遠距離介護と認知症の母の歯の治療は相性が悪すぎる話

歯医者 遠距離介護

母は1年半前くらいから、2か月に1回のペースで近所の歯医者にお掃除に通っています。

なぜ通うようになったかというと、母の入れ歯掃除ができてなくて「口腔カンジダ」になったからです。母のピンク色であるはずの上あごが、真っ白なカビで覆われていました。あの苦い経験から、2か月に1回通うようになりました。

今回も掃除に合わせて盛岡に帰省したのですが、歯医者に行く前の日に必ず「わたしによる」歯の掃除を行っています。ビニールの手袋をして、入れ歯を念入りに磨き、残っている歯に歯間ブラシを通します。

母の歯は上が3本、下は6本しか残っていなくて、上は歯間が1箇所しかなく、下は5箇所あります。いつものように歯間ブラシでゴシゴシやっていたら母が、

なんか、歯がグラグラする
くどひろ
うわっ、本当だ。これはダメかもね

ラッキーだったのは、たまたま歯医者を予約していた前日に見つかったことです。わたしから歯科医に「母が歯がグラグラすると言ってます」と伝えられたこともラッキーでした。母は認知症なので、このベストなタイミングで歯のことを言わない可能性もありました。(歯科医に見つけてもらえるはずですが)

このタイミングを逃すと、わたしの遠距離介護スケジュールによっては1か月以上先になってしまう可能性もあったので、いろんな意味でツキがありました。

歯を抜いたあとの母との戦い

結局、歯はその日に抜くことになりました。少ない歯で入れ歯を支えていたため、負荷がかかって弱くなっていたそうです。さらに、これから盛岡は寒くなるし、できれば今抜いたほうがいいという判断でした。

この歯医者さんの何がありがたいって、先生がケアマネの資格をお持ちなのです。だから、うちの事情を汲んでくれるのです。例えば、歯の治療の説明、判断が必要なときは、必ず待合室で待つわたしに声がかかります。説明しても、母は忘れちゃいますし。難病でスリッパの履けない母は、靴下のまま院内を歩くのですが、それも分かってもらってます。

歯を抜き、脱脂綿を噛んで自宅に帰ったあと、本当の戦いが始まりました。

くどひろ
今日は歯を抜いたから、うがいはダメね。歯も磨いちゃダメ
うん、わかった。なして、ジュースとか水は飲んでいいの?うがいと同じことでしょ~
くどひろ
うがいするとね、固まった血が流れて止血しないんだって。ジュースはぐちゅぐちゅまではしないでしょ
なるほど、わかった。

っていうラリーが1回で済めば、何の苦労も要りません。

数分後にはやはり、うがいとジュースの違いに納得ができず、その数分後にも、そのあともそのあとも・・・そして歯を抜いたことも忘れるし、どの歯医者に行ったかも忘れます。

それを全部毎回説明していると、わたしも弱ってきます。今日もマシンガンで撃たれまくりです。結局、血が溜まってくるので、ムズムズしてどうしてもうがいがしたくなります。だけど今日だけはガマンしてといいます。で、いつものように自分が弱る前にこれやりました。

台所の水道蛇口の前に貼っておけば、うがいしないだろうとまず1枚。1日中座っている居間にも、同じ張り紙をしました。しかし、なぜうがいをしてはいけないのか、相当気になるようなので、そちらについてもパソコンで入力し、プリンタ出力して、次の写真のように居間に貼りました。

張り紙をしてもうがいをしようとするので、何度か止めました。しかし、わたしがお風呂から上がったとき、ついに母は歯みがきもうがいもしてしまいました・・・・台所のシンクに貼ってあっても丸無視って、なかなかやりおるわ・・・

くどひろ
あぁ・・・・ 張り紙、張り紙!

と言いましたが、もうやっちまったものはしょうがない。6時間近く監視してきたのに・・・、結局、血は止まっていたようで、問題はありませんでした。

遠距離介護と歯医者の相性が悪すぎる!

本題はここからです。

遠距離介護と歯医者って、本当に相性が悪いのです。歯の掃除くらいなら1回で終わるからいいのですが、歯医者に通い始めると数か月かかってしまいます。

今回もわたしが1回目連れて行って、2回目の入れ歯型取りは妹がたまたま休みだったので、妹に依頼、3回目はその翌日に行かないといけないのですが、妹は仕事・・・そこはヘルパーさんに通院介助を依頼して、手配を終えて帰京しました。

前に入れ歯が壊れたときは、2か月近く通院しました。ことごとくわたしのスケジュールと合わず、ヘルパーさんに通院介助をお願いしました。ヘルパーさんがタクシーを自宅まで呼んでくれ、母はタクシーを待たせるのが嫌いなのでそれに乗って勝手に歯医者に行き、ヘルパーさんはタクシーも母も居なくて大騒ぎ!なんてことも、昔はありました。

そしてしれっと、抜歯のあとは「1日3回から4回のうがい」と書いてあります。痛み止めのロキソニンは、1回飲んだら6時間以上空けてと書いてあります。ひとり暮らしで認知症の母には、これらはムリです。わたしが居る間だけ、うがいはしてもらうという方法を取るしかありませんでした。

実は明日からなんですよ、2回目の歯医者に行くのは。上の入れ歯がない状態で、1日過ごしたうえにデイサービスもあります。入れ歯がない状態ではデイに行きたくないというと思って、デイには事情を伝えてあります。デイと話し合って、その日はマスクを用意しようということで、マスクも準備してきました。

わたしは東京で無事を祈るしかできませんが、やれることはやってきました。おそらく今後も歯医者にお世話になることはあるでしょうから、この体制をうまく利用していきたいと思います。次の手段も考えてはいるのですが、歯医者は近くて歩くリハビリにもなっているので、当面はこれでいきます。

今日もしれっと、しれっと。


にほんブログ村 介護ブログへ


【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか