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母が、この8月に73歳になった。そんな母の、最近の口癖がこれ。

今年は、雪が少なかったわね~

4月くらいまでは、特に違和感がない。しかし暑くなってくる5月や、真夏の8月にこれを言われると少し違和感がある。

「まだいうか?」

決して口には出さないけど、正直こんな気持ちがこみあげてくる。楽しんごの「ラブ注入」を、全力で言う人にもし会ったら、やっぱり同じことを言うと思う。

電波時計や新聞がないと、季節感がつかめないのでしょうがないけど、それにしてもいつまで雪の話するのかなぁ・・と思っていると、冬がやってきて、最終的にはつじつまがあってしまうから面白い。

今年はなぜか雪が口癖だけど、来年も同じことを繰り返している確率は低いので、この違和感を楽しませてもらおうと思っている。

誕生日が近くなると、自分の年齢が気になるようで、こんなやりとりが始まる。(アナログカレンダーと電波時計の組み合わせで、誕生日が近づいていることは認識できる)

ひろ、わたしっていくつなの?

くどひろ
当ててみー、勘でいいから

そうねー、72?
くどひろ
正解!今度73になるけどね
あら~、あの世行きね

この1セットを1日何十回と繰り返すわけだが、続けると不思議と正答率が上がってくる。最初の頃は82歳とか、76歳とか間違えていたものの、誕生日直前になるとほぼ正解していた。答えがうっすらと記憶に残っているのかも・・そう思える正答率で、毎回クイズにしたのも間違えではなかったのかな?とも思う。

同時にわたしが考えることが、これ。

くどひろ
今年の誕生日は、何がいいかな~

毎年一応、プレゼントや食事を考える。去年は「あれ」だったから、今年は別なサプライズ的なものを考えてみたりもする。しかし、自宅でまったりするのが好きな母なので、結局はいつもの「あれ」になってしまう。

「あれ」とは、寿司とケーキ。ワンパターンだが、一応寿司屋を変え、ケーキ屋を変えている。他に何かないのか?ってくらい、クリスマスや誕生日はこればかり。

認知症なので、去年もその前のクリスマスも同じだということを忘れている。だからワンパターンでも成り立つし、喜んでくれるのだが、全盛期だったら皮肉の一つも言われたかもしれない。

今年は珍しいスイカのケーキ(記事下写真の一番左)を買ってきたら、えらく喜んでいた。母はケーキの種類にこだわりがないので、基本は自分が食べたい2種類を買ってきて、母に選んでもらっている。どっちに転んでも、自分はOKという状態を作る。

もうすぐこの生活を始めて5年目に突入するわけだが、ありがたいことに調子がいい。この状態をなんとか80歳までキープしてもらいたいと思いながら、「いつもの」誕生日が終わった。

わたしが一番気になったこと、それはスイカのケーキがそんなにうまいのか?ということ。えらく喜んでいたので、次に帰ったときはスイカのケーキを2個買って、帰ろうと思う。

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今日もしれっと、しれっと。


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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか