お世話になっている医療・介護職の悪口を認知症の人が言い出したら、その人を信頼してみる

認知症 悪口を言う

うちの母は、息子であるわたしにだけ「悪口」を言います。

認知症になる前は、そういうことは一切言わない人でしたが、今は「毒舌」を吐くことがあります。その悪口の相手は、お世話になっているヘルパーさん、看護師さん、デイサービスの職員さん、理学療法士さんです。

最初、「悪口」を聞いたときは、

くどひろ
あんなにお世話になっているのに、なんで悪口いうんだろ。失礼だよな~

と、正直思いました。しかし今は、母の「悪口」が始まると「よしよし」と考えるようになり、悪口の対象となった人を尊敬するようになりました。そういった発想に変わっていったのには、理由があります。

最近の母の悪口

今日、デイサービスで注意されてね~ すみません、すみませんって、何回も謝ったのよ~
リハビリの人、モニョモニョ手を動かして、やっても意味ないでしょ!

毒を吐く理由として、

  1. 本当に介護職の方(あるいは介護者)の態度が悪くて、悪口を言っている
  2. 認知症の方が、自分の立場を優位に保ちたくて、悪口を言っている

認知症の方は介護者の鏡と言いますから、介護する側の態度、暴言や悪口が影響している場合もあります。思い当たる方は、まず自省しましょう。しかし、どう考えても、いい看護師さん、ヘルパーさんなのに悪口を言うケースもあります。そんなときわたしは、

くどひろ
とうとう、〇〇さんの悪口を言うようになったかぁ~

と、達成感のような感覚になります。その医療・介護職の方は、母との距離を本当に縮めることができたプロだと認めるようにしています。

新刊の心得5に書いた妄想のタイプ、「心理的負担解消型」を当てはめると納得がいくのです。お世話になり過ぎると、介護職の方はわたしのせいで被害にあっている被害者だ、その人を悪口を言って加害者にし、自分を被害者にしてバランスを取るという考え方です。

三好春樹さんの本にある妄想の型ですが、母の悪口も「妄想」であり、「作話」でもあります。だから、この話を当てはめて考えると、納得できます。また、杉山孝博先生の法則である「より身近な者に対して認知症の症状がより強く出る」という話にも、合致します。

その医療・介護職の方を、母は家族のように身近な人と感じることで、悪口になるとわたしは思っています。距離が母と近い証拠が、「悪口」なんだと。そこまでの領域に行った方々は、正直すごいと思ってます。時間も必要で、うちの場合だと、最低1年はかかります。

今お世話になっている医療・介護職の方々とは、何度も会ってお話していますし、皆さんすばらしい方々です。だから、母の作話だと断定できるのですが、医療・介護職の方と距離がある場合は、何%かは1の可能性を持ったほうがいいかと思います。ひょっとしたら、認知症の対応方法が悪くて、本当に悪口を言っている可能性が残されています。

すべての方が当てはまると思って書いていませんが、一定数の方は当てはまると思っています。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか