【認知症の理解力】祖母、娘の顔を忘れる

このブログ初登場、自己紹介のページでレアキャラと紹介した叔母の話です。

叔母は首都圏に住んでまして、ほとんど連絡していなかったのですが、祖母(叔母にとっては母親)の子宮頸がんの事はさすがに連絡しないと!という事で、7年ぶりに連絡しました。叔母への連絡は、久々にもかかわらずトピック満載で、

  • 祖母は子宮頸がんの末期で、余命も最も短くて半年と言われた
  • 祖母は認知症が進んでいる
  • 母(叔母にとっては姉)も、実は認知症になった

いきなりこの3点セットで、さぞかしびっくりしただろうと思います。叔母は旦那さんが24時間介護をしないといけない状況なので、こんな事になっても遠距離だし、母にも姉にも会えないかも・・・ というのが、最初の反応でした。

さすがに親子だし、こんな状況だから何とかして会えば?と最初は思ったのですが、24時間監視していなきゃいけないという旦那さんも大変だし、自分も両親と奥さんのどっちをとる?っていったら、最終的には奥さん優先するので、それも分かるし・・・

翌日になって、『やっぱり何とかして祖母にあう!』 という連絡が入り、そりゃ当然だということで、実家まで深夜バスで来ました。60代半ばの叔母にとっては、相当大変な旅だったと思います。

一応、叔母には前もってこういう事を伝えておきました。

『祖母は認知症が進行しているから、娘といっても覚えてないかもよ。なにせ8年も会ってないんだから・・・』
『母は同じ事を何回も言うけど、決して怒らないでね。怒ることが認知症を進行させるから』

まずは母(姉)の洗礼

わたしはその日の夕方に東京から駆けつけ、叔母は早朝についたので約半日の間、姉との久々の会話をしたわけですが、わたしが夕方到着した時にはすでに怒っていて・・・前もって伝えておいた忠告もあってか、おそらくだいぶ怒りを抑えていたんでしょうけど、それでも怒ってます。

半日もいればおそらく同じネタを10回以上は聞かされます、わたしも未だに慣れずにイラっと来てしまうんですが、何の免疫もなければそりゃ怒りたくもなります。わずか半日で深夜バスとのWパンチで、すでにノックアウト状態でした。

そして次の日、祖母の病院に叔母、母とわたし、妹でお見舞いに行きました。早速、祖母を試すべく、『この人だーれだ?』 テストを叔母に向かってしたのですが、

祖母:    『この方、どちら様?』
叔母(娘): 『あなたの娘でしょ、娘。わたしよ、わたし。』
祖母:    『あぁ~そうだっけ?どちらからいらしたんですか(敬語)』
叔母(娘): 『xxxから、来たんだよ』
祖母:    『あらら、遠いところからわざわざご苦労様です~(家族とは思えない反応)』

とても切ない瞬間でした。娘の自分を母親に分かってもらえない悲しさたるや・・・ でも8年も母と会っていないというのも、原因と言えば原因。ほとんど連絡もしてないから、こうなってもしょうがないのですが、切ないって言葉が、こういう時のためにある言葉なんだ・・・そう思いました。

この展開は予想できたので、事前にわたしからの忠告という形で、予防線を張っておいたのですが、叔母は完全に予防線突破した感じでした。

叔母 『会えただけでもホントよかったよ』

何度もこの言葉を繰り返す叔母を見て、『自分にそう言い聞かせて、自分自身を納得させるしかないんだな・・・』 認知症って本当に切ない病気だな この後も切ない事はいっぱい起こるのですが、この時が最強に切なかったです。

ちなみに祖母は私のことも、あれだけ会っているのに記憶が微妙です。今日は自分が分かるかな・・・毎回ドキドキしながら、病院に行ってます。

そして今日、80歳の方と別件で認知症について話した時に、認知症に対してこういう考え方もあるんだと勉強させられました。それはきっと人生経験が長い80歳の人が言うから、深く胸に突き刺さったんだろうな~

『認知症になった方がいいという考え方もあるんだよ、この歳まで生きると、なんでもかんでも覚えている方が不幸という事もあるんだから』


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか