて読むのですが、この本は53歳の自分の話として読みました。というのも、くらたまさんの夫の叶井俊太郎さんがすい臓がんで亡くなったのは、56歳だったからです。

家で死ぬということ

叶井さんの黄疸がきっかけですい臓がんが見つかり、約2年の闘病を経て自宅で亡くなるまでと、夫が亡くなったあとのくらたまさんの1年半の葛藤が描かれた本です。

さらに、2000人を自宅で看取った在宅緩和ケア医の萬田緑平さんの在宅ケアや看取りに関する解説や、巻末に最期を自宅で迎えるために準備しておきたい37のチェックリストもついています。

わたしがこの本を自分事として読めた理由は叶井さんと年が近いこともありますが、亡くなった父と重なる部分が多かったからです。父は悪性リンパ腫(血液のがん)で入院、余命1ヶ月~3か月と宣告されたあと、本人の希望ですぐ退院して、自宅での訪問診療に切り替えました。

身近に訪問診療医がいたことに加え、病院で亡くなった祖母の最期の過ごし方に疑問を抱いていたので、訪問診療への切り替えはスムーズでした。叶井さんも最初は不安から病院で過ごしたかったものの、途中でやっぱり自宅がいいといって、在宅医療に切り替えています。

1か月近くに及ぶ長期の入院で、夫はほとほと病院生活に嫌気がさしたようです。(略)「もう絶対に入院したくない。家がいい。」

わたしも叶井さんや父と同じ状況になったら、迷わず在宅医療を選択すると決めています。できることなら、介護中の認知症の母も同じコースをたどって欲しいとずっと思っていて、本を読んでその決意を改めて確認できました。

叶井さんと父、2人の共通点は最期の瞬間まで自宅で楽しく暮らしたことです。病院で静かに最期を待つのではなく、人生の時間をしっかり使い切っています。しかし看取り経験や在宅の知識がないと、こんな終わりが訪れます。萬田先生の言葉を引用します。

「食べられないから死ぬ」のではなく、「死に向かっているから食べられなくなる」。それなのに、病院で亡くなる多くの人には、ゆっくり着陸することを阻むように延命治療がなされます。

祖母は植物が枯れるように静かに亡くなったのですが、その決断ができたのは、祖母の隣で延命治療をしている人がいたからです。栄養や水分の点滴と酸素チューブにつながれた見知らぬ人の姿を見て、これが本当に幸せな最期なのだろうかと思いました。

家族は緊急時に対応できないから、不安だからと病院を選択しがちです。本人が自宅で最期を迎えたいと思っていても、家族側の覚悟が足りないことが多いのです。

わたしも知識不足のままスタートしましたが、医師からは家族の覚悟さえあれば自宅でも遠距離介護でも何とかなると言われ、それを信じて父を退院させました。あの選択をしてよかったと、今でも思います。

余命を大切に生きるためのコツ

残りの人生を楽しく生きるために必要のないもの、それは痛みだと思います。叶井さんは死ぬこと以上に、痛みを嫌がっていたようです。

常々「死ぬことよりも痛いことのほうが嫌」と言っていた夫にとって、激しい痛みは何より恐れていたものです。

自分が75歳になるまでは、お金の許す限り積極的に治療しようと今のところは思っています。でも治療が難しいと判断されたときは、徹底的に痛みを取ることに注力しようと考えていました。

叶井さんは痛みを我慢をしない人らしく、素直に訴えるから手術が早くなると書いてありました。これってできるようでできない、とても大切なノウハウですよね。つい周りに気をつかって我慢しがちだけど、痛いときはしっかり痛いと言うと本を読んで決めました。

あと配偶者の介護や死というのは、祖父母や両親と全く違うものと考えています。レベルが1つ上のように、思います。わたしが介護を受ける側になるかもしれないし、妻の介護が待っているかもしれないし。

最後に、くらたまさんが葬儀で後悔している話を引用して終えます。

葬儀については、ほとんど何も考えていませんでした。夫の希望も聞いていません。夫の存命中に彼の死後のことなんて考えたくなかったですし、そのことについて話をするのも嫌でした。

くらたまさんの妹さんや叶井さんの妹さんが葬儀業者と交渉してくださったらしいのですが、わたしも祖母の葬儀で後悔したので、父にはしっかり希望を聞いたのですが、それでも失敗したと思っています。なので、介護中の母の葬儀会場はもう下見を終えています。

看取る側の後悔はいつまでも尾を引いてしまうので、そうならないためにこの本でしっかり予習して、実践することをオススメします。

夫が「家で死ぬ」と決めた日 ~すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで~

夫が「家で死ぬ」と決めた日 ~すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで~

倉田真由美
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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(82歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【著書】
老いた親の様子に「アレ?」と思ったら(PHP研究所)、親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか

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