【時間でたどる】認知症の母と息子が健康診断の結果を聞いた日

認知症 健康診断

ジャック・バウアーというか『24』みたいになってしまったが、認知症の母とわたしで健康診断の結果を聞きにいった話をそのままお伝えする。祝日なので、なぜかこんな文章になってしまった。

【8:05】 盛岡の自宅を出発。本当なら9:30に家を出ればいいのだが、移動手段が確保できず。数日前に介護タクシーの予約、近所の格安レンタカーの予約の両方とも失敗。やむを得ず、家からバスで30分もかかる格安レンタカーを確保。普通のタクシーも考えたが、盛岡のタクシーはアホみたいにメーターが上がるので、止める。自宅近くのバス停から、バスに乗ってレンタカー屋へ向かう。

【8:50】バスに30分乗車し、徒歩10分で格安レンタカー屋に到着。手続きをして、レンタカーを借りる。車種はヴィッツ。レンタカーに乗って、母の待つ実家へ急ぐ。

【9:30】母を車に乗せ、病院へ出発。道中「これから、何て病院に行くの?」を連発する母。何度も答えるけど、何度も質問される、いわゆるエンドレストークが運転中続く。

【9:50】病院到着。病院入口から離れたところに車を止めないといけない場合があるので、入口付近で母をまずひとりで降ろす。母はほぼひとりで歩けないので、2m先の入口の壁につかまっているように言う。入口で長く車を止めらず、降りられないから運転席から母が無事壁までたどり着くかを見守る。なんとか2m先の壁に寄りかかったのを見て、急いで駐車場を探すも、奥のほうしか空いてない。駐車場に車を入れ、母が心配になって入口までダッシュする。母は黙って立っているのも苦手。

【10:00】母と2人、腕を組んで病院内をゆっくり移動。この病院の床は滑らないので、母はかえってつまずきやすい。以前もここで派手に転んだので、「足を高くあげて!ほいっ、ほいっ!」と運動会の2人3脚状態。認知症になる前に、杖の訓練をしておけばよかったかなと、いつも思う。検査結果を聞く部屋に、なんとか到着。「今日は何の検診なの?」を連発する母。「結果を聞くだけ」という、エンドレストークが待ち時間中続く。

【10:10】医師に呼ばれる。胃がん、子宮頸がん、乳がんの結果は、異常なし。ホッとする。健康診断は高脂血症で、これはいつものことなので、健康診断自体も問題なし。母は「がんは遺伝しますか?」を2回繰り返す。会話を成立させようと、医師にそれっぽい質問をする。自分の言ったことは覚えてないし、しかも質問が止まらない・・・あまり長く話すと、医師が認知症だと気づき、どこか病院を紹介されたり、アリセプトを勧められるだろうと勝手に妄想する。母の肩に無言で手をそっと置くと、母の会話が止まり、逃げるように退散。

【10:30】ランチをしようにも、11:00まで店が空いていない。そのため病院内の喫茶店で2人、アイスコーヒーを飲む。健康診断とがん検診の結果がよく、親子で喜ぶ。病院外の岩手山を見ながら、富士山に来月行くよ!という話をする。

【10:50】本当は11:30オープンの行きたい店があったが、母と喫茶店で長時間話すのはキツイ。それで11:00オープンのイオンの中のお店を目指す。イオンも病院同様、駐車場が広い。母との移動が大変なイオンはいつもは避けるが、今日はやむを得ない。エントランス付近で母を一旦降ろし、「あの壁につかまって待ってて」といい、車で駐車場の空きを探す。また空きがなくて、店から遠いところに車を止め、ダッシュでエントランスへ向かい、息が切れる。母が転んでいたらと心配になるので、ついダッシュしてしまう。

【11:00】母と一緒にランチ。母はハンバーグ定食、わたしはそば&山かけ丼を食べる。デザートは母はパンナコッタ、わたしは豆乳プリン。「パンナコッタって何なの?」を連発する母。マシンガンのようにパンナコッタを連発するので、母がジャック・バウアーのように見えた。

【12:00】イオンの駐車場を、再び2人3脚で車まで移動。距離があったが、リハビリだと思って片道だけは頑張ってもらう。イオンは広すぎるので、違うスーパーで買い物をするために移動。この日はヘルパーさんの買い物の日だったが、結果を聞くためキャンセル。母を車に残し代わりにわたしが、4日分の食材を買い込む。賞味期限はできるだけ長いもの、3個パックは安いけど1人暮らしだと廃棄になるから、高くても単品、料理しなくてもすぐ食べられる練り物、大好きな牛乳2本、米など買って、車に戻る。そのあと銀行に行こうとしたら、母がトイレに行きたいと言い出す。

【12:10】銀行のトイレを借りて、もし和式だったりしたら手足が不自由な母は漏らすしかない。銀行は、自分が小学校の時と変わってなく、とても古い。安全策を取り、一旦家まで戻って、母にトイレに行ってもらう。その後、再び腕を組みながら車まで移動し、母を乗せ、銀行まで移動。

【12:20】母の通帳の磁気がおかしくなって記帳できなかったので、交換してもらう。通帳のケースにカードをはさんでいたことが、問題らしい。こういうとき、本人がいないと面倒かなと思い、母にもついてきてもらった。「銀行の窓口は透明なアクリル板で仕切られていて、穴から銀行員がお金を出す」と言ってきかないので、実際に銀行の窓口を見せて「ほら、ないでしょ」と言う。すると母は「銀行じゃない、郵便局だった」と意味不明に強がるが、郵便局もそんなアクリル板なんてない。留置所の面会(ドラマ)ぐらいでしか、今はあの光景は見かけない。こうやって見せても、次の日には「アクリル板」の話をするので、正解を教えてもあまり意味はない。いつの時代の話だろ、30年前の銀行か?

【12:40】自宅に帰り、母を降ろす。歩いたり移動したりで母はお疲れ。抜歯後の消毒が必要なので、うがい薬を作り、母にうがいを促す。うがいが終わったあと、自分の部屋に戻ってメールの返信だけする。その後レンタカーを返すために、再び車で20分ほど走る。

【13:10】ガソリンをセルフスタンドで入れて、レンタカー屋に返却。今日のお仕事終わったー!とホッとし、ブラック缶コーヒーで一息つく。

【13:30】タイミングが悪く、バスが来ない。バスに乗って、自宅まで戻る。

【14:10】無事、帰宅。母がアイスコーヒーやら水を飲み過ぎて、腹が痛いというので正露丸を飲んでもらう。

以上です、大統領!

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

お疲れ様でした。私まで息切れしそうでした!私も母を病院に連れていくときは、院内ダッシュです。自分がトイレに行くとき、お会計から戻るとき。車をとめて戻るとき。先日は私がトイレから戻ると母は定位置におらず、少し離れたところで他人に、自分はどうすればいいか懸命に聞いていました。その相手が中学生くらいの男の子で、お互いに困ってました! すぐ戻るからこの場で待っててね を忘れてしまうようです。不安にさせてしまい悪かったなーと思います。

ふくいさま

ありがとうございます。確かに少し離れる瞬間は、いろんな場面でありますよね。どこかへ行ってしまうリスクのほうが、一般的には多いのかも
しれません。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか