医師からの認知症の告知の瞬間に立ち会った!

かかりつけ医 → 地元の県認知症センター と病院を渡り歩き、やっとたどり着いたコウノメソッド実践医。(今までの経緯は右サイドのカテゴリ、認知症をご覧ください) 受診予約の3週間先が、とても遠く感じました。

認知症の母を病院へ連れて行くという困難

認知症をもつご家族であれば、みなさん難関と思われる 『認知症の人をいかにして病院へ連れて行くか』。わたしはどうしたかというと、ウソをついて連れて行きました。その前に何度か様子見のために、『健康診断があるから、かかりつけ医に行こう』 みたいな事を言ってみたのですが、とにかく拒否。

結局、祖母の転院先=コウノメソッド実践医 とウソをついて、ギリギリまで祖母の件と何度も言い、診察室に放り込んだという表現が正しいと思います。いつばれるか・・という緊張感がすごかったのですが、母のもうひとつの病気である、シャルコー・マリー・トゥース病の診断 という事前のジャブも効いていたようで、完全にその診断だと本人は思い込んでいました。

結構わたし(息子)を、母は信頼してくれます。というのも、初期の頃からどんなことがあっても、『決しておこらない』 というのが効果があるんだとわたしは思っています。認知症患者を相手にすると、何回も同じ質問を短時間で言われると、誰でも怒りたくなります。そこを人間修行ととらえ、毎回初めて聞いたかのように振る舞う・・・言葉以上にこの作業はストレスです。

認知症の人って記憶は残らない(特に新しい記憶)、でも感情は残るので、とにかくおだやかに・・・これがきっといいんじゃないかと。ウソをついて、いよいよ診察です。

コウノメソッド実践医に診断してもらう

まずは恒例の長谷川式認知症スケールテストを実施。さらにCTを撮って、診察室へ母と一緒に入りました。2分で終わったかかりつけ医(神経内科)や、優しいけどレスポンスがない県認知症センターのいやな思い出が頭をよぎる中、いざ診察です。今回初となった、時計描画テストを先生は実施しました。

かかりつけ医
『時計の絵をかいてください』『大きな円を描いて、その中に文字盤を書いてください』『10時10分を書いてください』

ドキドキでしたが、母はすんなりクリアしてくれました。このテストは生活能力の低下を見るテストで、できない人は車の運転、家事などができなくなっている可能性があります。さらに続きます、今度はレビースコアの問診をしてくれました。

このブログでも何度も紹介している本を読んで、診察に臨んでいる私ですから、この時点で心の中で、『先生、最高だよー!これが認知症の診断!3か月もかかったけど、やっとここにたどりついた・・・』 そんな思いで、診察で泣きそうになりました。さらに診断は続きます。

先生が母を認知症かどうか判断する材料は、上記の知能検査(長谷川式認知症スケールテスト、時計描画テスト)、そして問診です。CT画像よりもこちらの方が重要なのです(医者気取りですが、全部本に書いてます)。さらに家族への問診へと続きます。この家族への問診も超重要です。これをしない先生は、先生じゃないです・・・わたしが勝手にそう思ってます。

ここ半年に起こった母の行動リストを作ってもっていったので、母の前で、『米を何回も買った』 『22年前に出て行った父が、家に戻ってくるいう妄想がしょっちゅう』 とかとか、なかなか口には出せない事を先生は黙って黙読してくださいました。

先生からの認知症の告知

先生にわたしは、『家族に対してだけ告知してください』 と最初はお願いしました。でも先生は、母との問診で気づいてしまったのです。 『この人、この段階になっても認知症の診断だと思っていない、シャルコーマリーの方と勘違いしている』 と。 そこで先生は方針を変更して、本人を目の前にしてはっきり告知しました。

かかりつけ医
『ショックな事をいいますが、あなたはアルツハイマー認知症です』
『でも認知症だからと言って落ち込む必要はありません。認知症は風邪といっしょで病気なんです。病気になった人を責める人がどこにいますか?』
『認知症に対しての社会の偏見は、まだまだあります。風邪をひいた人を変な目でみたりしますか?まだまだそういう社会環境ですが、少しずつ理解されていくとわたしは思っています』

おぉー、先生!すばらしいです! 熱いお言葉でしたが、本当にそうなんですよね。なりたくて認知症になる人なんていません。それからというもの、母に対してさらに優しく、あくまで病人なんだ という接し方に変わりました。しつこいけど、3か月待ったかいがありました。その病院は”ものわすれ外来”を、1人の患者に30分~1時間割いてくれます。

わたしは1回、ある神経内科で ”もの忘れ外来・なんでもご相談ください(ハートマーク)” という温かい看板に見事だまされた事があるので、問診に時間をかけないお医者さんはNOと考えていいと思います。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか