サービス担当者会議で、母は2年間こう言い続けました。
ケアマネ、サ責、看護師、作業療法士さん、わたしも含め、何回も聞かされました。しかし、自分で行く事は2年間ありませんでした。少し意地悪なわたしは、自分で行ってないでしょ?というと、必ずこの返事です。
これは本心でもあるし、自身で買い物できない言い訳でもあります。このお決まりのフレーズを逆手にとって、ある作戦を決行しました。
一度目の失敗
デイサービスでの買い物支援を始める時、わたしは 「買い物大作戦」 という文書を作成しました。(タイトルも本当にこれ)そこには、母が買い物をする時のポイントや癖、ゴネた時にイチコロの殺し文句も書き添えました。
しかし・・・
そう来たか・・・その切り返しの対処法は書いてなかった(笑)
買い物をしないと3日間は冷蔵庫が空になるんですが、強引に連れて行くこともできず、結局冷蔵庫はすっからかんになったと、後日ヘルパーさんが教えてくれました。餓死されると困るしな・・・と、次なる作戦を決行しました。
自筆で「買い物に行く」と書かせる
母のお決まりのフレーズを逆手に取るべく、デイ前日に母に ”自筆で” こう書いてもらいました。わたしが言ったとおり、母は震える手でペンを走らせます。
・今日は息子が家で待っているので、夕ご飯の材料を買ってくる
・デイ近くの横断歩道は2車線で短いので、安心
・職員のAさんがサポートしてくれるから、安心
・買ってくるもの 豚肉、食パン・・・・
息子のために、夕ご飯を作ってやらなきゃ!という責任感を持たせ、次に横断歩道、外を歩くサポートは大丈夫と不安を取り除き、そして買うモノまで決める、しかも ”自筆で”。
わたしに言われたとおり書いたという事実は忘れ、最終的には自分が書いたように思わせる自筆作戦!(どうだ!)
デイ送迎の時に職員さんにこの自筆の紙を渡し、ゴネたらこれを見せるように言いました。7時間後、母が帰ってきました。
帰宅した母
デイ職員さんが母を連れて帰宅、その手には2つのレジ袋がありました。
「いやぁ・・・デイ職員さんの手を借りながらも、自分でやっと買い物してきたよ!」
心の中で叫びました。レジ袋2つは多すぎなんですが、実はデイの方には買い過ぎOKと伝えてありました。この買い物はモノを買う行為ではなく、認知症と手足のリハビリとわたしは考えているからです。
レジ袋を開けると、そこには頼んでもいないものがいろいろと入っていました。季節はずれのリンゴを1袋見つけました。認知症の母はリンゴをむくのが好きで、それはたぶん息子に食べさせてあげたいという気持ちの表れです。
夕食の時、リンゴがおかずと一緒に食卓に並びました。
季節はずれなんで高いリンゴ、しかもモサモサしている・・・でも不思議とうまい、なぜ??自分で買い物して来た特別なリンゴなんですよね・・・ヘルパーさんが買ってきたリンゴじゃないんですよ・・・
2年間買い物に行く、行かないっていろいろやってきて、それがデイ拒否という事がきっかけで、自分で買い物行くようになって、一度は買い物拒否して・・・・リンゴをかじった時、走馬灯のように2年間がフラッシュバックしました。
不惑の男の子(おじさん)なので泣かないけど、心の中ではナミダのりんご。
でもでも・・・・
来週は買い物拒否している可能性があるのが、認知症・・・買い物ができたから、今日はよしとしよう!!
夕食が済んで、母は皿洗い。わたしはテレビを見てくつろいでいたら、母が何かを持ってきました。
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そう、またリンゴ!さっき、食ったばっかりでしょ!4個あったリンゴは、翌朝にはなくなりました。息子のためとはいえ、むきすぎだろ!(笑)
今日もしれっと、しれっと。