異業種が集まるから視点も広がる!資格に縛られてしまう医療・介護職

第7回ナラティブ勉強会(岩手・盛岡)というイベントに参加した。

医療・介護とプロバスケットボールと地ビールとLRTの融合

  • 岩手ビックブルズ(プロバスケットボール)
  • べアレンビール(盛岡の地ビール)
  • LRT(次世代の路面電車:富山などで走っている)
  • なないろのとびら診療所(旧ものがたり診療所もりおか)(医療・介護)

「そこに行きたい ~その気にさせてくれる空間とは?」というお題で、全く異業種の4人がパネルディスカッションを行った。一見、何の関連性も感じないかもしれないが、すぐにある2つのことを思いついた。

都会と地方都市の大きな違い

岩手県沿岸部の社協の方とお話をしたことがある。その方が東京に行ったとき、こう思ったらしい。

社協の男性
東京の高齢者の方々は本当に元気ですよね、足腰がしっかりしている

岩手と東京を行き来していて思うのだが、年齢関係なく東京の人はとにかく歩く。鉄道が交通インフラのメインになっているので、「駅から徒歩何分」という表示はめちゃめちゃ気にする。健康に気をつかう人なら、ひと駅前で降りて歩く人もいるし、自転車通勤も多い。盛岡は車とバス社会だから、そういう発想にならない。

岩手県交通というバスが盛岡市内を走っているのだが、行きたいところへなかなか行けない。この前なんて、車なら15分程度の移動を、バスで90分もかけてしまった。しかも、バス代はなんと750円!都内で750円の運賃を払ったら、隣の県まで行けてしまう。

東京はきれいなノンステップバスが多いのに、盛岡は台数が少ない。高齢者はきつい段差を登って、バスに乗らなくてはいけない。高い、古い、時間がかかる、悪の三拍子が揃ってしまっている。

結局、この男性が言いたかったのは、家の前から車に乗って目的地まで行くから、東京の高齢者より岩手の人は圧倒的に歩かないということなのだ。LRTという路面電車がもし盛岡に開通したら、大きく変わると思う。わたしですら厳しいと感じているのだから、高齢者はもっと大変・・・結局、車に頼ることになる。

LRT開通で高齢者の運転による交通事故も減るかもしれない、市民が歩くことで、認知症の方が減り健康な方が増えるかもしれない。自立して移動する人も増え、社会活動が活発になるかもしれない。交通インフラと健康はこのように密接につながっていて、それは医療・介護の負担減にもつながるような気がする。

横浜DeNAベイスターズのモデルが参考になると思う

2つ目は、池田純さんという元横浜DeNAベイスターズ社長の「空気のつくり方」という本が、この4人のメンバーに合致すると思った。

ベイスターズは年30億円の赤字から5年で黒字になり、クライマックスシリーズにも進出した。黒字の理由は、いくつかある。例えばボールパーク構想(アメリカのメジャーリーグのような地域密着型、球場に訪れる仕掛けをいろいろ考える)で、地元横浜を巻き込んで観客動員数を増やした。ファンクラブ会員数の伸びもすごくて、今は横浜ファンだらけだし、チケットも取りづらくなるほどだ。試合に勝っても負けても足を運びたくなるボールパークの存在は、試合を見たことがない人、女性、子どもたちへとファンが拡大する要因になった。

また、ビールの話が面白い。球場に行くと、サービスエリアのようなスナックフードが置いてあるが、横浜スタジアムにはミシュランシェフ考案のオリジナルからあげがある。通常は「おのののか」のようなビールの売り子がアサヒ・キリンのビールを売っているのだが、ハマスタは自社のビールが飲める。利幅の薄い他社ビールよりも、当然利益率もいい。

この話を当てはめると、ボールパークの中心が岩手ビックブルズになる。お酒を飲みながら観戦できるらしいが、それがベアレンビールなのかどうかは知らない。この4人を組み合わせると、ブルズがボールパーク的拠点になってLRTでアクセスを良くする、地ビールをガンガン売って盛り上げる。でもって、ボールパークの中にしれっと医療・介護の相談室があって、気軽に立ち寄ることができる・・・そんな感じだ。

現実的には厳しいかもしれないが、部分的にベイスターズを参考にはできそうだ。ちなみにベイスターズは、街づくりをしたいと言っている。

自分の保有する資格だけで考えてしまいがち

堀江貴文さんが、こんなことを言っていた。

「土地が余ったから旅館を経営したいという人がいるが、そんな考えなら土地を売ったほうがいい。旅館を運営したいから土地を購入するなら分かるが・・・順番が逆!」

この話は、保有する資格にも同じことが言えるのだそう。薬剤師を例にしていたが、介護福祉士とか、社会福祉士とか、まず資格ありきで考えると、本当にやりたいことが見えなくなると言っていた、資格に縛られる人が多すぎると。

おそらく街づくりや地域包括ケアについて話し合おうとすると、こういう人選にならないと思う。行政、医療、介護のプロが、自分の得意なフィールドで意見を出し合うはず。それはすでに資格に縛られた状態にある。市民を巻き込もうとしても、こういうメンバーで堅苦しい集まりだと行きたいとは思わない。地ビールにバスケ、路面電車と医療介護の方が、よっぽど面白い。

池田元社長だって、球団経営はしたことがなくとも、実際は黒字にしてみせた。業界の常識は世間の非常識だったりすることは、ホントよくある。

国や自治体、制度のせいで、壁にぶつかる医療・介護職の方は多いのだと思う。わたしのような利用者家族はそんな事情を知らないし、資格の違いもよく分からない。でも、いい意味で制度を破るというか、盲点を突きながら利用者のベストを考えてくださる姿勢だけは分かる。そのためには型にはまらない、こういう不思議な組み合わせが思わぬアイディアを生むのだと思う。

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工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか