認知症の母が受け取った謎の『御挨拶』の顛末

ご挨拶

岩手に居る妹から、LINEでこんな写真(記事タイトル下の写真)が送られてきた。

『御挨拶』

「この謎の包み、開けていい?」と聞かれる。

写真はトリミングしたもので、本当は『御挨拶』の下にしっかりフルネームで名前が書いてあった。

だれ??

全く見当もつかない。

母は友だちと呼べる人がほとんどおらず、年賀状も高校の同級生から毎年1通しかこない。

新手の訪問詐欺か?

「どうも、わたくし訪問詐欺をやらせて頂いてます、〇〇というものです」

斬新過ぎる、新しい詐欺がはやっているのかもしれない。んなわけない。

他に手がかりはないかを考え、妹に実家の「どこでもドアホン」を操作してもらった。

実家を訪問した人は、すべてここに記録されている。確認したところ、わたしが帰省を考えていた6月末にご夫婦でいらっしゃったようだ。車も映っていた。

妹も知らない人で、わたしも画像を確認したがさっぱり分からない。

認知症の母に聞いても、当然記憶がない。

でも、しれっとご夫婦の対応をしたのは母だ。

ご挨拶に来たご夫婦も、同じことを何度も言う母に違和感があったものの、母の取り繕いを信じて『御挨拶』を渡したのだと思う。

もし母が「どこでもドアホン」を使って、この夫婦と会話をしていたら、音声も残っていてすべて事情が分かったはずだ。しかし母はドアホンを使わず、玄関に出てしまったようだ。

『御挨拶』を開けたら、何かヒントがあるのかも?

妹に開けてもらったら、オリーブオイルが2本入っていた。「大手小売店のやつだから、そんなに高くない。安心した」というメッセージもきた。宮内庁御用達とか、現役秘書が選ぶレベルのものが入っていたら、絶対にお返ししなければならないというプレッシャーに押しつぶされてしまっていただろう。

謎のオリーブオイルと謎のご夫婦、全く手がかりがない。

手がかりもなく1か月が経過

さっぱり手がかりがないうえに、コロナ自粛で何もできず、あっという間に1か月が経過した。

その間に思いついたのは、この『御挨拶』は、母ではなく父ではないかということ。

父は今から30年前に実家を出ているが、家出を知られたくない、社会的体裁を保ちたいときは、実家の住所を人に伝えていた。だから年賀状が実家に届き、別居先に妹が持って行った時期もあった。

それで今度は、父の葬儀に参加した人の名簿を確認した。ところがどこにもそれらしき名前がない!

やはり、父の会社関係の人のような気がしてきた。

父の喪主を務めたわたしは、元同僚である浅井さん(仮名)に電話をした。浅井さんは父が亡くなる直前に電話をした方で、わたしもよく知っている方だ。

くどひろ
ご無沙汰しております。A社でお世話になった〇〇の息子のひろのぶです。
浅井さん
あら~、ひろちゃん元気だった!なに、どうしたの?何かあったの?
くどひろ
いや、〇〇さんという方が実家にきて、ご挨拶を置いていったんですけど、ご存知ですか?
浅井さん
〇〇さん、うーん……。会社関係でそういう人はいないし、葬儀にも来てなかったよ。ひろちゃん大丈夫だから、お父さん怪しい関係の人との付き合いはないから

浅井さん、うちの実家にヤバいやつが来たと思ってる。

浅井さんの言葉から、父は闇営業も反社の方との付き合いもなかったようだが、結局、未解決のままだ。誰への何のご挨拶なのだ?できることなら、母の奥底にある記憶を引き出して、目の前に並べたいくらいだ。

認知症介護家族の皆さま、在宅介護ではこういうことが多発するので、訪問者はしっかり録画しておいたほうがいい。画像があれば、ネームプレートをぶら下げている訪問者が多いので、会社名の特定などはできる。変な訪問販売業者、本当にたくさん来ますから。

どこでもドアホン


母はオリーブオイルの使い方も忘れてしまったので、東京に送って使うことにした。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

2件のコメント

初めまして、いつも拝見させて頂いております。
もしかしたら、近所に引っ越してきた方が挨拶に来た可能性があるかも?
※自分自身も最近、引っ越しの挨拶回りをしたので。
うちも高齢の両親が居りますが、時々詐欺業者も訪ねて来るので、用心に越したことは無いですね。

まつもっちゃんさま

いつもブログを読んで頂き、ありがとうございます!

実家周辺は一軒家しかないのですが、最近家も建ってませんし、引っ越してきた方もいないのでおそらくご近所ではない気がします。どこでもドアホンに車も映っていました、ますます謎ですね。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(80歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて12年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか