認知症の母が「気持ちだけ」で作る朝食

朝5時20分。

冷蔵庫のホワイトボードに「ひろ、2階にいる」と書いておかないと、牛乳をパックで直飲みして朝ご飯にしたり、何も食べなかったりするので、前日の晩に忘れずに書いておきました。

母はその文字を見て、朝食の準備を始めます。わたしが前日夜に台所のテーブルの上に用意しておいた2人分の皿、これは目玉焼きともやし炒めを乗せるための皿ですが、母は起きて早々に何も乗ってない皿を居間へ運びます。

そしてデイサービスに行く日ではないのですが、デイに着ていく服を台所のダイニングテーブルの椅子に掛けます。

わたしはその様子を、2階の自分の部屋のふとんの中のスマホの映像で見ます。本当はすぐにでも1階に駆けつけて空の皿と服を戻したいんですけど、間違った行動も歩数を稼げるし、リハビリにもなるので、グッと抑えてとにかく映像を見ます。

スマホで1階のテレビを付けられるので、テレビをつけたら朝食の準備を止めてくれるかなと思ってONしてみたのですが、完全スルーでした。

その後、台所と寝室と居間をウロウロ。息子に朝食を作らないといけない、だけど何を用意して、どうしたらいいか分からずウロウロ。ガマンして、布団の中で映像を見ます。

すると母はリンゴが目に入ったようで、2個のリンゴをむき始めて、居間へ運びました。リンゴを乗せた皿が汚れている皿の可能性もありますが、よしとしましょう。

5時40分。20分が経ち、母は何かに気づいたようで、フライパンと蓋を取り出しました。

そしてサラダ油を取り出し、フライパンへ。材料も入れずに、ガスコンロを着火。うちのガスコンロは温度が上がると、自動で火が弱くなるので問題ないのですが、この時点でさすがにガマンできなくなって、布団から出て1階に下りました。

わたしが冷蔵庫からもやしと卵を出し台所に並べたところで、空のフライパンに気づき、母は目玉焼きを作ります。念のためフライパンの中を確認すると、大量の油に目玉焼きが浮いてます。これではまずいので、ティッシュで油を吸わせて油を減らしにかかります。

居間から空の皿を戻し、デイ行きの服を戻し、生のもやし炒めが完成しないよう見守っているうちに、若干イライラしている自分と落ち着けという自分が居ることに気づき、起きた直後でも人間って葛藤するんだなと、変な気持ちに。

認知症がどんなに進行しても、料理は作れる。子どものために朝食の準備はする。息子に洗い物は任せないという「気持ちだけ」は残っているので、母は偉いと思います。だけど、その気持ちと行動は伴ってないので、偉いけれどもやるべきことはどんどん増えます。

朝食後の洗い物も母の頭の中ではできているんですけど、油汚れを水ですすいで戻すだけだったり、洗った食器を汚い台拭きで拭き取ったりするので、少し早めに食べ終えてわたしが洗い物をある程度やっちゃいます。

そしたら、わたしが洗い物を始めてしまったせいか、母は途中で朝食を止めてしまいました。母がある程度食べ終わるまでは、洗い物を始めないほうがいいようです。11時くらいになって、案の定「腹減った」と言われ、そりゃ朝食途中で止めたらそうなるでしょと。

バタバタな朝が終わった直後に、イライラを静めるためにこの記事の下書きをバーッて書いたんですけど、数日後に読み直すとなんてことない朝の日常に見えるから不思議です。認知症も重度まで進行しているんだから、しょうがないでしょって思ってはいるんですけど……。

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今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか