もし母が認知症になっていなかったら、わたしの仕事を応援しただろうか?

認知症 仕事 応援

この介護ブログをはじめて、6年になります。

最初は「40kaigo」というハンドルネームでスタートしたのですが、本を出版する機会に恵まれ、その名前で本は出版できないと分かったときペンネームを考えました。

認知症の本を出版したことが母に知れてしまうと、本のタイトルで自分が認知症だということを知ってしまうし(一部、自分でも認知症だと思っているけど)、わたしも積極的に母に認知症という事実を伝えてこなかったので、本名ではなくペンネームという選択をしました。

出版すると地元メディアで取り上げられることもあり、母が偶然目にしたとしてもバレないための対策でもありました。これは母だけでなく、亡くなった父や父の親族に対しても同じことでした。

家を出た父に、母との介護の話を読んで欲しくないと思っていた部分もあります。結局、父が倒れ、余命わずかと分かったときに伝えたほうがいいと思い、本の詳しい内容は伝えなかったものの、作家として活動していると伝えました。

父の葬儀のとき、棺にわたしの本を入れて天国で読んでもらうことにしたので、そのタイミングで父の兄妹にも作家活動について伝えました。わたしが想像していた以上にみんなが驚き、そんなに驚くことなのか正直思いました。

父の妹がわたしの本を売ってくれる

特に驚いたのが、おばさん(父の妹)の行動です。

わたしの本を友人、知人に紹介しまくって、数十冊を販売してくれました。その知人が新聞でわたしの本を見つけたといって、切り抜きをくれたりしました。

他の親族もわたしの本を読んでくれたみたいで、お褒めの言葉を頂いたり、まだまだ生ぬるい介護だという感想を頂いたりと、さすが親族だなと思いました。わたしは自分の介護を他の人と比較したり、されたりするのが好きではありません。うちのほうがもっと大変という介護自慢が、本当に苦手です。

おばさんがこうやってわたしの本を売ってくれている姿を見て、ふと思ったことがあります。それは

くどひろ
もし、母が認知症になっていなかったら、わたしの本をおばさんのように宣伝してくれたのだろうか?

ということです。

母には、自分の仕事を一生伝えることはないと思います。今まではそのことに寂しさを感じなかったのですが、おばさんの動き方を見ているうちに、親としてどう思うのだろうと考えてしまいました。

この前、母は大学生の孫にこんなことを言ってました。

あんたね、銀行とか役所は安定しているから、そういうところに行きなさいよ

今、最も安定してない銀行を勧めるところが笑ってしまうのですが、昔の考えの安定志向です。わたしが会社を辞めてフリーランスで働いていると今伝えたら、母は自責の念に駆られるのと同時に、そんなリスクある働き方で大丈夫?と何度も繰り返し言うでしょう。

実は、母にこういう質問をしたことはあります。

くどひろ
ねぇ、もし自分がさ、本を出版したらどう思う?

すると母は、

あんたは小さい頃から好奇心旺盛だったから、本は書けると思うよ

と言ってくれました。昨日デイサービスに行ったことは忘れてしまっても、息子の小さい頃の思い出はしっかり覚えているあたりがいかにも認知症だよな・・と。

親のように、わたしの本を宣伝してくれるおばさんには、感謝しかありません!

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか