もっと注目されてもいいと感じる独身者の介護の話

キッチン

全国の講演会の主催者の皆さんと、講演前や講演後にじっくり話すことがよくある。

自治体が主催者の場合、介護というテーマでもやはり、子育て世帯も意識している。特に都会ほどその傾向が強く、ダブルケア(介護と子育ての両立)の話が出てくる。晩婚化・晩産化が進む今、介護と子育てを同時に行っている人が増えているので、注目するのはいいことだと思う。

企業が主催者の場合も、ダブルケアへの意識はあるものの、どちらかというと独身者の介護の話になる。社員の世代を見たときに、もうすぐ介護が始まる世代で独身の方が多いと。ただ、講演内容として、独身の方にターゲットを当てた依頼は今のところない。

50代・60代の独身の方は誰と暮らすのか?

面白いなと思ってたまに読むニッセイ基礎研究所のレポートに、天野馨南子さんの『データで見る「ニッポンの独身者は誰と暮らしているのか」-「結婚のメリットがわからない」独身者の世帯(居場所)のカタチとは。』があった。

このレポートの中に、いわゆる死別・離別を含まない未婚の50代・60代独身者が、男女それぞれ誰と暮らしているのかというデータがあった。

わたしは30歳くらいまでは親と暮らす独身の方も多く、その後ひとり暮らし、50代以降は介護が始まり、親と介護で暮らすようなイメージを持って、レポートを読み始めた。

しかし結果は、男女ともにむしろ50代から1人暮らしの割合が増えるのである。なぜか?レポートにはこうある。まずは男性。

親の介護等で親との同居が増加することも予想したが、逆にその割合は減少、代わりに1人暮らしやきょうだいのみ同居が増加する。親が施設に入る、他界する等で同居を中止・終了しているようにも見えるデータとなっている。

引用元: 『データで見る「ニッポンの独身者は誰と暮らしているのか」-「結婚のメリットがわからない」独身者の世帯(居場所)のカタチとは。』 (ニッセイ基礎研究所)

そして、女性。

こちらも男性同様、50代から親と同居は大きく減少する。60代で両親との同居が減少する代わりにきょうだいとの同居に同率水準で移行していることも興味深く、男性より強く「身内密着型世帯死守」が示唆されている。

引用元: 『データで見る「ニッポンの独身者は誰と暮らしているのか」-「結婚のメリットがわからない」独身者の世帯(居場所)のカタチとは。』 (ニッセイ基礎研究所)

もちろん、1人暮らし=介護していないというわけではなく、わたしのように通いで介護している可能性はあるのだが、50代女性から親との同居が増えると勝手に思っていたら、そんなことはなかった。

独身介護のメリット・デメリット

独身介護のメリットとして、配偶者側の雑音なしで、いろいろ決められることがある。

結婚すると、関わる親族の数が増える。その分、周囲からの目も気になるので、親を介護施設に入れるにも、いろいろな意見が飛び交う。嫁や夫、その親族、意見はみんなバラバラで、力のある親族がまともな意見の持ち主ならいいんだけど、そうでないと最悪で・・・。そして自分の親に加え、配偶者の親の介護まで背負う方は多い。

これはきょうだいが多い家族でもよくある話で、ひとりっ子は頼れる人がいなくて介護が大変という話もあるが、きょうだい間で介護で揉める話のほうを多く聞く。親の介護以上に、きょうだいの調整のほうで疲れたと。5人きょうだいの介護者が、介護疲れよりきょうだい疲れがひどいと言ってて、思わず笑ってしまった。

レポートの結果から、独身の方のほうが頼れる人が少ない分、また調整する人が少ない分、介護のプロに頼ったり、施設を利用したりする決断が早く、上手なのかもしれないと思った。それができない場合は、独身の方のほうが大変で、そこがデメリットとなる。

最後に結婚願望について、こうある。

50代以降、親の健康事情等によって「20代から続いた親との同居が解消」され、「中高年からの非自発的な1人暮らし」をする独身が急増する姿がみてとれる。その中で、45歳以降ようやく「1人は不安、やはり結婚したい」と思い始める現代の独身男女の姿が浮かび上がる。

引用元: 『データで見る「ニッポンの独身者は誰と暮らしているのか」-「結婚のメリットがわからない」独身者の世帯(居場所)のカタチとは。』 (ニッセイ基礎研究所)

結婚に向いてないと思っていたけど、親の健康・介護問題に直面して、考えが変わるとレポートにある。

子育てと介護が大変という方に会う一方で、介護と婚期のタイミングが重なって、結婚が遠くなったという方も多くいる。後者はたまに介護カフェで話題になるが、そういう発想に至ってない方は結構いる。標準世帯(夫婦、子ども2人)で物事を考える習慣が相当根強いのだが、もはや日本の総世帯数の5%にも満たない

都市部のほうが独身の方が多いイメージなのだが、ある地方の町に講演に行ったとき担当者の方が「うちは50代の独身男性が多く、介護も始まるからそういった方向けの企画もできるといいんだけど」と言っていた。都会とか田舎とかでなく、地域によって本当にいろいろなのである。

今回参考にしたレポートはこちら。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか