母に気持ちよくデイサービスに行ってもらうために続けているたった1つの小さなこと

デイサービス 行く

デイサービスに行ってもらうまでの2年間を振り返る

「デイサービスに、行ってもらおう!」

ケアマネからの提案に賛同したのが、2012年12月のことでした。祖母が子宮頸がんで入院し、放射線治療をしている頃、母の認知症が確定し、第1回サービス担当者会議を自宅で開きました。

ケアマネが勤める事業所系列のデイサービス所長、今もお世話になっている居宅介護支援事業所の所長(ヘルパーさん)が来てくださいました。当時は東京で仕事をしていたため、会議のための帰省でした。

デイサービスに初めて見学に行ったときは、衝撃でした。利用者さんのほとんどが80代の女性、職員さんの一方的なカラオケがむなしく響き、利用者さんはかすかに反応する程度。その後、流れるように、お風呂が始まりました。

くどひろ
介護職の皆さんって、すごいですね!

介護の「か」の字も知らなかった当時のわたしは、率直に感動しました。世の中には、こういう仕事があるんだと。30代という若さでデイ所長をやっていることも、すごいなと思いました。

しかし、母には全く合ってないデイサービスだということも、すぐ分かりました。結局、断ってから2年が経って、今のデイサービスに行くようになりました。2年の間、ケアマネも、たびたびこう言いました。

ケアマネ
ひとりで過ごすよりも、デイサービスに行った方がいいんですけどね~

もっともなご意見だったのですが、次のデイを紹介する気配もなく・・・結局、かかりつけ医のひとことから、わたしひとりでデイサービスに見学に行き、前とは違うデイの環境に驚き、母を騙して連れて行って、今があります。

新しいデイサービスに行き始めてから

デイが始まって1か月後、半べそで椅子にしがみつきながら、こう言いました。

行きたくない~、行っても意味ない~

今でも、行きたくないと言ったり、逆に行きたいと言ってみたりかなり不安定ですが、なんとか週2回のデイサービスに行ってくれています。そんな母親を気持ちよく送り出すために、わたしは些細なことですがこんなことを続けています。

記事タイトル直下の写真を、改めて見てください。デイサービスの連絡帳(白い布のバックに入っている)と、手提げバックを、写真のような感じで台所の椅子にしれっと掛けておきます。それで、デイに行く前日の夜に、母をこう褒めます。

くどひろ
やるねぇ、相変わらず準備万端だね!

すると、母は、

わたしはね、手足が不自由で準備に時間がかかるから、常に余裕をもって準備するようにしているの

かなり得意気に言うのですが、母は準備してません(笑)たったこれだけのことですが、意味のあることだし、効果はある!と思って続けています。

「わたしはまだ、きちんと準備ができる!」という母のプライドは一応満たされますし、そんな自分に酔って調子に乗ってもらえればいいんです。こういった日々の積み重ねは「じわじわっと」効いてくるはずです。記憶には残ってなくても、ぼんやりとこんな感覚はあるはずです、ここにバックを掛けておくと、確かいいことあったなって。(息子が褒めるという事実は、忘れてます)

認知症の症状が、劇的に改善することを介護者はつい期待してしまうのですが、きちんと薬を飲んでもらったり、怒鳴らなかったり、電話をして会話をするといった、日々の小さなことの積み重ねは、その先の大きな改善(あるいは現状維持)へとつながっていると思います。

小さなことでいいんです、小さなことで。

今日もしれっと、しれっと。


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東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

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ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか