超オススメ認知症介護の本・佐藤眞一先生『認知症「不可解な行動」には理由がある』

認知症不可解な行動には理由がある

先日、超オススメ本としてクロワッサンをご紹介しましたが、再び超オススメ本を見つけました。大阪大学大学院教授・佐藤眞一先生の本「認知症「不可解な行動」には理由がある」です。

わたしが特に刺さった箇所

定番中の定番である「何度も同じことを言う」場面を、佐藤先生はこのように書いています。

何度も同じことを繰り返し尋ねる俊二さんに、つい「さっき言ったばい」と言ってしまうこともあります。さっと曇った俊二さんの表情を見て、須美子さんはすぐに「いけない、いけない」と反省していますが、「さっき言った」と返すことの意味に気づかない人もいます。何かを尋ねた相手に対して「さっき言った」と言うのは、質問に答える気はないということであり、「会話はこれで終わりだ」と、相手を拒絶していることなのです。
引用元:認知症「不可解な行動」には理由がある(SB新書)

「さっき言った」という言葉が、会話を拒絶することになる・・・確かに!

認知症の人は初めてのつもりで聞いているのに、「さっき言った」といきなり会話を拒絶される・・・わたしでも「なんだよいきなり・・・さっき言ったって!」と思うはずです。認知症になかなか気づかない理由として、このように書いてます。

若年性認知症の人のように、仕事ができなくなったり、日常生活に支障が出たりすれば、自分の記憶がおかしくなってきていることに気づきます。ところが、仕事をリタイアして久しい高齢者の場合は、自分の老化とともに暮らしも単純化していますから、複雑な認知はあまり必要ありません。そのため、記憶に障害があっても気づかないのです。
引用元:認知症「不可解な行動」には理由がある(SB新書)

なるほど!生活が単純化すると、認知症に気づきにくいのかと!

そう考えると、今うちで意識している生活も間違いでないことに気づきました。いつも同じ朝食のメニュー、決まった曜日に訪問看護やリハビリがあって、デイサービスがある。単純すぎるほど単純な生活は、母を不安にさせる要素が少ないのかもと、この文章を読んで思いました。

たった2つしかご紹介できませんが、本はあっという間に付箋だらけになってしまいました。なぜガラクタや小銭を溜めこむのか、なぜ着替えや入浴をしないのか、なぜお金にこだわるのか、なぜ食べ物でないものを食べるのか・・・などなど、どれも理由が明快に分かります。

後半の部分、ケーススタディで理解する認知症が特に好きです。いろんなご家族が出てきて、認知症の症状がそれぞれ違います。その理由が分かりやすく書かれています。

医学の本ではなく、心理学・人間行動学の本

お医者さんが書いた認知症の本をたくさん読みましたが、家族が読むにはキツイ本も正直多いです。前頭葉がどう、アミロイドベータがこうといった話は知っていて損はないものの、日常の介護で使う場面がありません。お医者様が同じ医者向けに書いている?と思う本も多く、家族がいる下界(外科医ではない)までレベルが下がってないものはかなりあります。

そういう意味でこの本は、認知症のあの症状はこういう理由なのか、こういう心理なんだという気づきがたくさん得られます。心理学や人間行動学的なアプローチの方が、スーッと読めるんだなと。Amazonへのレビューが40本近くあります、それだけ名著なんだと思います。

どんな人がこの本を読むといいか?

認知症介護が始まったばかりの方が読んでも素晴らしい本ですが、認知症介護の経験が数年ある方も「なるほど~」と言いながら読むと思います。わたしは介護の壁にぶつかったら、この本を辞典のようにして使います。

100冊以上認知症の本を読みましたが、認知症介護の本のベストオーダーがこれで揃った感じがします。後日、どういう時にどの本というのをまとめたいと思います。

これからお会いする人には、この本を猛プッシュします。2012年からあった本で気づいていたはずなのに、今まで読まなかったことを後悔しております。760円+税って、安すぎ!下手な認知症の医学本を買うくらいなら、ご家族や介護職の方は絶対こっちだと思います。かなり個人的主観が入ってますが、すばらしい本です!

認知症「不可解な行動」には理由がある (SB新書)

認知症「不可解な行動」には理由がある (SB新書)

佐藤 眞一
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今日もしれっと、しれっと。


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【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか