介護家族が介護保険サービスを利用するうえで備えるべき5つのリスク

頭を抱える女性

先日、しょこたんが映画館で一般男性客から、突然ジュースをかけられ、あまりのことに呆然としたというニュースが話題になりました。

今日は「びっくりし過ぎて言葉が出ないって、こういうことか!」というお話からスタートします。

5月29日(水)朝にヘルパーさん、いわゆる訪問介護の事業が停止になるという連絡を、突然受けました。退職者が重なり、事業が継続できなくなったと。さらに、こうも書いてありました。

「くどひろさんが盛岡に居るうちに、ケアマネさんと新しい訪問介護事業所を見つけてください」

ん? 盛岡に居るうち?

どういう意味か分からず、一瞬フリーズ。

その後、事業停止が5月末で、大至急母が新しく利用する訪問介護事業所を見つけてくださいという意味だと分かり、絶句。

実質2日で、新しいヘルパーさん探しをするという状況に追い込まれたわたしは、突然ジュースをかけられた、しょこたんの気持ちが分かった気がしました。

こういうとき、ブログ読者の皆さんなら、どう反応するでしょう?

おそらく「キレる」「クレームを言う」が自然な反応だと思います。わたしもそういう気持ちになりましたし、この件に関してのお詫びの言葉が、自分の身体に1秒も留まることなく、高速ですり抜けていきました。

キレてる暇も時間もない!6月以降も、母が普通に生活できるような体制にしなければ!

そしてこの経験を、介護家族が介護保険サービスを使っていくうえで、備えておくべき5つのリスクというネタに昇華させ、ブログ読者の皆さんのお役に立つことで、自分の感情を鎮めることにしました。

事の顛末を話す前に、5つのリスクからご紹介します。

介護保険サービスは永遠ではない!

介護保険サービスは未来永劫続くわけではなく、下記5つのリスクがあると思います。わたしの今までの経験と重ねてみました。

事業所の倒産・廃業のリスク

厚労省発表の平成29年度介護事業経営実態調査にある収支差率( 「介護サービスの収益額 - 介護サービスの費用額)/ 介護サービスの収益額 」 )を、下記にグラフ化しました。簡単に言うと、介護施設やサービスの儲かり具合です。

一番儲からないのが、グラフ一番下の居宅介護支援、いわゆるケアマネさんです。

民間企業で長く働いてきたわたしは、この収支差率という言葉を初めて目にしました。企業は営業利益や経常利益で業績を見ることが多いのですが、介護保険制度全体でバランスを取るためには、この指標のほうがいいのでしょう。

ケアマネが所属している居宅介護支援事業所が、突然閉鎖になるという話もありますし、それは家族にも振りかかってくることです。

ケアマネに限らず介護施設だって、倒産や廃業のリスクはあります。また少人数の組織の場合、数人の退職者によって、事業が停止することもあります。

介護家族に、事業の収支報告書が送られてくるわけではないので、資金繰りや収支がどうなっているかは不透明で、常にリスクはあります。

医療・介護職の退職・休職のリスク

医療・介護職の退職(休職)には、良い退職と悪い退職があります。

わたしが体験した良い休職は、出産による育休です。訪問リハビリでお世話になっていた作業療法士さんの産休に伴い、担当が変更になりました。うちにとってはダメージでしたが、それでも喜べる休職です。

悪い退職は、介護の仕事がイヤで辞めてしまうケースです。職場の人間関係、トップの方針との食い違い、利用者や家族との相性など、いろんなケースがあります。

わたしがいいと思っていたサ責の退職、作業療法士さんの育休をきっかけに、事業所ごと変えた経験があります。他の人と関係を築くのも、事業所を変えるのも、どちらも一から関係を構築することに差はないと考えたからです。

担当変更のリスク

退職・休職と重複するところもありますが、退職しなくても担当が変わることはよくあります。

正直なところ、ヘルパーさんにも個人差があります。今まで20人以上のヘルパーさんにお世話になりまして、感謝の気持ちしかないのですが、順位をつけてと言われれば、つけられます。

Aさんが良かったのに、急に来なくなった・・なんてことは、よくあります。ヘルパーさんだけでなく、施設ケアマネがどんどん変更になってしまったり、訪問看護師、理学療法士など、自分がいいと思っていた人が担当でなくなることはよくあります。

これまで培った関係がリセットされ、また一から関係を構築しなおす必要があり、家族には最も身近なリスクと言えます。

医師のリスク

ひとり暮らしの母が包丁で指を切ったときお世話になった近所の外科が、ある日突然、月極駐車場になっていました。理由は、医師の急死でした。

医者も人間。突然亡くなることだってあるし、病気で診察できなくなることだってあります。常日頃から、もしかかりつけ医が変わったら、次はどの病院にお世話になる?というシミュレーションをしておいたほうがいいです。

経営者のリスク

介護職の方に退職した理由を聞くと、経営者(会社)の方針と合わずに退職し、自分でデイなどを立ち上げる方をよく見かけます。

会社員の世界でもよくあることですが、もし職員の離職率が高い介護施設やサービスを利用しているご家族(離職率は分からなくとも、職員がいなくなる感覚ははっきり分かる)は、わたしと同じ目に合うかもしれません。

ケアマネさんと相談して、次の候補先を考えておいたほうがいいと思います。

新しいヘルパーさんはどうなった?

亡くなった父がお世話になったヘルパーさんが、本当にすばらしかったので、(元記事:亡くなった父の介護チームを母へ移行することにした理由)2017年12月から、母もお世話になっておりました。しかし、わずか1年半で、突然の事業終了・・・。

わたしはまず、知り合いの介護職を頼って、オススメの訪問介護事業所はないか聞きました。同時に、ケアマネさんにも相談しました。わたし以上に、ケアマネさんは大混乱しておりました。

せめて5月頭にお知らせしてくれれば、状況は全く違っていたはず。(本当はもっと早いほうがいい)しかし、5月頭は事業所の名前が変わるという連絡だったので、事業は継続すると思っていたら、まさかの事業停止・・・。

企業の場合「ゴーイングコンサーン」といって、 その企業が将来にわたって事業を継続するという前提があります。だから、投資家は安心して投資できるわけで、事業を継続しないかもしれない会社には誰も投資はしません。

しかし、この原則を破る企業が増えたため、赤字や売上が激しく減少した場合は「疑義注記」を財務諸表に書くと義務付けられました。投資家が、この会社はいよいよやばいぞ!ということが分かるので、注記がでれば株価は下がるし、外れれば株価は上昇します。

今回の件は、そういったサインも見つけられませんし、介護の話だし、ゴーイングコンサーンの原則もへったくれもないわけです。

不幸中の幸いだったのは、わたしがたまたま盛岡に居たことです。わたしが盛岡に居る1週間はヘルパーさんは来ないので、事業所探しの期間は2日ではなく5日の猶予になりました。(あまり変わらないけど)

もし、わたしが都内にいてこの連絡を受けていたら、本当にどうなっていたことでしょう・・・鳥肌立ちます。

あまりに時間がなく、前の訪問介護事業所に戻そうと考えたのですが、ケアマネさんと相談して、新しい事業所に変更。わたしの滞在期間中に新事業所とのミーティングと契約まで行いました。 ケアプランの変更も発生しましたが、それは小さなこと。 帰京直前、本当にギリギリのタイミングでした。

うちは最悪の事態をなんとか回避できたのですが、わたしが一番心配したのは、他の利用者さんやご家族です。新しいヘルパーさんに簡単に慣れない、受け入れられない、次が見つからない利用者やご家族は、今この瞬間も路頭に迷っているかも・・・とても切ないです。

事業停止した場合に起こり得る、介護家族や利用者の混乱や介護への影響を想像できなかったのだと思います。おそらく退職された現場のヘルパーさんも、わたしと同じ気持ちじゃないかな。

ヘルパーの皆さんには大変お世話になり、ただただ感謝しかありません。そして、急なお願いを受けてくださった新事業所の皆さん、ありがとうございます。救われました!

ブログ読者の皆さんも、わたしのこの体験から、改めて自分自身に起こり得るリスクを想像し、備える意識を少し持っているだけで、いざというときの対応が違ってくると思います。

母親にとっていい選択をするというシンプルな方針を守り続けるためには、多少の自己犠牲が伴います。あらゆるサービスに依存し過ぎず、常に自立した気持ちを持ち、リスクヘッジをして、これからも遠距離介護を続けていきます。

今日もしれっと、しれっと。

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頭を抱える女性

4 件のコメント

  • くどひろ 様

    ご無沙汰してましたσ(^_^;)

    今回のテーマを見て、うちもそうだったので、コメント書きたくなり~

    我が家も昨年の6月末…『来月からヘルパー事業を辞めます』と急に告げられ、本当に途方に暮れました。認知症とはいえ、毎日訪問してくれるスタッフの方々に母も慣れ、なついてしまいワガママも言えるという仲でした。 やはり、心配なのは新しいヘルパーさんたちには慣れるかどうか⁉️

    ヘルパー事業所の変更はケアマネさんの手配で町の社協の方へすぐに移管されましたが、始めのうちは少々手こずり薬を飲ませられないとか、排除するなどの事象があり、薬は最初からテーブルの上に水差しとコップを設置したり、排除は少しずつ少しずつ仲良くなってもらったり…

    記憶はなくても感覚はある認知症さんなんで大変でした。

    工藤家はいかがでしたか?

    穏やかな日常を迎えられていることをお祈りします(*^^*)

  • 奈都さま

    町の社協に移管というパターンがあるのですね、勉強になります。

    うちは週4日ほどヘルパーさんが来るので、固定ではなくいろいろな方が来ます。そのため、母はいつも「誰が誰かさっぱり分からない」と言います。それは本当なのですが、自分が記憶できなくなった言い訳としてはすごく便利なので、「ヘルパーさんが変わり過ぎて覚えられない」ばっかり言います。3年お世話になっている理学療法士さんの名前も分からないので、変わろうが変わるまいが分からないのですが、見た頃ある顔だと認識していますし、距離感は近いので感覚はあるようです。

    ありがとうございます!

  • 今まさに、お世話になってる小規模多機能が似ている状況です。この3ヶ月で5人の退職者が出ています。それも社員さんばかり。初めての事業所なのですが、いくらなんでも、何か嫌な風向きでは?と。母もこれからの季節、一番体調を崩すことが増え心配なのに不安でいっぱいです。わたし自身も気合を入れ直さないと思っています。ほんとにタイムリーな話題でびっくりしました。

  • 南の9月さま

    新しい小規模多機能を探すことになると、自動的にケアマネまで変わってしまうので、かなり大きな影響を受けますよね。
    SNSやメッセージを頂いた方の中にも、担当ケアマネが解雇されたという方もいて、意外と皆さんご苦労されているんだなと思いました。

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    ABOUTこのブログを書いている人

    1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住の介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護2)のW遠距離介護。2013年3月、2回目の介護離職、同年11月祖母死去。2017年悪性リンパ腫の父(要介護5)も別拠点で在宅介護したが死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を継続中!NHKニュース「おはよう日本」、NHK「あさイチ」でこのブログが紹介されました。連載:介護ポストセブン(小学館)、著書:ムリなくできる親の介護(日本実業出版社)医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか