朝丘雪路さんの死因が「アルツハイマー型認知症」だったことについて

認知症 アルツハイマー 朝丘雪路

Yahoo!トップに、朝丘雪路さんが亡くなられたニュースがこのように載っていました。

バラエティー番組の司会や歌手としても活躍した女優で日本舞踊家の朝丘雪路(あさおか・ゆきじ、本名・加藤雪会=かとう・ゆきえ)さんがアルツハイマー型認知症のため4月27日に死去していたことが19日、分かった。
引用元:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180519-00000176-spnannex-ent

最初、この記事を読んだとき「アルツハイマー型認知症」が死因なの?と、違和感を覚えました。しかし、この記事を読み進めると、こう書いてありました。

ものを飲み込む機能や呼吸、心拍をつかさどる機能も失われることも。直接の死因が別の疾患でも、それを誘引したのがアルツハイマーの場合、アルツハイマーを死因とすることがある。
引用元:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180519-00000176-spnannex-ent

なるほど。この事実をSNSで発信してみると、昨年秋の日本経済新聞の記事をご紹介して頂きました。

アルツハイマー型認知症が原因で死亡したのに死因として算定されにくい実態が明らかになってきた。2025年に患者数は700万人超と試算され、死を招く病であるはずだが、肺炎などアルツハイマーが引き起こした別の疾患による死亡と医師が認定するケースが多かった。統計データや文献の不足につながり、治療薬がほとんどないことと並んで予防や治療を阻む壁となっている。
引用元:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO22236470T11C17A0EA5000/

アルツハイマー型認知症を死因にしてこなかったことで、最後に書いてある「予防や治療を阻む壁になっている」というところが、とても気になりました。

話題のツイートはどう解釈するべきか?

Twitterで話題になったツイートがこちら。

このステージ1から7ってのが何かというのが、安心介護さんの記事で分かります。また、2014年にアメリカで「心疾患とがんについで3番目に多い死因に浮上している」という話も書いてあります。

この「呼吸することを忘れて死ぬ」という表現ですが、例えば睡眠時の呼吸は意識していない呼吸(不随意運動)なわけです。なので、呼吸を忘れるという表現が正しいのか?と思いました。(←医療関係者の方、フォローお願い致します)

亡くなった祖母の死因を振り返る

アルツハイマー型認知症の祖母(90歳没)は、余命半年の子宮頸がんでもありました。

死亡診断書の死因は、子宮頸がんでした。祖母は朝方、自分が病院のベッドに居る認識がなく、ベッドから飛び降りて大腿骨を骨折しました。その後リハビリをしようにも、自分がなぜリハビリの必要があったのかを理解できず、寝たきりになった祖母はどんどん弱っていきました。

死因の特定はどこをポイントにすべきか分からないのですが、わたしは今でも祖母が大腿骨骨折をしなければ、あと1年くらいは生きられたのでは?と思っているので、自分の中での死因は子宮頸がんよりも、大腿骨骨折からの廃用症候群。骨折を引き起こしたのは認知症なので、遠因としてはアルツハイマー型認知症も死因になるのかなと思います。

娘の顔は忘れても、呼吸は最期までしっかりしていました。どれくらいの割合の人が、ステージ7までいくのでしょう?

気になる「認知症で死ぬ」というミスリード

わたしのブログには、認知症当事者の方やご家族の方の悲痛な声が寄せられることがあります。病院で医師などに「アルツハイマー型認知症なので、余命はあと〇年です」と言われたという声です。

そんなことはないという医師も大勢いますが、こういう診断をする医師も一定数います。今回のニュースで思ったのは、事実としてアルツハイマー病で亡くなる人もいることを受け入れたとしても、「認知症=死の病」という不安の方ばかりがどんどん増幅されていくのが、なんか怖いな・・・これがわたしが思った違和感です。

せっかく、認知症当事者の皆さまがこういう不安を払拭する活動をしていても、どうしてもこういったニュースの見出しが拡散してしまうのはやむを得ません。

これから介護に突入するときや、認知症当事者になった瞬間にこのニュースを思い出し、「認知症になると死ぬ」「余命はあと何年?」と絶望し、大きなストレスを抱えてしまうのがかわいそうだし、それで認知症の進行を早めてしまうかもしれません。

アルツハイマー型認知症を死因に特定する件数が増えれば、本当に認知症のお薬の開発が進むのか、一方で死因にする医師が増えることで、より認知症当事者や介護家族は不安になる気もします。

エビデンスを収集して現実を知る必要がある気もするし、必要以上に不安をあおるきっかけにもなり得る「諸刃の剣」なのか・・・

ご冥福をお祈りいたします。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか