認知症の母が娘をヘルパーさんと勘違いしてしまうワケ

コロナ禍になって、母を美容室へ連れていかなくなりました。当初は感染リスクを考えてのことでしたが、母の歩行状態、認知症の症状の悪化など、次第に美容室が遠のいてしまったのです。

でもコロナが落ち着いた頃、何度か美容室へ連れていきました。わたしは主に通院介助のために帰省しているので時間がなく、妹が母を美容室へ連れて行ってました。

何度となく繰り返される感染拡大に加え、コロナを理解していない母がマスクを勝手に外すリスクもあり、最近は感染状況が落ち着いても美容室へ行かなくなってしまったのです。

訪問美容も検討した

コロナもなかなか終息しないので、訪問美容を真剣に考えて店の選定も終わっていました。たまたまデイサービスに行ってスタッフさんと話していたときに、訪問美容の人を呼べば来てくれるよというので、そっちを利用する気でいました。

妹にこの件を話したところ、わたしがお母さんの髪の毛を切りたいと。髪の毛を切るのが好きだというので、美容師でも何でもない素人の妹が母の髪の毛を今後は切ることになりました。すっかり忘れていたのですが、ほぼ寝たきりだった亡くなった父の髪も妹が切ってましたね。

実家の台所にある長鏡の前に椅子を置いて母を座らせ、散髪用のケープ(雨合羽?)を母に着てもらって、自宅での散髪が始まりました。

散髪中の母と妹との会話

お母さん、それじゃぁ切るよ

分かった、お願いね

台所に落ちた母の髪の毛

数分後に母が妹に向かって、こう言いだしました。

今日は何件目ですか?

これは母の口癖で、自宅に来る訪問リハビリの作業療法士さん、訪問看護師さん、ヘルパーさんに必ずする質問です。自分の娘に対して、なんでそんな質問をするのでしょう?

1番遠いところだと、どこまで行かれるんですか?

これも母の口癖で、家に来る介護職の方が盛岡市のどのあたりまで訪問するのかを質問するのです。しかし、相手は自分の娘。

お母さん。ヘルパーさんじゃないよ、娘です。あなたの娘。

あらら、ごめんごめん。

母は誰かのお世話になる=介護職の方という無意識のスイッチが入るようで、自分の娘をヘルパーさんと認識してしまうようです。

でもわたしが母の髪を洗っていた頃は、しっかり息子が洗っていると認識していました。理由を考えてみたんですけど、わたしが母と一緒に居る時間が最も長いからと思ったのですが、たぶん別の理由です。

母のお世話をする98%が、女性なんですね。しかも皆さんマスクをしているので、母の中では女性=ヘルパーさんになっているのだと思います。わたしは数少ない男性なので、それで息子と認識できるのではないかと。

娘に髪の毛を切ってもらい、さっぱりした母でした。髪を切り終わった母が妹にダメ押しの

今日は何件目ですか?

最後まで妹はヘルパーさんと勘違いされたままでした。そのあと居間で3人で話したときには、娘に戻ってました。認知症の人の頭の中って、どうなっているんでしょうね。

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今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか