認知症の母が「サランラップの切れ目を分からなくしてしまう」面白い理由

今週はもの忘れ外来へ通院のため、盛岡に帰省しております。

認知症の母は「一応」料理をするのですが、「1人前」の料理を作ることができないため、冷蔵庫を開けるといつ作ったのか分からない残り物が、ラップも掛けずに冷蔵庫を占拠しています。

母がデイサービスから帰ってくる前にこの残り物を廃棄し、ヘルパーさんの書いた伝票で購入した日をチェックしながら、腐りかけの野菜を廃棄します。

その野菜を母が見つけると、ゴミ袋から冷蔵庫に戻すことがあります。なので、燃えるゴミの日が来るまで、自分の部屋まで持っていき、部屋の外に隠すということをしています・・・なにやってんだ、おれ(笑)

サランラップを突然使いだした母

その日の夜のこと、母がこう言い出しました。

ねぇ、このラップ使いづらいんだけど・・・
くどひろ
え?ラップ使い始めたの?それはいいね~

思い出したかのように、ラップを急に使い始めた母。

認知症になる前の母はマメで、タッパーやジップロックを華麗に使いこなす人でした。それが今は男らしくなってしまって、ラップなしで冷蔵庫に残り物を入れます、若干かっこいい。

暑くなってきたし、食中毒も怖い季節だから、ラップする習慣を思い出してくれてラッキーと最初は思いました。ところが母から渡されたラップが、記事タイトルの下の写真のような大惨事になっていました・・・分かりますか?

みなさんも経験があると思うのですが、サランラップの切れ目が見つからない・・・あれです、あれ。しかもグチャグチャで、1枚ラップをはがしても、どうにもならなくて、2枚、3枚・・・あぁダメ!というレベルでした。

トイレットペーパーでもたまにある現象で、紙の半分だけ手前にあって、残り半分は周回遅れになってズレる・・あれがくっつきやすいラップで起きていました。(写真右側をよーく見てください、グルグル巻きになってます)

結局10分もかかって、ラップを復旧させました。ベッタベタだし、切れ目が見えないしで、あ゛ーーーってなります。

ラップの切れ目が分からなくなる面白い理由

なんで、こんなラップになってしまったのか?

母に復旧したラップを、目の前で切ってもらいました。まずラップを箱からスルスルと引き出して、箱についたカッターでビリっとやりました。文字にすると間違いはないのですが、大きな間違いに気づきました。

今って、下の写真のように親指で箱を抑えながら、ラップを切るのが普通ですよね?

認知症の母は、おそらく昭和40年くらいを生きている感覚なので、当時のイメージのままラップを切ってしまいます。昔って、こんな便利機能なかったですよね?小学生の頃、何度も切れ目探しをしていた記憶があります。

親指で箱を抑えてカットするから、ラップが箱にくっついて切れ目を見失うことなく次も使える、という便利設計なのに、母は昔の仕様の感覚で普通にラップを引き出しては、切ってしまうのです。

そっかぁ・・認知症の記憶が、まさかサランラップの切れ目にまで影響するとは・・・と妙に感心しました。

母は独居なので、帰京したらまたグッチャグチャになるんだろうな・・・認知症ということもあって、こういう新しい?ことは、なかなか覚えられないんですよ・・・うーん・・・

ちなみにこういうネタが、わたしは大好きです。だって、絶対に認知症の本に載ってないじゃないですか?お医者様が決して書かないような話が、個人的にツボです。誰の役にも立たないこういう記事を書いても、読んでくださる方がたくさんいるから頑張れます、ハイ!

ラップで相手をdisりまくる、ラップバトルってありますよね?今度から、このサランラップを両者に持たせて、早く切れ目を見つけたほうが勝ち!というルールに変更しませんか、ラッパーのみなさま。

今日もしれっと、しれっと、Yeah~


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

4件のコメント

こんばんは。
お久しぶりです。

うちの母は、もともと漢らしくて、ラップを使いません。
残り物は、食器に乗せたそのまま、冷蔵庫・戸棚・テーブルの上にありました。

ラップの切れ目が分らなくなったときは、ぬれていない食器洗いスポンジで、こすってみるといいかも。
そんなに力は要りません。
私は、母宅のでなく、ヘルパーで入るお宅のラップを、これで何度か救いました。

うちも、50年くらい前の世界を生きてる感じで、最近のものは使い方が分らないようです。

タクシーのドアを自分で開けようと、手を出すので、危ないです。
タクシー乗降のときは、母を見張っていて、出そうとする手を捕まえます。

電池の腕時計なのに、竜頭を回します。
昔の、ぜんまいを回しているつもりなのです。
これは、別に危なくないので、好きにさせています。

ダイソンの羽のないファン(冬場、ヒーターでしか使わない)を消すとき、
リモコンを与えていず、スイッチが今風なので、電源プラグを抜きます。
…と思っていたら、3年目にして、ヘルパーさんの消すのを見ていて覚えたらしく、
この冬は、ときどき、ちゃんとスイッチで切っていました。

今からでも、覚えることが出来るのは、ちょっと感動ものです。

すいかずら姫さま

お久しぶりです。

なるほど、濡れていないスポンジという方法もあるのですね、勉強になります。車の乗り降りはうちは母がよく車上部に頭をぶつけるので、必ず手を添えてサポートするのが我が家の日課です。たしかに妙なところで覚えていることがありますよね。まだできることはあると思いつつ、それがいつできるようになるか分からないので判断に困りますね。

ウチも、車に乗るときは、私が先に乗り、母の頭を私の手のひらで守りながら、乗ってもらいます。
(降りるときは、ぶつけないです)
そして、その手で彼女の左腕を掴んで、ドアが自動で閉るのを待ちます。
◇◇◇
覚えてほしいことは、覚えてくれないですね。
まぁ、「これこれのことを覚えてほしい」というのは、介護者の身勝手なんですが。
本人も、覚えようとして、覚えているのではなく、ナゼだか覚えてしまうのでしょう。
意外と、ヘンなところを「見ていて」覚えるので、「しまった」と思うこともあります。

すいかずら姫さま

「体が覚えている」という状態を実現したくて、最近は入れ歯磨きに50回立ち会って指導したのですが、やっぱり難しいです。ある日覚えている可能性もあるのですが・・・

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか