「退院できればいいワケではない!」ある人の無力さから学ぶこと

作業療法士

作業療法士さんや理学療法士さんって、あんまり関係ないかな?って思うご家族は多いと思うのですが、今日だけはちょっと興味を持っていただきたく、ネットで話題のある話を取り上げます。

「こんな現状なら理学療法士はいずれ必要なくなる」

身体パフォーマンス研究所 SHINNET 代表の岩渕 翔一さんのこの記事が、昨年末に注目されました。記事を読んで思ったのが、亡くなった祖母もこの記事と同じだったということです。

入院して、回復したら終わりじゃない!リハビリってすごく大切で、作業療法士さんや理学療法士さんの存在を特に家族はないがしろにしちゃダメ!っていうことをお話したいと思います。

97歳の方が肺炎になって、どうなってしまったか?

97歳の方で、自宅で歩行器を使って歩いていた方が肺炎で入院。驚異的回復で3週間で安定したそうです。ところが呼吸器専門病院のためリハビリができず、さらに3週間後に療養型病院に転院して初めてリハビリが始まったというお話です。

療養型病院に入院して1か月後、お見舞いにいった岩渕さんはかなり失望されたそうです。岩渕さんの見立て以上に、この方が何もできない状態だったからです。

どんなリハビリだったかというと、「足揉んでもらって曲げ伸ばしして10分くらいで終わり」。それ以外の時間はほとんどベッド上で寝ている状態だそうです。この方は被害者だ!と岩渕さんは記事で嘆かれています。

作業療法士さんは看護師さんぐらい大切に思っている

この話を読んで、亡くなった祖母のことを思い出さずにはいられませんでした。子宮頸がんの放射線治療が終わり、療養型病床へ転院。元気だった祖母はベットから転落して、大腿骨骨折。その後、一気に寝たきりになり、最終的には亡くなりました。

途中で違和感を感じたわたしも、退院させようと3回ほど試みましたが、祖母がなぜか発熱してしまうため結局は断念してしまいました。今でもちゃんとリハビリしていれば、あと2年くらいは生きられたかな・・・と後悔しています。

この経験がもとになって、手足に筋萎縮のある母のリハビリを再開し、現在に至ります。いかに人間は動いていないとダメか、リハビリってめちゃめちゃ重要という体験を、亡くなった祖母で体感したのです。

岩渕さんの嘆きはうれしい。だけど家族も知識を持っておかないと!

特に認知症の方が入院したときは、リハビリの意味を理解できないこともあるので、ご家族はリハビリの見学や立ち会いをしたほうがいいと思います。きちんとリハビリをしてくれる病院なのかどうか、見極めないとダメです。

わたしたち家族は施設や病院に預けると安堵しがちですが、訪問して自分の目で見ないとやはりだめじゃないかと思います。3つの病院にお世話になった祖母ですが、対応は病院によって全く違いました。

もし母が入院することになったら、ただでさえ筋力がないので寝たきり一直線になると思います。そうなったら、かなり気合入れて、作業療法士さんとコミニケーションとります。ベットから動かなくなったら、向こうから勝手に死が近づいてきます。

そう何度も入院の機会は訪れないと思いますが、ご家族の皆さんは作業療法士さんや理学療法士さんがとても大切な存在で、普通の生活に戻してくれるノウハウをたくさんお持ちだということを覚えておいてください。

病状が回復しただけで安心せず、きちんと生活できるレベルまで戻ってから安心して!

岩渕さんの記事を読んでいて、どうしてもこの事が書きたくなりました。わたしはこういった後悔をコトバで発信することで、同じ轍を踏む人が減ればいいなぁと思っています。

お医者さまに「安心してください」と言われても、「えっ、履いてないんじゃないの?」って疑うぐらいがちょうどいいですよ、たぶん(笑)

今日もしれっと、しれっと。


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4件のコメント

リハビリは、機能訓練と訳すと、本当の目的を見失いますね。機能障害により失われた生活を再構築する事なんですね。これは、OT・PT・STだけで出来る事では無いんです。自主的な取り組みも重要になってきます。在宅では、自分で出来る事は自分でしてもらう事も重要な取り組みになります。寝たきりの方は、一定時間椅子に座る事も重要なリハビリです。リハビリを生活の中で考えていく事が必要です。
寝たきりで、自分で動けない方の場合、今の日本の医療機関や施設では、マンパワーが足りないのが現状です。これをどうして行くかが大きな問題ですね。

小関さま(小関先生)

いつもありがとうございます!

>リハビリは、機能訓練と訳すと、本当の目的を見失いますね。機能障害により失われた生活を再構築する事なんですね。これは、OT・PT・STだけで出来る事では無いんです。自主的な取り>組みも重要になってきます。在宅では、自分で出来る事は自分でしてもらう事も重要な取り組みになります。

なるほど、このコトバすごくしっくりきます。失われた生活の再構築、今後はこう言うようにします。うちも週1回の訪問リハでは足りないことが分かっているので、近くの蕎麦屋まで歩くなど自宅でできることをやっていますが、まだまだ足りないと思っています。

プロがいてもマンパワーの問題や、岩渕さんのように手出しができなかったり・・・八方塞がりなら家族はもっと重視して、自ら関わっていく姿勢が必要じゃないかと思ってこんな記事を書いてみました。テクニックがいることもありますが、できることも意外と多いなと思っています。

リハビリの目的は、失われた機能の回復では有りません。生活の回復です。失われた機能で、それなりにと生活できれば十分なのです。こう考えると目標が大きく変わるケースも多いのでは無いでしょうか。
極端な話、片腕を失っても残った腕で生活できれば良いのです。こう考えると、希望が持てるのでは無いでしょうか。希望を持つ事が、やる気につながります。やる気が運動機能を高める様です。ピックでやる気満々の方は、運動機能が著しく高まっている事が有ります。このピックパワーも大事にしないといけません。コントロールされたピックパワーは、生活の質を高めます。多少困った行動があっても、ピックパワーを大事にしましょう。

小関さま

これまた分かりやすい例え、ありがとうございます。物の見方で大きく変わる、いつも思っていることなのにリハビリではその考えにたどりつきませんでした。

確かにピックパワーはあります。冬はそれを上回る家の寒さとCMT病による筋萎縮で、ピックパワーがダウンします。昨年は廃用症候群気味でした。春からは復活して欲しいと思っています。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか