母は難病指定されているシャルコー・マリー・トゥース病(CMT病)で、手足の筋萎縮があります。ということもあって、日々の生活の中で「これは不便だ!」と、同世代の高齢者よりも過剰に感じることがあります。
今日は母と生活していて、おそらく認知症の方や力の弱い高齢者が自立した生活をおくるうえでバリアになりそうなものをいくつか挙げてみます。
ジャムのふた
朝食はパンにジャムと決まっているのですが、わが家にはルールがあってアヲハタの瓶ジャムは購入しません。理由は、母の握力では瓶のふたは開けられないからです。必ず紙カップに入ったジャムを、ヘルパーさんにも購入をお願いしています。
ペットボトルのふた
これも母の握力では、苦戦します。CMT病の人は必須で持っているオープナーがあるのですが、うちは購入していません。実家に帰ると、開けられない2リットルの烏龍茶が放置されていることも・・・
しょうゆなどのマジックカット
納豆巻についているしょうゆや、刺身についてくるわさびに書いてある「どこからでも切れます」という表示。マジックカットですが、母はどこからでも切れません。そして文字も小さいので、見えません。はさみが近くにあるときは、はさみでカットします。
牛乳パック
これも意外と苦戦していますが、包丁やハサミを駆使してなんとか開けています。キャップタイプの牛乳は開けられないし、母を見ていると危ないなぁと感じます。
ハムの真空パック
ハムの真空パックも、力が必要です。はさみで切れば問題ないのですが、母がはさみをいろんなところにしまって失くします。数か月後に見つかるので、うちには調理用ばさみが3本もあります。
あえて挑む逆バリアフリーな生活
バリアフリーの反対語は、「バリアフル」というそうです。知っている人が少ないと思ったので、分かりやすく逆バリアフリーという言葉をタイトルに使ってみました。
これだけのバリアがありますが、なんとかひとりで生活してもらっています。はさみや包丁などを使って、ハムやペットボトルに孤独な戦いを挑む母を影で応援しています。
こう言われたら素直に手伝いますが、それまでは分かっていても動きません。頭を使いますし、握力を使うことで筋力アップにつながると思ってます。時には包丁で指をザックリ切ってしまって、帰省して驚いて外科に連れて行ったこともあります。
同じような戦いは、福祉用具でもやっています。
母は立ち上がりに時間がかかるので、本当は居間や寝室に手すりを設置するつもりでした。
ただ、理学療法士さんとリハビリをする中で学んだのが、家のあらゆるものがリハビリの道具にもなり、手すりにもなるということです。例えば、家でやるリハビリはこたつを使って、手をついて立ち上がる動作を何度も繰り返します。こたつも手すり。タンスの引き出しを開けっぱなしにしておくと、そこも手すりになります。
もうひとつ福祉用具レンタルやリフォームに踏み切らないのは、認知症の場合はこういうこともあるからです。
たとえば、介護やバリアフリーのために家をリフォームしたり、間取りを便利にしたりすることが、逆効果になることもあるという。自分の家と本人が認識できる「古いシミ」や「古い家具」などの目印が見えなくなり、不安に陥ることもあるというのだ。
引用元:https://dot.asahi.com/wa/2014082800047.html
逆バリアフリー生活は、常にリスクと隣り合わせです。転倒して骨折する可能性もあります。でも「生活すべてがリハビリになる」という考えから、この態勢でしばらくは頑張りたいと思います。すべてはQOLの維持のためです。
今日もしれっと、しれっと。