白内障手術で悩んだ認知症の人の眼内レンズ選び

来年1月に母の白内障手術があるため、手術前検査を受けてきました。手術の説明映像を見てきたのですが、今回最も悩んだのが濁った水晶体の代わりに入れる眼内レンズ選びでした。認知症の母に合ったレンズは、どれなのか?

提示された眼内レンズは3種類

提示された眼内レンズは3種類で、単焦点レンズ(保険適用)、多焦点レンズ2種類(2焦点、3焦点、いずれも自費)でした。価格は保険適用だと約2万円くらい、多焦点になると20万~75万とめちゃめちゃ幅があります。

白内障は80歳までにほぼ100%の方がなるので、誰もが避けて通れない話です。事前にネットで情報をなんとなく集めていたものの熟読はこれからという感じで受診したのですが、今日決断してくださいと言われ、決断に与えられた時間は1時間だけ。やばい、時間が足りない!

認知症と難病を抱える母に合ったレンズはどれ?

まずはお金の問題ですが、わたしはいくら出してもいいと思っていました。といってもわたしが払うわけではないのですが、お金に糸目をつけない理由は認知症とシャルコー・マリー・トゥース病です。

多焦点レンズ(3焦点)となると、遠距離も中距離も近距離も見えるようになるので、眼鏡が必要なくなります。自分の眼鏡をタンスにしまって何日も眼鏡を探せずにいる認知症の母には、ちょうどいいと思ったのです。

もう1つは、転倒のリスクです。手足が不自由で、外は歩行介助が100%必要な母です。足元が見えずに転倒して、骨折して寝たきりになるのはどうしても避けなければいけません。

骨折→入院→退院→在宅介護を諦める→介護施設に預ける、こうなると75万どころでは済みません。母の人生のお金の使いどころはここだ!と判断しました。

母は手術の事情を飲み込めていませんでしたが、お金に関しての高い安いの感覚はあります。とはいえ、わたしが75万のレンズがいいと言ったら、おそらくあんたが言うならっていって、わたしの判断になるでしょう。

1時間で必死にスマホで多焦点レンズの情報をひたすら調べ、メリット・デメリットがたくさん出てきました。認知症の人の話が思ったように集まりませんでしたが、75万のレンズに決めました。

眼科スタッフの方の丁寧な説明

この日の盛岡は雪で、いつも混んでいる眼科が珍しく空いていました。そのせいなのか、いつもなのか分かりませんが眼内レンズに関する説明がとても丁寧で、わたしが懸念している認知症の進行、転倒、眼鏡をなくす話を最初に伝えました。

その後別の方が来て、手術後の通院について説明があって、2023年前半は猛烈な勢いで通院が必要になりそうで、ひょっとするとコロナ前のような頻度の遠距離介護に戻るかもしれません。

そして再びレンズの説明のスタッフさんが来て、75万のレンズに決めた!と言いかけたところで、別の説明がありました。

息子さんの事情を伺って考えたのですが、ひとつ言い忘れていたことがあって、お母さまは遠視と乱視が入っているので、75万のレンズにしたときに思ったような効果が得られない可能性もあると言われたのです。

それでも眼鏡がなくても見える生活のほうが母にはいいと思って、75万円のレンズの決断は変えませんでした。全部見えたほうが、安全に決まっている!

このスタッフさんを信頼した理由があって、どうせ高齢だし、認知症だし、お金がもったいないから単焦点の保険適用でいいんじゃないの、今さらお金かける必要はないんじゃないのっていう姿勢を一切見せなかったことです。

そして、75万か単焦点かの押し問答があって、単焦点レンズでいいかもしれないと提案がありました。母には遠視と乱視があって、奇跡的に手元が見える可能性があると。そうするとテレビを見られるくらいの距離に合わせ、手元は奇跡をうまく活用すれば、今と同じ感覚になる、100%とはいえないけどという話でした。

「今と同じ感覚になる」って言葉にとても弱くて、なぜなら母は認知症で目の見え方が劇的に変わったら、認知症の症状にどんな変化をもたらすのか分からなかったからです。実際に手元が見えるかテストすると、確かに眼鏡なしで見える瞬間もありました。

多焦点レンズはアクティブシニアの方とか、50代、60代で白内障になる若い方が選ぶそうです。デメリットは、夜間の運転でライトに輪がかかったようなグレア現象が起きること。

また多焦点レンズになると目から入ってくる情報量が多くなるので、高齢の方の中には脳がうまく適応できずに、かえって見づらいケースもあるのだとか。

母はテレビを見る、料理を食べる、カレンダーが見える、転倒しない、これさえカバーしていれば、正直問題ありません。新聞はなんとなく読んでますが、理解しているかは不明です。結局75万のレンズではなく、保険適用の単焦点レンズにしました。

おそらく母は白内障の手術をしたことも、レンズが入ったことも気づかないと思います。でも見え方の変化は明らかにあるので、これまでとの違いを介護者であるわたしが拾っていくしかありません。

そして医師に伝えながら、見えないところは新しい眼鏡でカバーしていく必要がありますが、今後は必要なくなるかもしれません。

これまで母は遠近両用の眼鏡を使っていたようで、前に検査したあとすっかり忘れていました。眼鏡をよく失くしていたので、さぞかし生活しづらいと思いきや、遠視なので遠くはそこそこ見え、近くは乱視がうまく働いて、見える日もあって不便ではなかったようです。

だから眼鏡がなくても生活に支障がなかったのか、不幸中の幸いです。ということで、来年前半くらいまでは白内障の記事が多くなるので、ブログカテゴリを久しぶりに新設しました。

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今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか