1/18新刊 重版決定!

認知症の経過報告(2年と27週・28週間目) 母の誇りはカレー漬

わたしが嫌いなものは、「漬け物」 です。これを言うとほとんどの人が、「出身が出身なのに、どうして」 と言います。大阪の人がすべて阪神ファンでないように、嫌いな人もいるんですよ(笑)

今から35年前、わたしがまだ小学生の頃、家族みんなでりんご園に行きました。りんごを採った数は全く覚えてませんが、このことだけははっきり覚えています。それは、母がりんご園のご主人から頂いた 「カレーの漬け物」 のことです。

認知症になる前の母は、お店の料理を家で再現できる人でした。何の調味料を使っているか、分かる人でした。しかし、この「カレーの漬け物」 だけは再現出来ず、失敗に失敗を重ね、数年がかりで見つけることができたのです。

この苦労話が大好きな母は、訪看さん、ヘルパーさん、ケアマネさん、とにかく家に来る人すべてに話したので、みなさんも「カレーの漬け物」に興味津々。しかし言ってばかりで2年も形にならないので、みなさんも 「いつもの話ね」 と内心思っていたと思います。

昨年作ってもらったら

あまりに言い続けるので、昨年言われた材料をそろえて作らせました。しかし、分量は違うし、漬け方が甘い!

そりゃそうです、洗濯物を濡れたままとりこむ母ですから、一晩寝かすということができません。塩もみして30分経たずに次の工程へ移ったのです。本人はこれでいい!と言って聞かないし。

わたしは食べられないので、妹に味見をしてもらったところ、材料はあっているけど分量と日数の問題だと分かりました。そして、今年。未だにカレー漬の話をする母を見て、「しょうがない、やってみるか」 と。

で、早速材料をそろえ、ネットでレシピを調べてみることに。カレーのピクルスが近かったので、それを見ながらわたしが作ってみることにしました。

ポイントはローリエ

母は 「ローリエ」 を入れることを、苦労して見つけたのでした。ということで、酢、カレー粉、キュウリ、ローリエ、砂糖、塩を準備します。ジップロックできゅうりを塩もみして、1晩寝かします。

こちらが材料すべてです。

塩もみして1晩寝かしたキュウリに、カレー粉・砂糖・酢を混ぜたものをレンジで温め、それをジップロックにいれてまた1晩寝かせます。

で、こちらが完成品!

カレー漬を作ったあとの母の反応

1回目作った時は、カレー粉と砂糖が足りないと母が。それで言われたとおり2回目作ったら、母が大絶賛!

「わたしよりうまいじゃない!」

量も少ないので、1日でペロリ。あまりに食べるペースが早いので、3回目を作りました。すると、母がわたしにこう言いました。


「わたしが作ったカレー漬、そういえば皆さんに食べてもらった?」

そ、そう来ましたか・・・、うぬぼれ過ぎでしょ、さすがに(笑) 

「あんたが作ったのよね」 と気づく日もありますが、うぬぼれる日もあります。母が作ったことにして、皆さんに振舞えば、うぬぼれを助長させることになりますが(笑)、認知症的にはいいことですよね。

「わたしは、まだまだできる!」

そう母が思うようになり、生活にハリが出て、そして認知症の症状もおだやかになる・・・たぶん。

ちなみにこの 「カレーの漬け物」、 ホント一度も味見してません・・・嫌いだから。レシピ公開しましょうか?って、自分がうぬぼれてどうする!!

今日もしれっと、しれっと。


 


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発売1か月で重版出来!

東京と岩手の遠距離「在宅」介護を、10年以上続けられている理由のひとつが道具です。わたしが使ってきた道具を中心に、介護保険の杖や介護ベッドなど福祉用具も含め、介護者の皆さんがラクになる環境を実現するための本になっています。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。岩手にいる認知症&難病(CMT病)の母(79歳・要介護3)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて11年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか