認知症の脳の記憶容量をグラフにして見たら、ある事が分かった!

パソコンの世界ではハードディスクやメモリのことを、記憶容量と呼びます。身近なところでは録画に使うハードディスクプレイヤーも、記憶容量が残りどれくらいかを見ながら録画予約します。

脳の記憶容量って?

同じ発想を自分の脳で考えてみます。一般的な人の脳の記憶容量を、時間別にグラフにしたものです。わたしの感覚はこんな感じです。

graph1

グラフは縦軸が記憶容量(今日の記憶を100パーセントとする)、横軸が時間軸になります。

右から4番目の今日を基準にします。今日の記憶や昨日のこと、明日の予定は当たり前ですがよく覚えています。一方で幼稚園の頃だったり、学生時代の事はうろ覚えです。グラフにすると、上図のように過去になればなるほど、記憶容量は減ります。

これを認知症の人に当てはめたら、どうなるでしょうか?

認知症の人の脳の記憶容量

認知症の人の記憶容量をグラフ化してみたのが、こちらです。

graph2

 

軽度の認知症の母(71歳)を例にしています。今日の記憶容量は普通の人が100パーセントだとしたら、60パーセントしかない感じです。夕方に朝の事を聞いても忘れているので、こんな感じです。

ただ、なんとなくでも当日の事を覚えていて、一方で昨日の記憶や1か月前の記憶はありません。明日の予定や1週間後の予定も記憶はないです。

ところが10年前あたりから急に記憶が鮮明になり、20年どころか30年以上の前のことはしっかり覚えています。グラフは30年前にしましたが、40年、50年、60年前のことも覚えています。

母: 「わたしはね、朝の連ドラはおしんをよく見てた」

おしんは1983年で32年前の作品なのですが、母の連ドラの話は、おしんだけです。黙って話を聞いていると、この時代の事に偏ってます。

でも、”記憶のクサビ” を打つことができます。2014年の事はほとんど忘れているのに、大好きな舟木一夫のコンサートに行った事だけは覚えています。そういった強い印象を残してあげることは、工夫すればできるんですよね。

amyさまのコトバ

一般の人の記憶容量のグラフと、認知症の人のグラフを比較すると、記憶の面積が一般の人は広いので、3日前の仕事の悩みとか人間関係とか、家族から暴言を言われたとか覚えています。

認知症の人はというと、”いい意味で” くだらない悩みを排除しています。3日後に病院に行かなきゃいけないという嫌な事も、カレンダーを見るまでは気づきません。激しくケンカをしても、翌日にはケロっとしています。

ここで、ブログコメントをよく頂いているamyさまのコメントをご紹介します。

amy

 

コメントからも分かるように、認知症の人は、「いま、この瞬間 ”だけを”?生きているんだな」 と。一般の人は記憶がどうしても青いグラフになってしまいますが、不安や悩みに関して “だけは” オレンジのグラフを意識して生きていくと、楽しい人生になりますよね?

こういう記憶容量の構造になっているんだから、それを介護者は利用すべきですよね。いつまでも事を引きずらない認知症の人、一方でいつまでも昨日言われた事を根に持っている介護者。こんな損なことはないので、オレンジのグラフのように介護ストレスを忘れましょう!って難しい・・・


にほんブログ村 介護ブログへ


【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

明けましておめでとうございます。
本年もブログ楽しみにしております。

さて、コメント引用恐縮でございます(^_^)
お正月も実家へ帰り、家族親戚一丸となって、
父に記憶のクサビを打ち込んで来ました。
・・明日には忘れてるだろうな(笑)。

それにしても、認知症を発症した当時は「治療的な事」に東奔西走しましたが、
今では、これで良いかー、と思うようになりました。
もちろんこれからも進行STOPを期待しない、とは言いませんが、
本人が気分よく過ごせれば、メイン介護者である母のしんどさも減るし、
それが一番だと気づきました。
そして父の、今この瞬間を生きる姿勢(悟りの極み)は見習わなくてはと思うこの頃です(笑)。

amyさま

あけましておめでとうございます!
いつも「気づき」のあるコメントを頂き、ホント勉強になっています。

予告どおり、コメント引用させて頂きました(笑)

わたしも今amyさまとまったく同じフェーズに突入中で、治療的な事よりも・・・という感じです。
アドラーの別の本を今読んでいますが、やっぱり認知症の人と結び付けたくなります・・病気かなぁ?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか