認知症介護を経験してよかったと思えた近所のスーパーでの出来事

岩手の実家の近くのスーパーで、食料品の買い物をしていたときの出来事です。

音声配信voicyで話したときの放送回はこちらで、今回はブログで書きます。話し言葉と書き言葉では、若干内容が変わります。


わたしはいつも、買い物メモをきっちり作るタイプです。しっかり者だからではなく、買う物を忘れてしまうからなのですが、スーパーでは目的のモノをチャッチャと買って、長居はしません。

その日もハイペースで買い物をしていたのですが、途中白髪混じりの70歳くらいのおばあさんと2度ほどすれ違いました。なぜか気になる方だったのですが、このあとの出来事がなければ、おそらく忘れていたことでしょう。

わたしは一通り買い物を終え、あとはレジで支払いを済ませるだけ。ソーシャルディスタンスを保って列に並び、次がわたしの会計の番だったのですが、そのスペースに先ほどのおばあさんがスッと割り込んできて、何も言わずに会計を始めようとしたのです。

「ちょ、ちょっと!」と言おうと思った瞬間、おばあさんの足元が目に入りました。靴のかかとを踏んでいて、そのまま少し視線を上げると、お尻の割れ目がチラッと見えていました。

想像していない情報が次々入ってきて、列に割り込まれた怒りの感情がスッと消え、戸惑いの感情が湧き上がってきました。何かがおかしい、これはなんだ? と。さらにおばあさんの挙動を追うと、ササササと小刻みにすり足で歩いています。

これらの情報からわたしは、あるひとつの答えを導き出しました。

おばあさん、認知症の方かも?

レビー小体型認知症の方のパーキンソン症状のひとつに、すり足があります。他にも、靴のかかとを踏んで歩いている認知症の方もいますし、スリッパやサンダル、パジャマで街をひとり歩きしている方もいます。

なんとなくわたしの習慣になっているのですが、街を歩いていて、この方認知症かも?と思ったときは足元を見るようにしています。それで認知症の方と確定したのです。

わたしは隣のレジにスッと移動し、おばあさんの様子を見ていたのですが、なぜか殺虫剤2本セットを会計前に追加購入、同じものを何個も買っていて、だけど支払いはスマートにキャッシュレスでした。

認知症介護の経験が役立った

認知症介護を経験してなければ、おばあさんに「列の最後尾はこっちですよ」と言うか、応対次第では大ゲンカに発展したかもしれません。

ケンカにならなかったとしても腹が立って、家族に「今日さ、ばあさんがレジに割り込んできてさ」ぐらいのことは言っていたと思います。自分なりに理由が分かれば、腹も立たないし、やむを得ないと納得できます。

しかし、このような判断にならないほうが圧倒的に多いわけで、その場合はケンカや口論になりますし、警察など第三者が来ても、ただのケンカ扱いで終わっているケースはたくさんあると思います。

さらに、わたしの中で認知症と確定したとしても、何かできるわけでもありません。ご本人は認知症と思ってない、ご家族もこの状況を知らない、お店の方も不思議に思わない可能性もあります。とても微妙なラインでしたが、おそらく間違いないと思います。

実は街を歩いていると、気になる高齢者の方をたくさん見かけます。この前もおじいちゃんがドラッグストアの駐車場に車で入ってきて、車庫入れができずに何度も切り返していました。

さすがにこれはヤバいと思っていたら、パトカーがおじいちゃんの車を追跡していて、事なきを得たのですが、注意深く見ていると結構あります。

認知症の方はこれからもっと増えていくわけですから、介護していない人でも少しの認知症の知識があれば、もっと穏やかで寛容な世の中になるかもなと感じたエピソードでした。

音声配信voicyの最新回は、人に頼ることの難しさのお話です。介護で人に頼れていますか↓

今日もしれっと、しれっと。


にほんブログ村 介護ブログへ


【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

今日のVoicyの内容で、すみません。

まさに昨日、花巻に行って戻って来た時、不謹慎かもしれませんが「一仕事終わった〜!」と思いました。
私も子供が小さい時は、地元が息抜きになっていましたが、今はただ介護のためだけに帰っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか