認知症の母と久しぶりの外食。家以外で食べるときは注意が必要と思った話

この前、久しぶりに母と外食に行きました。といっても、ものわすれ外来の待合室直結の食堂なので、ここだったら失禁しても着替えやすいし、理解もあると思って選びました。

母との外食を避けていた理由

母を連れて外食に行っていない理由は、何回かあったタクシー乗車直前の失禁です。

リハパンを履いていても、トイレに連れて行けなかったり、尿量が多くなったりして漏れ、それが外食のタイミングで2回ほどあって、タクシーの運転手さんに平謝りした経験は、わたしの中でトラウマになっていました。

あと、母の食べ方です。家ならこぼしても汚してもいいし、きたない食べ方でも問題ないのですが、外だと気を使わないといけません。気にしなければいいのかもしれませんが、明らかに普通の食べ方でありません。

自然と外食に行く機会は減り、テイクアウトが増えていったのです。

認知症の症状がしっかり出た食べ方

母は文字だけのメニューを理解できないので、わたしが美味しそうなものを選びました。わたしがからあげ定食、母は9品のおかず弁当。この時、母の最近の食べ方を考えずに、ただただおいしそうなものを選んだのですが、これが失敗でした。

9品のおかず弁当は2つのお膳に分かれていて、加えて炊き込みご飯とシジミのお吸い物という組み合わせでした。母とわたしはL字に座って、母の食べる様子をつぶさに観察しました。

母はまずキレイに盛られた2つのお膳を、1つのお膳に集約し始めました。家でもひとつの器に集約して、器を減らしたがるのですが、外でもしっかりやってくれました。作った人が目の前に居る食堂で、いきなり見た目が台無しになってしまいました。

その後、お吸い物のシジミの貝殻をガリッと噛もうとしたので、慌ててシジミを取りました。そうかシジミの食べ方、もう分からないか。

母はお手拭きでテーブルを拭きながら、お膳の料理を仕切るための小さな器も片づけ始め、全く食事に集中できないので、お手拭きや器を母の手の届かないところに移動。あとムダに白湯を飲む過食スイッチも入ったので、おかずを食べてもらうために白湯もよけました。

母は家でよくこぼすのですが、この時は炊き込みご飯にすべてのおかずをワンバンさせて食べていました。そこまではよかったのですが、ご飯がなくなると今度はすべてのおかずをお椀の中に移そうとするので、途中で止めました。

お椀の中のおかずが減ったところで、今度はシジミの貝殻を取ったお吸い物を渡すと、お膳に残っていたリーフレタスをお吸い物につけて、食べ始めました。

石鹸や洗剤を食べているわけではないのでいいのですが、久しぶりに品数の多い料理を母に提供したら、キレイに食べるのは難しいですね。こういう経験を家でいっぱいしてきたので、わたしはワンプレート料理を提供するようにしていて、しょうゆはかけた状態で出すし、皿数は極力減らしてます。

外食も回転ずし一択だったので、いわゆる定食系のお店は何年ぶり? って感じでした。皿数、品数の多い料理を外でフリーで食べてもらうのは、もう厳しいかもしれません。家で食べるような工夫が、外でも必要になりそうです。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか