上着をズボンとして履く認知症の母との電話のやりとり

その日はデイサービスから帰ってきた母の落ち着きがなく、わたしは母が骨折したとき以来の見守りカメラ張り付き状態になってしまいました。

まずトイレの前の見守りカメラの映像には、母がズボンをちゃんと腰まで上げずに、もものあたりにズボンをひっかけて、家の中をうろうろしていました。腰履きではなく、もも履きなのでリハパンは丸出しです。

もも履きは、手足の不自由な母が転倒しやすい状態になります。まだもも履きでの転倒はないのですが、4か月前に転倒骨折しているので、目が離せません。ひょっとすると、おなか周りが太く、ズボンが上がらないかもです。ウェスト太めのズボンにしていますが、まだ足りない?

あとはひとりの時は面倒に思うのか、とにかくズボンを上げずにトイレを出るので、あまりに長時間になるときは電話をして、ズボンを腰まで上げるようお願いしています。

リハパンを履かずに歩き回る母

母はデイサービスでお風呂に入るので、家に帰ってきたら着ている服はキレイなのですが、なぜか毎回着替えをしたがります。わたしが居るときは「着替えてるから、大丈夫」と言って止めるのですが、ひとりのときは止められません。

あと4回吸収のリハパンも1回尿をすると、すぐ脱いで着替えます。その気持ちは分からないでもないので、リハパンは好きに替えてもらうのですが、この日はリハパンを見つけられずに、下半身裸で家の中を歩き始めました。

母はお尻をちゃんと拭かないので、その状態で座られると、座椅子カバーやクッションに便が付着します。1番の問題は失禁で守るものがないと大惨事になり、ヘルパーさんも掃除が大変になるので、母がリハパンのある寝室に行ったときに、見守りカメラによる声掛けで誘導しました。

くどひろ

うしろ! 押し入れのそばにパンツあるよ!

「パンツ履いてください」、「寝室にパンツあるよ」と1時間くらい声掛けを続けて、やっとリハパンを履いてくれました。これで終わったと思ったのですが、今度はズボンを履かずにリハパン一丁で歩き始めたのです。

上着をズボンのように履いたらスカートみたいに

暑いし、わたしも1時間の声掛けで疲れたので、ズボンを履かなくてもいいかなと思って、放置していました。すると母は寝室のタンスに行き、入っているズボンをスルーして上着をズボンとして履き始めたのです。

首回りのサイズに、母の腰回りはどうやっても収まらないのですが、かなりの時間をかけて何個かボタンをはずして無理やり履いていました。

見た目には明らかにおかしいのですが、履いてみるとなんとなくスカートのようにも見えるし、夏で暑いからこれもありかもなんて思いつつも、トイレで上着が脱げなくなると、上着を汚してしまうし、ヘルパーさんが大変になります。ということで、電話しました。

くどひろ

今ね、上着をズボンにして履いてるの。分かる? 寝室にズボンがあるから、そっち履いてちょうだい!

誰が!わたしはそんなことはしないの!小学校のときから、ちゃんとやってるの!

母は上着を履いている認識がなく、3分電話で説明しても全く会話にならかったので、わたしのほうが諦めて電話を切りました。まるでコントのようで、思わず笑ってしまったんですけど、重度の認知症だし、これくらいのことはしょうがないです。

でも数分後にわたしの話を急に思い出しくれたのか、おもむろに寝室に移動してちゃんとズボンを履いたのでした。前から上着を履こうと何度もしていましたが、とうとう履いてしまいました。履いてもいいけど転倒のリスクはあるので、さてどう対策しようか考えています。

今日もしれっと、しれっと。


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4件のコメント

コメント失礼します。私の母も肌着のシャツをズボンと思い、一生懸命足を入れて履いてました。お風呂から揚がって、もう寝るだけだったので、そのまま見守っていましたが、2時間後のトイレ時に覗き見ていたら、ちゃんとパジャマのズボンを履き、肌着はパジャマの下に着なおしていました。寝ている間に我に返った?と思っていましたが、朝本人に聞いても覚えている訳もなく…ドクターにその話をしたら、お風呂上がりの不思議行動は、軽い脱水に依るものだと言われ、お風呂に入る前に、アクエリアス等を飲ませて入浴する様にしたら、不思議行動は無くなりました!お母様にも、デイサービスでの入浴前に、ポカリスエット等を飲ませてみてはいかがでしょうか。

ノブ太郎さま

確かに脱水は認知機能を低下させることもあるので、そのパターンありますよね。
午前中にデイでお風呂に入って、その後ご飯やおやつも食べて、その後自宅では過食もあったので判断が難しいです。デイの連絡帳をあとで見てみようと思います。
ありがとうございます!!

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか