東京・大手町の経団連会館で、シンポジウム「仕事と介護の両立支援の一層の充実に向けて ~企業における「トモケア」のススメ~」に参加してきました。
介護離職防止対策促進機構(KABS)の代表理事の和氣さんの講演を聴き、その後は旭化成、ANA、花王、大成建設、千葉銀行の介護に対する取組みのお話でした。
企業人事の参加が多いので、うちの企業もこの制度を参考にしよう!という気持ちで聴いてる方が多いはずですが、わたしはフリーランスなので視点が違います。最初は大企業がどんな取り組みをしているのかなぁ~と思って聴いていたのですが、途中から全く違う視点で話を聴いておりました。
介護を知らない上司の大変さと企業や行政の線引き
自分がマネージャーだったとき、介護の相談をチームメンバーから受けたことはありませんでした。わたしが当時30代で、それよりも若いチームメンバーから介護の悩みを聴く確率は低いです。もし、介護を知らずに介護するチームメンバーから相談を受けていたら、きっと四苦八苦していたと思います。
介護を知らない上司や人事が、介護している人の話を聴くという「ストレス」があるのだなと今回強く思いました。介護経験がないと「人として」どういう引き出しがあるかが大切で、そういうマネジメントができている人はおそらく、介護経験がなくともうまく相談に乗れるはずです。
そういう状況になった時のためのマネジメント研修を実施している会社もあるようですが、それこそ経団連級の体力のある会社くらいしか実施していないかもしれません。
もうひとつは、「どこまで親身になって、介護者の話を聴いてもらえるか」という視点です。介護している人は「聴いてほしい」欲求MAXの人が多いので、言い方は悪いのですが周りの空気も読めなくなってしまって、介護の集いなどで他の介護者がいることも忘れ、1人で喋りまくる方もたまにいます。
今回の企業人事の話を聴いてそうか!と思ったのが、会社人事であれ、行政であれ、家庭の事情や地域の事情まで踏み込んではこないということです。この温度差を介護者は始めから持っておくべきで、勝手に全部受け止めてくれると期待し過ぎないことです。
企業人事も行政も、介護問題を何でも解決してくれるわけではありません。「それはご家庭の事情でしょう・・・」「そういった地域の事情までは分かりません・・・」こう答えられると、介護者は突き放されたとショックを受けがちです。しかし、友人や介護者同士の介護相談ではなく、聞く側があくまで仕事の範疇と考えたとき、ある程度線引きされるのはしょうがないことだなと。時間もリソースも限定されますし。
地域包括支援センターであったり、行政のたらい回しでショックを受けることもあると思うのですが、こういう視点を持っておくと、必要以上に落ち込むことがないと思いました。もちろん、そういった印象を与えることのない、人間力のある企業人事や行政の方もいます。しかし、万人がそうではないですからね・・・時に介護者を傷つける言動があるのは、このギャップもあるんなんだろうなと。
経団連級の会社は介護への取組みが進んでいても、それ以外の企業はまだまだ介護離職への取組みは不十分です。理由は書けないのですが、わたしはそれを強く体感しています。リーディングカンパニーに社会の流れを作ってもらって、それが中小にも波及することを期待しています。
トモケアの概念
今回、経団連から提唱された「トモケア」。企業が介護に直面した社員と、介護のあり方を「共に」考え、仕事との両立に「共に」取り組むことを言います。各企業がどんな取り組みをしているかは、かなり濃い内容ですがこちらにあります。
中小企業でも、すぐにできることはいっぱいあります。例えばANAさんは、上層部が介護への取り組みや介護している社員を大切に思う気持ちをメッセージとして発信しています。そういった小さな積み重ねで、社内の介護への雰囲気が醸成されていくのだと思います。
今日もしれっと、しれっと。
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