長い間、認知症介護をしていると、何か不思議な言動に出くわすたびに認知症のせいだと思いがちです。
例えば高齢者が赤信号を平気で渡ったりしたら、信号の赤の意味が分からなくなってしまったと判断してします。しかし、まぶたが下がって、腰が曲がっているために、歩行者用信号の上にある赤が見えないとしたら・・・・
こういった「身体的な老い」を介護者が理解してあげられたら、対処方法にもバリエーションが出ると思いませんか?
うちの母も、本当は認知症が原因ではないケースもあるはずなのですが、「認知症だから」という悪習慣がすっかりわたしの体に染みついてしまっています。こういった悪習慣はきっとわたしに限ったことではなく、多くの認知症介護をしている人にも身についてしまっていると思います。
若い介護者に足りない「老化の知識」
わたしは今45歳ですが、20代、30代の頃には分からなかった「老い」が少しずつ分かってきました。
なるほど簡単に太るのね、だんだん近くのものが見えなくなってくるのね、自然と早起きになってくるのね・・・。このブログは60代の方も読んでいらっしゃるので、諸先輩方はきっと「40代なんてまだまだ、これからもっと加速するよ」とアドバイスしてくださることでしょう。
60代、70代、80代になったとき、どんな老化が待っているのかを「知識として」蓄えておくだけで、高齢者や認知症の人の見方がちょっとは違ってくるのでは?とわたしは考えていて、認知症以外の「老化」の本も読んでいます。
老化を勉強したもう1つの理由は、最新刊「がんばりすぎずにしれっと認知症介護(新日本出版社)」の読者ターゲットが60代以上だったこともあります。認知症介護もしているけど、ご自身の「老化」とも戦っている老々介護者の存在を知り、そういう書き出しにしました。
今まで読んだ本の中でオススメしたい老化に関する2冊の本があります。
老人一年生
著者・副島隆彦さんの書いた「老人一年生」という本のまえがきを引用します。
私がこの原稿を書こうと思った理由は、「老人は痛いのだ」「老人というのは、あちこち痛いということなのだ」ということを、なんと若い人たちは分かってくれない、という大きな秘密を明らかにするためだ。老人(になった人間)にとってはあたりまえのことが、若い人たちには分からない。若い人たちは本当に、老人の体の痛みのことを分からない。
引用元:老人一年生(幻冬舎新書)
この本は60代の著者が痛くて痛くて、その痛みと付き合うことになるんだぞ!40代、50代知っとけ!という本です。
わたしはこの本を読んで、自分の体が健康でいられる時間は意外と短いかもと感じました。だから、やりたいことは体が動くうちに!というスイッチが入りました。
そんなに痛いところがあるのなら、ひょっとしたら認知症の人もうまく言葉に表現できないから、突然大声を出したりすることもあるんだなと理解できるようになります。
介護家族は痛みの原因の特定ができなかったとしても、「老いたら痛みとの戦いが、体のどこかしらであるのだな」という知識があるだけでも、だいぶ心の持ちようは変わるのではないでしょうか?
老人の取扱説明書
この本を読むと、なるほど「認知症だけが原因ではない、老化からくるものなのね」ということがよく分かります。
例えば、姑が嫁の言うことだけ反応しないのは、認知症が原因で嫁の存在を忘れてしまったという判断を介護者はしてしまうかもしれません。しかし、若くて高い女性の声が聞き取りにくいという耳の老化の知識があれば、低くゆっくりした声で正面から話しかければ、反応するかもしれません。
突然「うるさい!」と怒鳴る高齢者も、その高くて聞きづらい音域を不快と思っているからかもしれないと本にはありました。認知症だからキレてるんだ・・・って、認知症介護をしている方なら思ってしまいますよね。
なんで料理にしょうゆをドボドボとかけてしまうのか・・・これも老化が原因のようです(詳しくは本で)
「ひょっとしたら老化も原因のひとつかもしれない」
そう気づかせてくれる、まさに老人の取扱説明書なのです。この本を書いた先生は眼科医なのですが、そこがまた良かったかもしれません。認知症専門医の書く本なら、なんでも認知症の症状に当てはめてしまう可能性があるので。
体の老いを知るということも、介護者として勉強すべき項目のひとつだと思います。何でも認知症のせいだと決めつけがちな介護者の皆さま、自分の考えをリセットするためにもこの2冊、読んでみてください!
今日もしれっと、しれっと。
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