『家族のためのユマニチュード』を認知症介護家族が読んでみた感想

家族のためのユマニチュード 感想 書評

ユマニチュードが特に話題になったのは、2014年頃だと思います。

ユマニチュード

ユマニチュード創始者のイヴ・ジネストさんの講演会に参加したり、ユマニチュードを実践している看護師さんの様子を見たり、自分の認知症介護に何か生かせることはないだろうかと、本を読んだりもしました。

しばらく情報収集していなかったのですが、本のタイトルに「家族のための」と書いてあったので、気になって買い・・・いや、記事タイトル下の写真のとおり、図書館で借りました。2018年8月に発売された新刊です。

ユマニチュードの講演会に参加したとき、「人としての哲学」という話をイヴさんが何度もしていました。そう考えると、ユマニチュードって介護職向け、家族向けという概念は関係ないのかも・・・ということは、内容は同じ? そんな嗅覚が働いてしまったので、図書館で借りました。

『家族のためのユマニチュード』の特徴

カラーでイラストも多く、1日で読み終えることができる内容になっています。ユマニチュードの基本である見る、話す、触れる、立つという4つの柱に加え、実際に家族としてユマニチュードを導入した方の声も収録されています。

わたしが本で気になったところ

「日本人には、こんなことはできません」という意見を、ユマニチュードを日本に紹介して以来たくさんお受けしました。とても近い位置に立ち、相手に触れながら目と目を合わせることは恥ずかしく思えます。「フランス人ならできるでしょうけれど、日本人には無理です」と思われても不思議ではありません。
引用元:家族のためのユマニチュード(誠文堂新光社)

本では、フランスや日本といった文化の違いは後天的なもので、認知症が進行していくとそういったものが失われ、残るのは人間としての特性と書いてあります。

イヴさんの所作を実際に見たときに、日本人にできるかなとまず思いました。ユマニチュードの訓練を受けた看護師さんを見たときも、ミュージカル女優のように見えました。実際、講習を受けた家族の中にも、気恥ずかしさを感じる人もいるようです。家族にとって、介護は職業ではないですし、長年の関係性、そこから来る照れもあるので、なかなか演じ切ることが難しいのだと思います。

うちの場合は、ユマニチュードは認知症がやや高度というレベルまで進行し、ベッドで寝たきりだった祖母には試してみたいと思いました。(この技法を知ったときには祖母は亡くなっていた)認知症の軽度を過ぎ、中等度くらいと思われる母には、ちょっと早いかなという印象です。

例えば「近い距離で長い時間見つめる」という方法は、認知症が進行していた祖母には有効だったと思います。でも母にそれをやったらきっと、「あんた、近いわよ」と一蹴されるはずです。「大げさとも思える笑顔をつくる」という方法も祖母にはできますが、母にやったら「あんた、どうしたの?」と言われると思います。

なので、もうちょっとあとの介護フェーズで、ユマニチュードは使いたいと考えています。母の認知症が更に進行してしまったとき、わたしのことが分からなくなったとき、母が寝たきりに近い状態になったとき、改めて読み返す必要がある本だと思いました。

専門職の方は、ユマニチュード好きですよね。1対多で仕事をしなければならない、時間に追われる介護職の方にとって、もしユマニチュードを実践して、1人1人のケア時間が短縮することができたら、どんなに救われるだろうと思います。

わたしがお会いした介護家族と、このユマニチュードについて語り合ったことはほとんどありません。介護家族はユマニチュードをどういう思いで見ているか、実際にどう在宅介護で活用しているか、聞いてみたい気もします。

はまらなくてもメリットを拾う努力が大切!

ユマニチュードも、リコード法も、コウノメソッドも、わたしが本に書いていることも、ご自身の認知症介護と必ず相性があると思います。うちもそれぞれの手法、考え方など、いいところだけをピックアップするようにしています。

認知症ケアの方法が自分の家に当てはまらないとき、そのすべてを否定するのではなくて、「うちの場合、どうカスタマイズしたら使えるのかな」と考える想像力が大切なように思います。特効薬がない、認知症の世界において、介護者は常に探求心を持つことが必要なんでしょうね。

家族のためのユマニチュード: “その人らしさ

家族のためのユマニチュード: “その人らしさ”を取り戻す、優しい認知症ケア

イヴ・ジネスト, ロゼット・マレスコッティ, 本田 美和子
1,654円(04/26 10:10時点)
Amazonの情報を掲載しています

今日もしれっと、しれっと。


にほんブログ村 介護ブログへ


【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか