メタボ検診受けないと罰金?「科学的介護」ってなに?

科学的介護

4月14日に安倍総理が「第7回未来投資会議」を開催、医療・介護・予防システムの構築について話し合い、その議事録が首相官邸のホームページにアップされました。

せっかくAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット化)など他の分野では技術的に進歩しているのに、「介護」の分野は遅れていると思います。前にFacebookでご紹介した「小学校の欠席連絡はFAXで」の話を、わたしの実体験に置き換えて少し触れます。

わたしがある訪問介護事業所の代表と名刺交換したら、メアドが書いてありました。確認したいことがあったので、早速メールしたら、全く返事がありません。メール送ったんですけど・・・と言うと、

代表
メールはほとんど見ないんですよ、主にFAXです。

4年前の話ですが、ファ、ファ、ファックス?って当時びっくりしました。その後、他の介護職の方とも連絡を取り合う機会があったのですが、この事業所だけが特別じゃないことが分かってさらに驚きました。

本題に戻って、議事録にはこう書いてありました。

これまで健康を気にしなかった人でも、自分の状態が全国平均より良いのか悪いのか、肥満や肝機能など具体的に示されれば刺激を受けることになると思います。経営者と健保組合が連携して職場でこのような取組を実践すれば、従業員が健康になり会社が支払う医療費の低下につながることが期待されるわけであります。そこで、健保組合ごとの、従業員の健康状態、医療費、健康への投資などを全国平均と比較して示し、経営者に通知し関与を促す仕組みを作ります。こうした取組が全ての保険者に広がり、国民全体の健康づくりへの意識が高まっていくことを期待しています。
引用元:http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201704/14mirai_toshi.html(首相官邸)

その通りだなって、素直に思いました。さらに読み進めると、面白いポイントが2つありました。

保険のインセンティブとは?

簡単に言うと、より健康でいようと努力している人がいる健康保険組合、共済組合(例えば特定検診をきちんと受診しているか)に対しては支援金や補助金が増えて、きちんと受診してない人が多い組合などは補助金が減ったり、負担金が増えるという仕組みがインセンティブです。

今朝の朝日新聞の記事を読むと、もっとイメージが湧くと思うので引用します。

メタボ健診(特定健診)を受ける社員や職員が少ない健康保険組合や共済組合への「罰金」について、厚生労働省は金額を増やすだけでなく、対象も大幅に広げる方針を固めた。今は受診率0・1%以下が対象だが、2018年度以降は57・5%未満とする
引用元:http://www.asahi.com/articles/ASK4N53Y2K4NUTFK00S.html

日本人は健康への意識が高く、健康食品は買うのに、なぜか最も予防に大切な健診受診率が低く、2014年のデータで特定健診の受診率は48.6%(厚労省データ)です。きちんと検診を受ければ病気の人が減り、黙って増える社会保障費も抑制されるはず。今後、がん検診や歯科検診もインセンティブの対象にすると書いてあります。

素直にいいと思ったのですが、確か堀江貴文さんがどこかでもうちょっと強めなことを言っていた気がします。健康によくないと言われる生活をあえて送っている人に、税金を多く使うのはどうかという話だったような・・・すごく納得です。

組合ではなく、個人にインセンティブをつけたほうがいいような気もします。大きく差をつけたほうがいいと思いますが、格差だ!平等でない!仕事で行けない人はどうする!という声が広がるから、マイルドにやるしかないんでしょうね。

メタボ検診、肺がん、乳がん検診などをきちんと受けた人の月々の保険料が減ると分かれば、受ける人も増えそうですけどね。でみんな健康で長生きして、社会保障費も減る・・・。

科学的介護とは?

議事録の中に「科学的介護」という言葉が出てきました。高齢者のデータを今はこのように集めているらしく、未来はこうなると書いてありました。

<今>
要介護認定情報、日常生活動作、認知機能

<今後>
身長、体重、血液検査、骨密度、心機能検査、筋力、関節可動域

今って、要介護状態になった人のデータを集めて、それに合った介護サービスを提供するという発想です。これではお世話する人がどんどん増える一方です。介護職員も足りませんし。今後は集めたデータから科学的根拠に基づいて、医療やリハビリ、介護の具体的なサービスを提供して、自立支援していくという攻めのデータベースの構築が「科学的介護」です。

脳卒中に伴う左脚の麻痺により3メートルしか自力で歩行できない人が、「科学的介護」をすることで杖を用いれば自力歩行が20メートル可能になるためのサービスを提供していくということが書いてあります。 

特養というハコを作り続けるよりも、こういうアプローチのほうが好きです。

またまた民に期待

今の科学の力でどうしようもないならば、介護者のメンタルで逃げるというのがわたしの発想の軸になっています。(特に認知症)でも、科学的に行けるならばそっちを使いたいと思っています。

厚労省がこういうことを言っているのはありがたいのですが、本当にすぐ実現するかな?民で面白い動きがあるかもしれないので、ちょっとウォッチしてみようかと思っています。

その議事録はこちらです↓

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか