長谷川和夫先生から教わった認知症テスト3つの注意点
長谷川式認知症スケールを開発した長谷川和夫先生の講演会に、以前参加したことがあります。そのとき教わった、認知症テスト実施の3つの注意点がこちら。
1.お願いする姿勢
2.利用者の答え方に注意する
3.1年に1回が原則。特別に行う時には、説明して了解をとること。
長谷川先生は開発者なので、このテストを受ければ認知症が分かる!と講演されると思ったのですが、講演内容が真逆すぎてビックリしたのを覚えています。2に関しては鹿児島認知症ブログの平山先生の外来の様子を引用すると、
長谷川式テストを自分で行うのは、ひとえにこの引っかかりを一つでも多く得るためである。ここを外注(他のスタッフに依頼すること)してしまったら、せっかくの情報を失う事になりかねない。
引用元:http://www.ninchi-shou.com/entry/clinic-work-flow
平山先生のいうひっかかりについては、もうちょっと読んで頂くと出てきます。
医師が思っている以上に、わたしたち介護家族はテストの点数に一喜一憂しがちです。わたしの悪い例として、3番を知るまでは、認知症テストを1年に3,4回やってもらったこともあって、猛省した次第です。今は、1年に1回(12月)と決めています。そんな母が1年ぶりに、改定長谷川式認知症スケールを受けました。
2016年12月に行った母のテスト結果
No. | 質問 | 配点 | 母の答え(正解) | 得点(満点) | 設問の意味 |
1 | あなたは何歳ですか | 満年齢ないし呼び年齢 1点 1歳違い 0.5点 | 72歳(73歳) | 0.5(1) | 年齢 |
2 | ここはどこですか | 具体的名称 2点 抽象的名称 1点 | ものがたり診療所 | 2(2) | 場所の見当識 |
3 | 今は何月ですか | 1点 | 12月 | 1(1) | 日付の見当識 |
今日は何日ですか | 1点 | 25日(21日) | 0(1) | 日付の見当識 | |
今日は何曜日ですか | 1点 | 水曜日 | 1(1) | 日付の見当識 | |
今年は平成何年ですか | 1点 | 平成3年(平成28年) | 0(1) | 日付の見当識 | |
4 | これから言う言葉を繰り返してください。「桜、猫、電車」あとでこの三つの言葉を思い出してもらいますからよく覚えておいてください | 各1点 | 桜、猫、電車 | 3(3) | 言葉の即時記銘 |
5 | 100-7は、それから7をひくと | 各1点 | 93、86 | 2(2) | 計算 |
6 | 682を後ろから言ってください。 3529はどうですか | 各1点 | 286 9523 | 1(2) | 数字の逆唱 |
7 | 先ほど引き算の前に覚えていただいた3つの言葉は何でしたか | 各2点 (ヒントありで各1点) | バス、船、飛行機 | 0(6) | 言葉の遅延再生 |
8 | 野菜の名前を10個思い出してください。 | 5個0点、6個1点、7個2点、8個3点、9個4点、10個5点 | ねぎ、トマト、ほうれん草、白菜、キャベツ、キュウリ、人参、アスパラ、ごぼう、もやし | 5(5) | 言語の流暢性 |
9 | お見せする5つの品物をよく覚えてください | 各1点 | スプーン、かぎ、鉛筆 | 3(5) | 物品記銘 |
合計 | 18.5(30) |
設問の意味を、一番右につけてみました。ここ4年間、いつも日付や場所で間違うのですが、遅延再生・数字の逆唱を間違えたのが初めてだったので、そこに驚きました。次回の外来で先生に聞いてみます。また母の答え方を聞いていたのですが、
母はカレンダーを探すことができるので、おそらく診察室のカレンダーを見つけて12月と答えたのでしょう。水曜日も答えを部屋から見つけることができたと思います。カンニングできる能力、それを隠す言動ができるだけ偉い!って思いました(笑)
改定長谷川式認知症スケール4年間の推移
テストの点数で一喜一憂しないとか本に書いておきながら、数年前に28点取ったときは喜びました(笑)
21点取った昨年もよくよくテストの内容を聞いていると、看護師さんの優しいヒントもありましたし、わたしが辛く採点すれば18点くらいでした。グラフだけ見ると、毎年順調に?進行していると思われるかもしれませんが、1日違っていたら違う結果になるでしょうし、そんなに悲観的に考えていません。
間違えた箇所が今年だけ違うのが、唯一気がかりです。
改定長谷川式認知症スケールから分かること
このテストから分かることでわたしが覚えていること、そして先ほどの平山先生のブログを引用して箇条書きにします。(重複箇所あり)
- 遅延再生の設問は、アルツハイマー型の人は苦手、レビー、脳血管性は得意
- 言語の流暢性は、アルツハイマー型認知症の人は少ない野菜を繰り返す
- レビー小体型の人は、計算問題が苦手
- レビー小体型の人は、声が小さい
- ピック病の人は分からんと怒る
- ピック病で満点を取ったり、レビーで高得点を取る人もいる
- 家族に回答を求める振り向き症候群の場合、アルツハイマー型認知症を疑う
- 話す声が小さい(レビー的)
- 視線が合わない(レビー的)
- 同一内容の話を執拗に繰り返す(ピック的)
- 声の抑揚がなく場にそぐわない大声(ピック的)
- 言い訳めいて取り繕いが多い(アルツハイマー的)
引用元:http://www.ninchi-shou.com/entry/clinic-work-flow
講演で聞いたり、本で読んだことがあったりというレベルですが、この箇条書きでテスト点数同様、振り回されないでください。そういう方もいるというレベルですし、ご意見頂いたら追記・修正します。
認知症スケールがすべてではない!
いろんな医師の講演会に参加して思うのは、長谷川式認知症スケールは参考程度にしかしていないということです。長谷川先生も、そう言ってました。最も大切な問診であったり、家族からの情報であったり、総合的に判断する医師を選ぶべきだと思います。逆に考えると・・・
「長谷川式認知症スケールの点数を絶対視している医師は危ない」
という医師選びの基準に使ってみてはいかがでしょうか?医師が点数だけでなく答え方に注視しているか、総合的に診てくれているかも家族が判断しないといけません。たまたまかもしれませんが、そういった先生の講演会に参加したことがないので、そんな経験されたご家族いらっしゃいましたら、教えてください。
今日もしれっと、しれっと。
初めまして。
色々と参考になります。
夫は53歳の時に若年性認知症と診断されましたが、当初、長谷川式の点数を重視するあまりアルツハイマー型と診断されました。
でも、何か違うと思い現在の病院で意味性認知症とわかりました。
丁寧な問診と本人の観察、時間をかけて家族からの聞き取りがありました。
その時の様子です。
http://ruru630.at.webry.info/201505/article_8.html
シマウマさま
コメントありがとうございます。記事読みました。まさに認知症スケールだけで、安易に判断してしまったケースですね。認知症と余命をリンクさせたりと、まだまだそういう医師はいますよね。やはり家族が認知症を勉強して、いい医師選びを探し続けるのが今はベストな選択なのかもしれません。