認知症の母の髪の毛を洗っている時、自分が「スネ夫化」していることに気づいた話

認知症 髪洗う

最近、認知症の母の髪の毛を洗うことが多くなった。

母はお風呂に入りたがらないから、髪の毛ぐらいは・・・そう思って始めた。

「デイサービスでお風呂に入ったら?」と、わたしやケアマネが昔はよく言ったのだが

あそこのお風呂、狭いし浴槽が深くて入られない

母はこう言えば、わたしたちが納得してくれると思っているようだが、浴槽は浅いし、床の滑り止めも緊急ボタンもあるので、はるかに安全だ。ただ、これに関しては、母の言う通りだと思っている。

お昼っから、お風呂に入りたくない

今までの生活のリズムに合わないお風呂の時間だから、それはそうだろうと思っている。また手足が不自由だから、お風呂での転倒を恐れているというのもある。

最初は「お風呂に入らないなんてありえない」、「お風呂に入らないと不潔」とわたしは思っていたが(口には出さないけど)、今はそれでもいいかと思っている。冬場なんかは、本にも書いたとおりヒートショックのリスクがかなり高まるので、ムリにお風呂は勧めていない。

母の代謝は年齢とともに落ちてはいるが、ありがたいことに水分をよく取ってくれる。1リットルの牛乳は常に2本用意しておかないと、すぐなくなってしまう。なので、まあまあ汗はかいている。で、髪の毛が脂でしっとりしてくる。

台所のシンクで髪を洗っている

月1回歯医者に通っているのだが、待合室で母と息子、隣同士で座る。横に座る母の髪を見て、「ふけ」が目立っていることに気づいた。

風呂に入る気配はないし、髪の毛が脂でしっとりしているし、ふけも目立つ・・・ということで、今年からわたしが母の髪を洗うことになった。

台所に椅子を持ってきて母に座ってもらい、シンクに首を出してもらう。タオルを母の首にかけ、手にシャンプーをつけて、母の頭をゴシゴシと洗う。何日も洗ってないから、脂でシャンプーが泡立たない、そして大量に毛が抜ける。最低2回は洗わないと、ダメなレベルだ。

最初の頃、母は気持ちいいと言っていたのだが、最近はわがままになってきた。

なんだかかゆい、お湯が熱い、冷たい・・・

「自分でまだ洗えるのだから、自分で洗ってくれ!」と内心は思っているのだが、「髪を洗う=息子とケンカする」という構図が感情として残り、将来的に髪の毛を洗うのを嫌がる可能性もあるから、わたしの心の声として処理をしている。

母のいろんなこだわり

この前、わたしのふけを見て、誰かが走ってきてわたしの頭を「フーっと」やったのよ

最近、母はこれしか言わない。そんな変わり者は世の中にはいないのだが、否定したところでどうなるわけでもないので、「そうなんだ~」ととりあえず返事している。

さらに、母はドライヤーを使うとハゲると思っている。髪によくないから、自然乾燥が一番だという・・・全く逆なのに。だから、いつもこういう。

くどひろ
美容室って、なんでドライヤー使ってるんだろうね?もしドライヤーでハゲるなら、全国の美容室で使用禁止になるでしょ?

母は「確かにそうよね~」とはいうものの、次回もまたこの会話の繰り返しになる。

意味不明な会話があったとしても、脂ギットリヘアより、髪の毛を洗ったほうがボリュームもアップして若返る。デイサービスにも、きれいな頭で行って欲しいから、髪を洗っている。洗髪後は、いつもこういう。

いやぁ、若返ったね。全然違う。スッキリしたし、こっちのほうがいい!

いつものベタ褒めで、母はうれしそうだ。母の髪を洗って、口腔ケアを一緒にやってから、自分の部屋でブログを書くことが多い。ふと我に返ると「ん?おれって、スネ夫か?」と思い始めるようになった。

くどひろの「スネ夫化」

「よっ、ジャイアン!人気歌手!これからテレビ局?」

「ホゲェ~♪」と歌う音痴なジャイアンに、スネ夫はこう言って褒める。自分も認知症介護で無意味に母を褒めるから、スネ夫とシンクロしていることに気づいた。

認知症介護における「スネ夫理論」という論文を、学会で発表したら結構いけるんじゃないか?「おぉ~、わが心の友よ~」と言って、逆に抱きしめてもらえたら成功という結論の論文。認知症の母が、たまにジャイアンに見えないこともない・・皆さんもきっと、そんな場面に遭遇していると思う。

認知症の人を褒めるという話を本やブログで書いてきたが、いつも反響が大きい。介護している皆さんには葛藤があって、「なかなか褒めるのは難しいけど、言ってることはよく分かる」というコメントを頂く。次にこういうコメントを頂いたら、「スネ夫を意識してみては?」と返信してみよう・・・殺されるかな?

つい先日、父が訪問入浴で気持ちよさそうにしている姿を見たのだが、母の認知症が進行したら、この訪問入浴に手こずるんだろうな・・・そう思った。

今日もしれっと、しれっと。


にほんブログ村 介護ブログへ


【わたしの書いた最新刊】
東京と岩手の遠距離介護を、在宅で11年以上続けられている理由のひとつが道具です。介護者の皆さんがもっとラクできる環境を整え、同時に親の自立を実現するために何ができるかを実践するための本を書きました。図表とカラーで分かりやすく仕上げました。

4件のコメント

こんにちは。介護、お疲れ様です。
お母様、歯科に行かれるなら美容院も行く事が可能ではないでしょうか?認知症の方は、えてして他人にはとても愛想がいいです。最近の美容師さんは研究熱心なので、上手くやってくれますよ。

sugarさま

美容室は、2か月に1回くらいのペースで行ってますね。確かにうまくやってくださっていて、助かってます。
暑い夏ですから、そこそこのペースで髪を洗わないとべっとりです・・・

くどひろさんのように、介護にも向き不向きが有ると、すんなり認める事の出来る方が増えれば
案外施設で自立した日常生活を取り戻せる方が、増えるかもしれないと思うこの頃です。

介護者の方には「他人は良いよね、口だけで済むから」とか言われがちでも有りますが
そんな言葉を尻目に、私も認知症の方のお洋服や髪型をどんどんお褒めしたいと思います。

自分もてんてこ舞いさま

そういった介護者もいるんですよね・・・ そういった方にこそわたしの本とか読んでほしいなぁと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUT US
工藤広伸(くどひろ)介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。
2012年から岩手でひとり暮らしをするアルツハイマー型認知症で難病(CMT病)の母(81歳・要介護4)を、東京からしれっと遠距離在宅介護を続けて13年目。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護し看取る。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

【音声配信Voicyパーソナリティ】『ちょっと気になる?介護のラジオ
【著書】親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること(翔泳社)、親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと(翔泳社)、医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂出版)ほか