認知症の祖母の90歳の誕生日を素直に喜べなかったワケとは?

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子宮頸がんで余命半年と言われたやや高度の認知症の祖母ですが、半年を超えて90歳(卒寿)を迎えることができました!

2日前にケーキ屋にいって誕生日ケーキを準備(ろうそくは90歳だから大きいろうそくを9本)、病院から自宅までの介護タクシーの予約、自宅で何かあった時のためのヘルパーさんの予約などなど、東京で準備できることはして、誕生日に合わせて帰省しました。

ふだん病院で寝たきりな祖母ですが、不正出血や血尿がみられるようになってきていて、特別養護老人ホームへの移動はお医者さんから止められ、最期まで病院にいる事が先月確定しました。病院で1日中寝てるのもかわいそうということで、今回2回目の帰宅でした。

1回目の帰宅で学んだこと

認知症の祖母はおだやかな性格なんですが、そこは認知症。突然キレることがあります。1回目の帰宅でキレたんですが、その理由を、”かまってあげない”、”長時間車椅子で座る体制を保つと疲れる” とわたしは推測して、前回は3時間自宅にいてもらったところを、2時間に短縮しました。これが1回目の帰宅で学んだことです。

自宅の自分の部屋に帰ってきた時は、病院では見た事がないうれしそうな表情だったので、これは帰宅させて正解だなぁ~ そう介護する側として思ったのが1回目の帰宅です。

1回目の帰宅時の祖母 (10か月ぶりの我が家に思わず笑顔が)
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今回は2回目だったんですが、誕生日というめでたい日なのに、ブログタイトル通り素直に喜べなかったんですね・・・なぜか?

誕生日はだれのため?

わたしと妹、おいとめい、認知症の母、ヘルパーさん、そして主役の認知症の祖母で計7名での誕生日会です。ふだんは病院で1人きりですから、それはそれは賑やかな時間でした。

今回は2時間の滞在で、この記事の最初にあるケーキのろうそくの火を消してもらいました。その日の病院の昼ごはんは残してましたが、ケーキはバクバク食べて、お茶もガブガブ飲んで、今回も自宅へ連れて帰ってきて正解!そう思ったんですが・・・1時間が経過したところで、

『疲れたから、横になりたい~』

と祖母が言いました。前回は3時間車椅子に座っていても平気だったんですが、今回はどうやら疲れたようです。2時間の滞在のうち、1時間は寝てしまいました。

この誕生日会って、祖母のためにやった誕生日会です。でも認知症の祖母は、30年以上いた台所のダイニングテーブルを前にしても、そこがどこかわかってません。わたしや認知症の母、妹はわかっても、おいとめいはどこのこども?という感じです。

『これって、祖母の誕生日会ではなくって、結局は介護する自分や家族が満足したいためのエゴ??』
『もし誕生日会をやらなかったら、この先介護する自分や家族が後悔するから開催したんじゃない??』

という思いの方が強くなったんです。もちろん良かれと思って誕生日会の準備はしてますが、タクシーで移動させて疲れさせて、2時間の滞在のうち1時間は寝てしまって、しかも自宅がどこか認識していない祖母に対して、誕生日会をやった事が本当に祖母にとっていいことなのか?と。

『本人のためを思ってやっていることが、本当に本人のためなのか?』
『病院でゆっくり寝かせてあげておいたほうが、疲れないし穏やかな誕生日でよかったんじゃないか?』

とにかく素直に喜んだのは最初の1時間だけで、あとの1時間は誕生日会って意味があったんかなぁ~ そう自分に問いかけ続けた1時間でもありました。

認知症とはいえ感情は残るので、

『なんか知らないけどおいしいもの食べて、なんか知らないけど人が集まってにぎやかで、楽しかった!』

最後の楽しかった!っていう感情が、うっすらとなんとなくでも残っているはずです。でもってその楽しかった!という気持ちは、認知症にとっても、子宮頸がんにとってもマイナスにはたらくことはないはずです。

介護する自分が後悔したくないから・・という理由でも、いいのかもしれませんね。深く考えすぎか??もうちょっと言うと、40歳そこそこでこういう事で悩んだり考えたりできるってのが実は幸せなんじゃないかと。認知症の勉強したり、ブログ書いているうちに、明らかに人としてのステージ、2ランクぐらいアップしてますからね。

とまぁ、素直に喜ばずにまぁ、あれやこれやといろいろと考えた誕生日会はあっという間に終了しました。

認知症の母と誕生日会を夕食時に振り返ったんですが、4時間前に食べたケーキを食べた事すっかり忘れてました(笑)


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか