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認知症の母がひとりで生活していく上で大切な「補充する」という介護

認知症 介護 補充

改めて「介護」という言葉を、辞典で調べてみました。

高齢者・病人などを介抱し世話をすること
引用元:三省堂 大辞林

亡くなった認知症の祖母が、病院の壁に便をなすりつけたものを拭いたり、亡くなった父が自宅ベッドから起きあがるのを介助することを介護と思われることも多いのですが、認知症の母のように、ある程度自立できている人のお世話をすることも介護です。

わたしはもはや介護ではなく、日常生活と思っているのですが、辞典に当てはめれば介護なのだと思います。コラム寄稿したり、文章にしたりするときは、分かりやすくするためにあえて介護という表現を多用するようにしています。

今日はプロの介護本には絶対出てこない、だけど認知症の母の自立を支える大切なものとして「補充する介護」というお話をしたいと思います。

わたしの在宅介護の中心は補充

わたしが母に対してどんな介護をしているのかを冷静に分析してみると、実は「補充」という行為がものすごく多いことが分かりました。例えば、こんな補充をいつもやっています。

  1. コーヒーに入れるグラニュー糖を、いつもの容器に補充する(記事タイトル下の写真)
  2. コーヒーに入れるクリープの詰め替えを、きちんと補充する
  3. 尿パッドを切らさないよう、在庫を補充する
  4. 洗濯で使う洗剤「ニュービーズ」を補充する
  5. 手や顔を洗う牛乳石鹸を補充する
  6. 歯磨き粉のホワイトアンドホワイトの在庫を補充する
  7. 肉じゃがを夕飯として作るとき、台所に必要な材料を並べる
  8. トイレットペーパーがなくなると、ティッシュをトイレに流すのできちんと補充する
  9. ファンヒーターの灯油の補充ができないかもしれないので、チェックする
  10. 砂糖、塩、サラダ油、にぼしといった調味料を補充する
  11. 食器を洗う洗剤を補充する

なぜこんなに補充ばかりしているのかというと、母は認知症で、自分で補充ができないからです。

例えば、コーヒーに入れるグラニュー糖の在庫がないと、母はコーヒーを飲むのを止めます。記事タイトル下の写真の入れ物にきちんと補充してあげないと、他の場所にグラニュー糖があったとしても無視です。

尿パッドがなければ、トイレットペーパーをパッド代わりに使います。灯油がなければ、寒いまま1日を過ごします。肉じゃがのニンジンがなければ、ニンジンなしの肉じゃがを作ります。食器用洗剤がなければ、水洗いのみです。それらはいつもの決まった位置になければ、認知症の母に在庫がないものとみなされてしまいます。

わたしが必死に補充し続ける理由は、今の生活のリズムをできるだけ長く継続して欲しい、できる限り自分でやって欲しいという強い願いからです。グラニュー糖がずっとなくて、コーヒーを飲む習慣を忘れてしまったとします。そうすると、お湯を沸かすことや、コップを洗うという、関連する生活習慣まで記憶から消えてしまうかもしれません。そうやって、できないことは少しずつ増えていくのだと思います。

一番焦ったのは、極寒の冬に灯油の補充ができていなかったことです。灯油の定期配送をお願いすることで、この問題は解決したのですが、居間にエアコンを設置してなかった当時は、凍死が頭をよぎったくらいです。

補充するという行為は、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:医療・福祉の世界で重視される生活の質。人生の質。生命の質)の維持につながるものであり、とても大切なものだとわたしは考えています。

冷蔵庫の食材は、ヘルパーさんが補充してくれます。認知症のお薬やサプリメントは、訪問看護師さんが補充してくれます。しかし、これだけでは生活は回りません。わたしは盛岡に帰省すると、常に補充、補充、そして補充の毎日で、これをきちんと満たしてあげることで、母はなんとなくですが自立した生活を6年送っています。

たまに補充を忘れて、東京に帰ってしまうこともあります。次帰ってくると、空っぽになっていて・・・あぁ、やってしまったよ、無意識のうちに我慢が必要な生活にさせてしまったよ・・・そんな罪悪感に襲われることもあります。

補充するうえで注意すべきこと

例えばトイレットペーパーですが、洗面所の下に置くのがここ数十年の決まりです。補充用のトイレットペーパーを、押し入れなどの別な場所に入れておこうものなら、母は忘れてしまうので「在庫切れ」という認識になり、ティッシュを使い始めます。だから、洗面所の下にまとめて置くことは必須です。

以前クリープが9個たまったり、独居なのにパンが6斤もあったのは、いずれもいろんなところに置いてしまって、その記憶がなくなったから、母もヘルパーさんも何個も買ってしまったのです。補充したら、1か所にまとめておくのがとても大切です。

情報も補充する

物の補充ばかりを書いてきましたが、情報を補充してあげることも大切です。うちの場合、情報の補充で活用しているのはホワイトボードです。母は少しのレパートリーだけ料理ができるのですが、作っている途中にレパートリーを忘れてしまいます。毎日が注文をまちがえる料理店状態で、ハンバーグを注文したら餃子が出てきたというエピソードは、うちでは日常です。

ホワイトボードを使ってレパートリーという情報を補充してあげることで、なんとか料理を最後までひとりで作ることができます。料理しながら、冷蔵庫のホワイトボードを何度も何度もみて、豆腐の味噌汁にやっとたどり着きます。途中でボードの文字を消そうものなら、大根の味噌汁が出てきたりします。ホワイトボードに書いていても、たまに不思議な具材の入った味噌汁が出てきたりもします。

いつか料理が出来なくなる日が、必ずやってきます。コーヒーを自分で沸かして飲めなくなる日もやってきます。できるだけそのXデーを先送りするために、自立して生活できる時間を少しでも長くするために、物も情報も補充して、補充して、補充する。わたしの在宅介護は、補充で満ち溢れております!

今日もしれっと、しれっと。


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7件のコメント

私も遠距離介護なので月一回の帰省の際は補充娘です。くどひろさんと同様の補充項目の他にうちの場合は化粧品(スキンケアとメイク)が追加されます。理由もくどひろさんと同じです。母の視界にファンデーションやまゆずみがなかったら恐らく母はメイクを全くしなくなると思うからです。料理はできなくなってしまったけど、外出時のメイクはしようと頑張っているので(うまくできてないけど)、応援したいと思ってます。クレンジングの要領(乾いた手で馴染ませるとか)が理解できなくなったため、石鹸で洗い流せるファンデーション等に変えました。今のところ順調です。

あけましておめでとうございます。私の母が骨折してから車いす両親の近距離介護も二か月経ちましたが、なんとか皆さんのおかげで無事?過ごしてます。(転倒は何度もあるけど無事でホッと)
補充はまったくその通りです。ヘルパーさんが買い物してきてくださいますが、前もってこっちで確認して補充しないと無くなってからのヘルパーさんでは遅いのです汗。気の利いた方はしてくださいますが、毎日一日3回のヘルパーさんもずっと同じ人ではないし、時間が足りないらしく完全に思うようにしていただけないし。そこは仕方ないと割り切ってます。

ふくいさま

うちもでした、スキンケアとメイク(口紅とファンデーション)は本当に大切です!
ファンデーションは特別な商品だったので、ネットでも探せずに本当に苦労しました。今は売っている場所を特定できたので、安定して補充できています。

介護ってこう言う事なんだ‼️な^_^
改めて、気づかせてもらいました。
補充って思いやりですね。
ところで、逆の 破棄の方はどうされてますか?
母が日々のゴミの分別とゴミ出しが出来なくなっています。これさえ出来ればまだまだ一人暮らし出来そうなのですが。

さゆさま

ゴミ問題、うちもあります。

カン・びんに関しては、燃えるゴミの中身をチェックして、かんなどが入っていた場合はわたしが分別しておりました。張り紙を貼って、かん・びんは分けるよう注意喚起していたこともありました。今はというと、買っているものの多くがパックになっています。なので、かんやびんを使っているものをあまり買ってません。これはうちの母が握力が弱くて、例えばジャムの瓶が開けられないので紙製の容器のものでないとだめ・・・みたいなことが増えていった結果でもあります。

そうか!パックと言う手がありますね。
必然だからとはいえ、うちでも効果あるはずです!
出来るだけやっかいなものを 持ち込まない
出来るだけシンプルに。
混乱は敵ですから。笑
くどひろさんの 思考にはホント助けられてます。

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ABOUT US

工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。岩手にいる認知症&難病(CMT病)の母(78歳・要介護2)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて10年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。
【著書】親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)ムリなくできる親の介護(日本実業出版社)医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか