「介護が始まったらまず地域包括支援センターへ!」だけじゃない

地域包括支援センター

「まずはお近くにある、地域包括支援センターにご相談ください」

介護が始まった人は、このように言われます。そもそもセンターの存在を知らない方が多数なので、こういった啓蒙活動が広がっているのだと思います。中学校区と同じ単位でだいたいあって、全国に4000か所以上あります。

地域包括支援センターの役割を、厚労省のサイトより引用します。

地域包括支援センターは、市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置して、3職種のチームアプローチにより、住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設である。 
引用元:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/

主な業務は、

  1. 介護予防ケアマネジメント業務(介護予防ケアプランの作成)
  2. 総合相談支援業務
  3. 権利擁護業務(成年後見制度、高齢者の虐待への対応)
  4. 包括的・継続的ケアマネジメント支援業務

となっています。介護家族には分かりづらい業務ですが、公的な介護保険サービスを利用する場合に大切になる機関です。近所にあるはずなので、医療・介護・福祉で困ったら頼るところと覚えておいて間違いありません。

わたしは地域包括支援センターを利用したことがない

うちも公的な介護保険サービスを利用しておりますが、「わたしは」一度も利用したことがありません。

祖母と母の介護を始めたとき、すでにケアマネージャーがいました。母が祖母の介護と、自分が手足が不自由ということで、誰かに相談して地域包括支援センターに辿りついたようです。これから利用するつもりはあるか?と聞かれたら、たぶん利用することはないと思います。

官だけでなく、民も活用するクセ

道路公団が民営化されて、サービスエリアが格段によくなったのは明らかだと思います。あのイメージがわたしには強くあって、まず官は抑えるけど民のサービスもないか?と調べるクセがついています。

例えば、かなりお世話になった認知症110番という無料の電話相談も公的なものではありません。介護初期に救われました。

認知症110番

介護保険サービスを利用するためには、公的なステップを踏まないといけないのは分かってます。それは最低限やりながらも、相談事は民も活用したほうがいいのでは?というのが、わたしの考えです。

市区町村の開催する認知症や介護の講演会も、民のものよりも参加する機会は少ないです。無料や参加費が安いのはありがたいのですが、講師が魅力的でなかったり、割と「ふつう」の話が多い印象です。

あるケアマネが語る地域包括支援センター

ケアマネが講演で、このようなことを言ってました。

  • 地域包括支援センターの認知症の知識は浅い
  • 地域包括支援センターは相談・紹介は行うが、その後どのような治療が進むか把握してないので、よくない病院を紹介し続ける
  • とにかく動きが遅い

わたしの情報収集がおかしいのか、あまりいい話が入ってきません。地域包括支援センターのホームページも、最低限のことしか書いてないところが多いです・・・情報不足。それに厚労省のホームページに、なぜかご丁寧に問題点がたくさん載っていました。いくつかご紹介します。

地域包括支援センターが抱える課題は、「業務量が過大(81.6%)」が最も多く、次いで「業務量に対する職員数の不足(70.2%)」、「職員の力量不足(53.7%)」、「専門職の確保(53.5%)」、「関係機関との連携が十分でない(43.4%)」、「職員の入れ替わりの早さ(22.1%)」の順であった。

2015年に調査した300ページ以上の報告書をちょっと読んだのですが、なんか大変そうです。そして職員の力量不足については、こう書いてあります。

「ア 職員の力量不足」の場合の業務内容は、「地域におけるネットワークの構築に関わる業務 (76.7%)」が最も多く、次いで「権利擁護に関わる業務(66.3%)」、「包括的・継続的ケアマネジメント事業に関わる業務(53.1%)」、「総合相談支援に関わる業務(52.1%)」、「指定介護予防支援に関わる業務(要支援対象者)(27.0%)」、「介護予防ケアマネジメントに関わる業務(二次予防対象者)(24.8%)」 の順であった。

地域のネットワークの力量不足とは、医療機関との連携も十分でなく、地域にあるインフォーマルなサービスの知識も乏しいとありました。こう見ると、介護保険サービスを利用する際は強そうですが、それ以外の相談はあまり強くない印象です。総合的に支援してくれるはずなのに、地域のネットワークに弱いのは・・・

官だけではない、民の力も積極的に活用しよう!

例えば、東京・新宿にある「暮らしの保健室」。医療・介護・福祉の相談に無料でのってくれます。ふらっと立ち寄れる、お茶が飲めるような気軽な場所で、全国に広がっています。

保健室が地域包括支援センターに相談するという流れもあるようで、地域の窓口としての役割を果たしています。

認知症カフェもそうですし、官民を併用して相談箇所を増やしておくといいと思います。医者でいうところのセカンドオピニオンを、介護でも増やしておくべきです。

特に介護初期は、言われるがままに行動しがちです。ミスリードが起きていても、全く疑う余地もありません。別の人に聞いたら、全く違ういい方法を教わったということはしょっちゅうです。相談する場所は、介護初期から複数もっておくとより安心できますよ。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか