【認知症】 「人生歴」 を紐解くと、症状の原因解明ができる!

フレディの遺言

妄想も徘徊も人それぞれ

認知症の本を読んでいると、「人生歴」 というコトバを目にします。

徘徊や妄想、幻覚といった症状を目の当たりにした時に、

「なんでこんな事言うんだろう」 「なんでこんな行動になってしまうんだろう」

って、毎回思いますよね?そのなんで?を調べるために、認知症の本やテレビ番組で情報を得るのですが、

「一般的にはそうかもしれないけど・・・」 「なんかうちと違うような・・・」

って事、よくありませんか?

妄想も100人いれば100通りだし、徘徊も100通りです。微妙に違うんですよね、本に書いてある一般論と。そんな時は認知症の人の 「人生歴」 を理解することで、その妄想や行動が理解できる事があります。我が家を例に説明しますね。

認知症の母の 「人生歴」 その1

最近になって分かったのが、うちの母は若い頃、本当に苦労していた ということです。

中学校の時に、すでにシャルコー・マリー・トゥース病になっていた母。手足が不自由な病気なのですが、当時はそんな病気も知られていないため、体育の時間は特に苦労したとのこと。どんな苦労だったかというと、

・マラソン大会であまりに遅いため、ゴールしたら誰もいなかった
・まっすぐ行進ができず、ひとりだけ内側に斜行していた
・しゃがむことができず、ひとりだけ立っていた

何か体が変?と思いながらも、病気かどうかも分からない。自分の親や周りからも、「なに、もたもたしてんの!」 と一方的に注意される。原因が分からない上に、理解者がいないという状況を何十年と過ごしてきたわけです。

これだけではありませんが、ネガティブな性格の原因のひとつと言えます。

つい先日のこと、

「xxさん(うちの母)、若いわねー」

と言われました。100人中99人は喜ぶこの言葉を、うちの母はなぜか喜びませんでした。どう解釈したかというと、

「若いっていうのはね、幼いっていう意味なんだよ。精神的に幼いってバカにされた」

最初にこれを聞いた時に、

「え゛ーーー、ネガティブにも程がある!」
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って、思いましたよ。でも認知症の被害妄想って、こうなっちゃうんですね。なんでこんな事になってしまったんだろう・・・そう考えた時に、母の「人生歴」をひも解くと納得できます。

「あまり褒められた事もないから、たまに褒められても信じられないんだ」 と。

認知症の母の 「人生歴」 その2

次に近所に対しての妄想です。

「ご近所さんがわたしに背を向けて、こそこそ話をし出した」
「話の途中で、この人おかしいと言われた」

こちらも完全なる被害妄想なんですが、なんでこんな事を言うんだろうと。

<若い頃の母について>
・今ほど離婚が当たり前じゃない時に、両親が離婚して周りの目が気になった
・離婚もあって今の自宅にたどり着くまでに、9回も引っ越した
・4畳1間で隣の声が丸聞こえな部屋で、テレビの音量を低くしながら見た

ご近所つきあいがどんどん変わる、しかも両親がいない、いい住まいにも住めないといった幼少期の思い出が、必要以上にご近所を気にする元になっていたのです。ご近所妄想がとても多いんですが、そういう時は母の 「人生歴」 を理解すると妙に納得できます。

「この人は周囲の目を気にして生きてきたから、こういう被害妄想もやむを得ないな」 って。

他にもいろんなエピソードがあって、母の 「人生歴」 だけでブログ記事を書けます。奥さんに話したら、

「それ、ドラマ化できるよ」

って言われるくらい、苦労した人です。15歳の時に、自分の妹の授業参観日や三者面談に、母の代理で制服で参加した人です。バイトして、妹の学費稼いでました・・・・両親の育児放棄もあったんですよね、だから姉が妹の面倒を見る、しかも昭和30年代に。

さらに手足が不自由でしたから、ネガティブにもなるし、やたらと周囲を気にしますよね・・・本当にすげー母だと思います。最近になって、こんな事を言うようになりました。

「本当に苦労した人生だったけど、あんたのようないい息子や娘に恵まれてよかった」
「人生悪いことばかりではないんだね」

泣けるんですけど・・・・・・・・・・・・・・・実際、いい息子ですからね(笑) あ、ウソです。そんなことないです。

こんなに人生苦労しながら、最後の最後で認知症になってしまって、「どこまで神様は不公平なんだ」 と思います。

認知症をポジティブに考えれば、

「認知症で、苦労の記憶を消してしまえばいいのに・・・」

って思うんですが、直近のことばかり忘れて、昔の苦労したことだけは鮮明に思い出すんですよね・・・あぁ~なんという切ない病気なんだ、認知症!

「人生歴」 を理解すると、認知症の症状や言動、行動の 「意味」 が見えることがよくあります。認知症の人は昔の事を話すのは大好き(直近は苦手)なので、学生時代や若い頃に何をしていたかを詳しく聞いてみるといいです。

介護する側も 「なんで?なんで?」 な日々になりがちですが、「人生歴」を紐解くと、その症状の隠れた意味が分かることがあります!お試しください!


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか